JAB

速報 JAB環境ISO大会(2009)

日本適合性認定協会(JAB)主催による「環境ISO大会」が本日東京で、「環境ISOの有効活用と活動の見える化─事例研究─」をテーマに開催された。前年度もほぼ同じテーマで開催され、有効活用(環境保全と経営の両立のために、環境ISOの仕組みや手順をうまく活用すること)のためのISO認証制度の役割とその活用実態を事例に基づいて検討したが、今回はさらに多くの事例を分析し、課題の深化を行うのが目的である。

井口新一さん
「日本が世界をリードするという意識で取り組んでいきたい」
191-iguhi1002.jpg冒 頭、JABを代表して専務理事・井口新一さんが挨拶。まず、毎年恒例の「環境ISOビジョン2015」の解説に入った。その中で、次年度(2010年4月 開始)はビジョンの5項目の中で今まで一番手薄だった「環境ISOの普及促進(特に中小企業への浸透)」に力を入れていくと述べた。次に世界における EMS動向についてグラフで解説、世界のISO 14001認証件数は約19万件だが、その40%を首位の中国と第二位の日本が占めている。すなわち、日本のEMSに対する組織の取り組み、審査の仕方自 体が世界のモデルになり得る。日本が世界をリードしていくという意識で取り組んでいきたいと語った。また、日本のEMS登録件数について、ISO Survey集計とJAB集計の間に約1万件ほどの開きがあることを指摘。その理由はまだ分からないが、JABが認証書の枚数でカウントしているのに対 し、ISOでは認証されたサイト数でカウントしているのではないか。日本もサイト数でカウントすると、昨年よりも約7千件増えており、このまま推移すれば 「環境ISOビジョン2015」の目標8万件を達成できる可能性があると述べた。昨年まではそんなことは言っていなかったのに(つまりJABは正攻法であ る認証書枚数でカウントするという立場)、ここに来て「サイト数で計算すれば」と言い出すなんて、井口さんもチャッカリしてる。

佐野真理子さん
「一番重要なのは消費者との双方向コミュニケーション」

192-sano1002.jpg続 いて、主婦連合会事務局長の佐野真理子さんによる基調講演で、テーマは「消費者の視点から認証制度の信頼を考える」。最初に、EMS認証制度の課題は、2 年前の経済産業省による「マネジメントシステム規格認証制度の信頼性確保のためのガイドライン」の通知に表れており、ここで制度全体のあり方が問われたと のこと。佐野氏にとって、制度信頼性を考える上での基準はこの「ガイドライン」にある。近年、認証組織の不祥事が続発し、認証に対する不信は認証組織だけ でなく、認証機関や認定機関にも広がった。そこで信頼性確保のために、「ガイドライン」に対するアクションプランが出された。これは事態改善の第一歩であ る。今後はさらに、消費者相談への対応にも力を入れてほしい。認証制度の見える化に向けた行動で一番重要なのは、制度関係者と消費者との双方向コミュニ ケーションであると述べた。

西尾チヅルさん
「6社の取材事例で環境活動の見える化を紹介」

193-nishio1002.jpg午 前中最後の講演として、筑波大学大学院教授・西尾チヅルさんが、昨年度の議論内容のレビューと今回の事例報告での着眼点について解説。前回はISOを積極 的に活用している事例としてパナソニック社とブリヂストン社の2社の取り組みを紹介したが、両社とも大企業であり、事例がわずか2社ではとお考えの方もい るだろう。そこで今回は6社を取材した上で事例紹介し、特に「環境活動の見える化」の手段としての内部監査に焦点を当てて提案したいと述べた。

