是正処置WS

第5回是正処置WS

10月18日午前10時半からアムシック(コンサルタント会社、東京都葛飾区)の事務所で開催された審査道無風流(家元・日吉信晴)主催の「第5回是正処置ワークショップ」に参加。主催者を含め、参加者は10人です。夕方からはさらに3人が加わりました。午前中はこれまでのワークショップ(以下WS)活動の総括を行い、午後からは本ブログ9月12日付に掲載された「家出息子の帰還」を題材にして、この記事に書かれた内容の問題点とその是正処置をみんなで考えました。

shigo.jpg午前の部では、参加者の1人である道友さんが、これまでの是正処置WSを総括したプレゼンを行いました。その概要は次の通りです。

このWSは、2007年11月に発足の提案がなされ、2007年12月に第1回目の会合が行われ、今回で5回目を迎えます。WSが生まれた背景には、問題 を発見する力と問題を解決する力が合わさって「改善力」が生まれるはずなのに、問題発見の話はよく議論されているが、問題解決の議論はあまり巷で行われて いない、という点がありました。道友さん自身も、監査技法の確立などの組織活動を通じて、問題発見の力はついたと思いましたが、改善力にはイマイチ感があ りました。やはり、問題解決力をつけないと、改善力もアップしません。

では、問題解決力の技術にはどんなものがあるか。例えば、なぜなぜ解析、8D、CQI-10(AIAG)、JIS Q 9024などがあります。こういったものを比較してみると、方法論の中身にあまり大差はありません。重要なことは、中身ではなく、その性能なのです。改善 力がアップしないのは、改善のステップはあっても、各ステップの信頼性が低いからです。その信頼性を高めるには、もっとトップランナーとの相互研鑽が必要 です。そのために是正処置WSが生まれたのです。

このWSの目的は、是正処置の各ステップの信頼度を高めるための管理技術・支援技法の開発にあります。今後の課題として掲げているのは「監査技術+真因追究技術+力量要件」「管理技術研究」「N1深掘り事例研究」「ヒューマンエラーの研究」の4つです。

ws.jpg午後の部では、参加者全員が「家出息子の帰還」を読んだ上で、「その記事の中で自分が問題と思うこと」「その問題を取り上げた理由」「その問題が起きた原因」「その原因に対する再発防止処置」「再発防止処置の検証方法」の5項目を書いて、発表し、みんなで議論を行いました。

この方法を進めていくうちに、問題の設定自体が各自バラバラだったので、議論が拡散してしまいました。そこで、まず問題を特定することになりました。参加者の中に「家出息子の帰還」の当事者が1人います。中尾優作です。では、中尾が一番問題としているのは何か? 「犬が家出してしまったこと」です。じゃあ、これを問題の出発点にして、Is/Is Not分析を行おうということになりました。

Is/Is Not分析は現状把握に威力を発揮する手法で、3W1H(What, Where, When, How Big)で平叙文と否定文を並記します。例えば、「飼い犬は室内の人間の食べ物をこれまで食べたことがあるか」に関する事実としては、Isの欄には「室内 のゴミ箱に入っていた食べ物を食べたことがある」、Is notの欄には「室内のテーブルの上にあった食べ物を食べたことはない」といった記述になります。この分析では、ブログに掲載された記事内容だけでは情報 不足なので、参加者が中尾にインタビューをしていろいろ事実関係を聞き出す作業を行いました。

Is/Is Not分析をある程度行った後、今度は因果仮説を立てて、なぜなぜ解析に進みました。前述したように、問題は「犬が家出をしてしまったこと」です。では、 なぜ家出をしたのでしょうか? 例えば、因果仮説「中尾が怒ったから、犬が家出をした」を立てて、なぜなぜ解析を始めます。

中尾が怒ったから
→なぜ中尾は怒ったのか
フライドチキンを犬が食べたから
→なぜ犬が食べたのか
フライドチキンをテーブルに置いたままにしたから
→なぜ置いたままにしたのか
放置してはいけないと思わなかったから
→なぜ思わなかったのか
犬の習性や、犬と一緒に生活しているという認識が欠如していたから