原田充裕さん
「うまくいっている会社は業務目標とISO目標が一致している」

194-harada1002.jpg午後からは事例紹介とパネルディスカッションである。第一番目の事例紹介として、品質保証総合研究所(JQAI)セミナー開発部長の原田充裕さんが「様々な局面での見える化への取り組み」をテーマに講演。建設業、専門商社、製造業の中規模組織における取り組みを紹介した。
【建設業】
認証維持中心の取り組みだったので、自社に合ったシステムにカスタマイズされておらず、形式的な内部監査が実施されていた。そこで通常業務と一体化して運 営するMSにするべく、まず業務目標とISO目標の一致、モノマネではなく自社の実情に合ったシステムへの再構築などに着手した。内部監査においては、こ れまでの要求事項の順番に沿った逐次式監査をやめ、目標達成状況を確認する監査に切り替えた。こういうことができる前提として、先に業務目標とISO目標 の一致がある。また、目標未達に対する「不適合」についても、たとえ目標達成率に達しなかったとしても、「達成に向けて取り組んでいる」「未達の原因を考 えている」といった取り組みがあれば「適合」とした。監査の質問方法も、従来のYES/NOで回答できる質問ではなく、オープン・クエスチョン方式に変え た。こうすることで被監査側からは「実情を聞いてもらえるようになった」「会社に対して問題提起ができるようになった」などの評価が生まれている。内部監 査員は部長級が中心である。審査側に対しても、自分たちの監査手法について説明し、YES/NO方式の審査質問ではなく実情をありのままヒアリングしても らう審査方法に転換してもらうことをお願いしたとしている。
【専門商社】
総合商社傘下の電子部品関係の専門商社3社が合併後にシステム統合した事例。3社ともQMS・EMSの両方の認証を取っているが、業務目標とISO目標を 一致させ、本業の中でMSに取り組んでいる。内部監査への取り組みで特徴的なのは、社員全員を内部監査員にしようとしているところ。すでに200人の社員 のうち、内部監査員が100人を占めている。また内部監査報告書には、監査結果だけでなく、その結果に至る議論のプロセスや意見なども記載し、監査の見え る化を徹底させている。
【製造業】
環境ブランド商品が全商品の半分を占める文房具メーカーの事例。内部監査については特にここで記載すべき内容は報告されなかった。(プレゼンターの取材不足なのか、それとも取材先にネタがなかったのか?)

山本芳華さん
「自社の特徴をEMSに生かすことが継続の鍵」

195-yamamoto1002.jpg第 二番目の事例紹介は、摂南大学准教授の山本芳華さんが「経年的EMS導入がもたらす見える化の方向性」をテーマに講演。ISO 14001登録歴10年以上の3社(設計・デザイン会社、総合商社、開発研究所)が、自社の個性に合わせて、EMS活動の「見える化」にどのように取り組 んでいるかを紹介した。
【設計・デザイン会社】
業務はオフィス活動が中心なので、その活動に限れば環境負荷は小さい。しかし、同社の設計が反映された構造物の環境影響は大きいので、その間接影響をマネ ジメントすることがEMSのポイントになる。そうなると、部門や担当者を越えて設計段階での配慮項目を情報共有する必要があり、業務に則して作成された ISO 14001帳票類をイントラネット化することでそれを実現した。また、この会社では社内で作成した環境配慮項目のフォーマットを外部組織や自治体に共有可 能な状態で公表し、それによって社内と社外の環境に関する評価システムを一致させた。こうすることで業界を環境面で主導できるし、一方で社内での評価体制 への信頼性が増した。社内外の評価基準が一致することで、内部の環境活動がより本来業務に則した形になったという
【総合商社】
商社なので業務そのものはオフィス活動であり、それだけだと環境負荷は小さい。だが、総合商社が投融資先や取引先に与えるビジネス上の影響力(環境におけ る間接影響力)は甚大である。そこで自社だけでなく相手先を含めたビジネス全体での大きな環境配慮体制を構築した。同社では毎年、各ユニットの担当者が、 自分が担当する商品や事業投資先の環境側面の抽出や環境影響評価を実施している。非常に多くの社員が内部監査を実施しており、EMSが身近な形で浸透して いる。ビジネスベースで環境管理体制を強化しているのが大きな特徴。
【開発研究所】
ここも、オフィス活動と小規模機器・物質の管理が中心の環境負荷が小さい組織。しかし、研究開発の結果、市場に出た商品の環境影響は大きく、そのマネジメ ントがポイントになる。ここでは、研究所でEMS活動に携わったメンバーが、数年後には研究成果を持って事業所へ異動し、そこでEMS活動が拡張し、事業 所間でシステムの共通理解が生まれるといった成果が出ている。育った人材が他所で成果を上げていくという、EMS人材の母体のような研究所である。ここの 内部監査はもっぱら若手に任せるという(前述した建設業の事例では部長級が内部監査員の主体であったのと対照的)。これには、「監査が人を育てる」という 教育的効果もねらっている。研究所という性格からか、新人教育を徹底し、独自の研究テーマに対して環境配慮ができるように人を育てているのが大きな特徴。
最後にインタビューをすべて終えて思ったのは、自社の特徴を生かしたEMSを構築することが継続の鍵になるとのこと。

パネルディスカッション
事例では監査員の階層はまちまち

196-panel1.jpgこ のあと、前述の原田さん、山本さんと、統計数理研究所教授の椿広計さん、日本マネジメントシステム認証機関協議会を代表して稲永弘さん、日本適合性認定協 会を代表して久保真さんの5人をパネリストに迎え、西尾さん司会によるパネルディスカッションが行われた。パネリストの自己紹介のあと、司会がフロアーか らの意見を求めた。パネリストとフロアーとの質疑応答は次の通り。

Q1:事例紹介で若い社員が内部監査をやったり、社員全員に内部監査をやらせるといった話が出てきたが、新人に有効性の確認ができるのだろうか? また、内部監査員は多ければいいというものでもあるまい。
原田:私 のセミナーでは管理職が内部監査をやることを推奨している。社員全員に内部監査をやらせる事例を紹介したが、内部監査で指摘されても指摘の意味が分からな いとか、どう是正すればいいのか分からないといった話をよく聞く。社員に内部監査を経験させることで、そういった知識が早く身につくと思う。
山本:若 手社員といっても、入社3〜5年の社員のことで、まったくの新人に内部監査をやらせるわけではない。事例で紹介した研究所では、若い社員でも1つの研究成 果を実現するには自分で責任ある管理ができなくてはいけないし、そういう管理ができるからこそ他の事業所に異動してもEMSの管理ができ、内部監査もでき るのだと思う。

Q2:山本さんが事例紹介した3社では、審査機関にはどのような対応をしていたのか。
山本:3社とも積極的にEMSを回しておられたので、ある程度自分たちのスタイルを理解してくれる審査機関とコミュニケーションを取っておられたのだと思う。

原田さんが7つの監査手法を披露
稲永さんが質問手順を紹介

197-panel2.jpg続 いて、内部監査に対する取り組み状況についてのJABのアンケート調査結果が久保さんから紹介された(この内容は2月26日までにJABのWebサイトに 掲載されるとのこと)。この中の「内部監査の達成度」という項目では、登録1年以上3年未満の認証組織では約4割、登録6年以上の組織では約3割が、「不 十分」「やや不十分」と回答している。司会の西尾さんは「まだまだ不十分という回答が多いが、どうすれば充実した内部監査ができるのだろうか?」と、原田 さんに振った。そこで原田さんは「たぶん9割くらいの企業が、要求事項の項番順に内部監査をしていると思う。しかし、経営の狙いによっていろいろな内部監 査の方法がある」として、7つの監査手法を紹介(詳細はアイソス3月号74〜77頁参照)。例えば、経験の浅い若い人が監査をやる場合は「業務フロー検証 型」がいいし、ベテランの管理職なら「目標達成検証型」がいいかもしれない。監査側と被監査側がどのような組み合わせであるかによって、監査の手法も変え る必要があると述べた。

また、監査ではどのように質問をしていけばいいのかについて、稲永さんは次のように説明した。例えば、手順監査の場合であれば、最初に「担当者が手順を理 解しているか?」を質問する。続いて、「実際にその手順通りに実施しているか?」について質問する。普通の監査はここで終わってしまっている場合が多い。 しかし、さらに一歩進める必要がある。次の質問は「その手順自体は効果的か? 効率的か?」である。監査員は「話し上手」でなくてはならないし、「聞き上 手」でなくてはならないが、さらに「話させ上手」であることも必要だと述べた。

組織の審査への要求がかなり高度化

続いて話題は「組織が期待している審査とは?」に移った。最初に久保さんがJABアンケート調査による回答結果を披露。その結果から久保さんは、組織は有 効性審査を求めており、そのためには審査員は組織の業務内容をよく理解していなければならないと述べた。一方、組織側を代弁する形で、原田さんは「内部監 査が重点テーマを決めてきちんと行われているか」あるいは「自分たちの内部監査の強み・弱みは何か」といった点を審査して欲しいという声が出ているとし、 山本さんは、「審査では事務局+アルファの人から話を聞くだけでなく、もっと多くのメンバーから話を聞いて欲しい」「現在のマネジメントシステムの次の一 歩になるものを気づかせて欲しい」といった声が出ているとしている。

求められるEMSの取り組みプロセスの開示
情報公開はトップランナーが拓く

最後の話題は「審査結果の情報公開」について。これについては、久保さんがガイドライン対応委員会が発行した「アクションプラン」を紹介し、認定行為の透 明化については公開準備を進めている最中で、認証結果の公表についてはまさにこれから検討を始めようとしているところだとした。椿さんは本件について、 「EMSは現状だけでなく、将来にわたって環境に良いことをやってくれることを保証する、おそらく唯一の仕組みである」とし、認証を取ったことを公開する だけでなく、EMSを導入した狙いや、どのような問題があって、それにどのように対応しているのかなど、いわゆるPDCAでやっている中身を開示すること が必要だと思う。今後は、情報開示に積極的な企業がトップランナーとなり、情報公開促進のドミノ効果を起こしてもらいたいと述べた。

最後に司会がフロアーから発言を求め、富士通・古賀剛志さんと環境ISOシステムサポート研究所の市川昌彦さんの二人が次のようにコメントを述べた。
古賀:情 報公開の話がかなり前から論議され続けているが、一向に進んでいない。コンセンサスが得られていないからだ。欧州ではもうやっている。日本ではまず組織が 主体となってやるべきだ。情報公開には機密の問題がつきものだが、これはもうトップランナーがやるしかないだろう。本日の話をぜひ進めて欲しい。また、ま だ本業とつながっていないEMSが存在するが、もう形だけのEMSは限界に来ていると思う。この壁を打ち破っていかなくてはならない。
市川:「不適合」や「不祥事」を公開するだけが「情報公開」なのか? 「良いコミットメント」を積極的に公開するのも「情報公開」である。ISOを前向きに進めよう。情報公開もプラス側面をどんどんやっていくべきではないか。

このあと司会の西尾さんがこれまでの議論のポイントを総括し、閉会となった。

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  • コメント (2)

    • イソハドーグ
    • 2010年 2月 24日

    中尾さん、こんにちは。
    私もこの大会に参加していました。中尾さんの高度な文章表現能力に感服しております。
    事例紹介にあったのは、顧客要求(暗黙を含む)の製品・サービス実現であり、基本的に目標を達成すると売り上げが上がる内容でした。そりゃ経営トップはじめみんな一生懸命取り組むでしょう。
    それと、見える化について、
    私としては、見える化した後に、見せたい対象の人が見たのか、
    見た後に、それをどう使ったのかを知りたかったです。
    それにしても、サイト数カウントにしたら、8万件達成と
    おっしゃったときには、ふきだしそうになりました。
    ちなみに私の勤務先は、工場が1箇所閉鎖予定なので、
    登録証枚数は変わりませんが、サイト数は減ります。
    追伸、この新しいウェブデザインのイラストが、一見、少年野球に見えてしまいましたが、たぶん、監査風景ですよね。
    ひとつ前の認証件数の記事で、
    全認証件数>JAB認定認証件数のデータがありましたけど、
    そっちの心配をした方がいいんじゃないのかな?

    • 中尾優作
    • 2010年 2月 24日

    イソハドーグさんへ
    <私としては、見える化した後に、見せたい対象の人が見たのか、見た後に、それをどう使ったのかを知りたかったです。
    なるほど、これはJABの次の課題だし、うちのテーマとしても重要ですね。
    <それにしても、サイト数カウントにしたら、8万件達成とおっしゃったときには、ふきだしそうになりました。
    井口さんは使命感を持った立派な方なんですが、どうしたんでしょうネ(笑)。
    <この新しいウェブデザインのイラストが、一見、少年野球に見えてしまいましたが、たぶん、監査風景ですよね。
    ご推察の通り、監査風景の写真をフレスコ画風にアレンジしたものです。ですが、そう言われると、俄然少年野球の写真を載せたくなりましたね。どこかに載せようっと!

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