といったように、さまざまな因果仮説からなぜなぜ解析を行った結果、次のような是正処置を導き出しました。
「犬の習性を考慮した生活ルールを定め、犬と一緒に生活しているという認識をもつこと。今後の具体策としては、1)食べ物を置いたまま目を離さない、2) すぐに叱るか、すぐに叱れないときはあきらめる(犬は問題発生時にすぐに叱らないと、なぜ叱られているのか理解できないからです。これは、飼い主に叱られ たことで犬がストレスを感じて家出をしたという因果仮説に関連した対策の1つです)、3)犬の行動範囲を限る(ゲージ、リードなど)」

事実に関する情報が不足している時は、Is/Is Not分析が威力を発揮し、どのあたりの情報が漏れているかが把握できます。この分析で十分な情報を得てからは、なぜなぜ解析が効果的ですが、情報量が不 十分なままなぜなぜ解析をやってしまうと、とんちんかんな方向に行ってしまう危険性があります。このことを身を持って知ることができたWSでした。

(「家出息子の帰還」に登場した息子たち)

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コメント

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  • コメント (8)

    • えきせんとりっく
    • 2008年 10月 20日

    えきせんとりっく@参加者 です。
    いや〜、家元も人が悪い。中尾さんがあそこまで
    晒し者になるとは思いませんでした。
    しかし、道友も、師範も言われるように、
    「真実」(何が起こっていたのか)を、どこまで
    見つけ出せるかが、再発防止対策の鍵を握っている
    というのは本当でしょう。
    今回は、相手が人語を解さない犬ですが、労働災害で
    「被災者死亡」などと言うときは、まさに「死人に
    口なし」。周囲の人に徹底的に聞き込みをするしか
    ありませんね。
    散々笑わせて貰いましたが、さて、是正処置の難しさ
    を思うと、いささか憂鬱になります。

    • 中尾優作
    • 2008年 10月 20日

    えきせんとりっくさんへ
    犬もしゃべってくれませんが、労災で亡くなった方ももうしゃべってくれませんから、
    そういう意味では今回の事例は、つながる面がありますね。
    言われてみて、初めて気がつきました。

    • 家元
    • 2008年 10月 20日

    家元です。
    中尾さん、いつもながら、あっという間に的確に表現されて、すごいな、と思います。今回はお題の提供も含めてありがとうございました。
    自分でもまとめていて気づいたのですが、
    中尾さんが「家族」という視点で愛情のこもった見方をしているのに対し、他の参加者は犬好きの人も含めて「犬」という視点から発想しているかな、ということです。
    息子が家出したからといって、「首に縄をつけないからだ」とは思わないですよね。
    3日間しょげていたのはハリーだけでなく、中尾さんもそうだったんだな、と。
    「愛のある是正処置」、今後のテーマの一つになりそうです。
    ちゃんちゃん。

    • 中尾優作
    • 2008年 10月 20日

    家元さん
    私は「家出息子の帰還」の最後に「今後は犬格を尊重する」と言っておきながら、犬側の視点をいまだ持ち合わせていないことを、参加者の皆様の指摘で思い知らされました。
    例えば、「フライドチキンを犬に食べられた」と思った瞬間、「犬が悪い!」という発想に行き、「この悪い部分をどう更正すべきか」などと勝手に考えてしまうのですが、「犬がいるのに、フライドチキンを置いたまま目を離した人間はどうなのか?」「人間の食べ物を食べさせないようなしつけをしているのか?」「犬がそのような場所に行かないような制限を設けているのか?」「食べてから時間を置いてからしかっても、犬にはしかられている意味がわからないことを認識しているか?」といった理路整然とした指摘を皆様からいただくと、モウ、グウの音も出ません。
    これは犬に対する「愛情」というよりも、手前勝手な「溺愛」かも。
    今、アイソスの記事を書きながら、猛省しているところでございます。

    • shika0323
    • 2008年 10月 20日

    10月18日は、難しい話なのに、適度に笑いがあり、楽しく学習できたと思います。
    本日は、社内で安全衛生委員会があり、事故と再発防止の話をしていましたが、“再発防止になってないじゃん”というものが多数ありました。WSのメンバーで、○さんなら、ああいうだろうなと思うと、委員会での話でありながら、ニヤついてしまいました。
    ○さん:特定の方ではありません。
    また、参加したいと思っています。
    よろしくお願いします。

    • 中尾優作
    • 2008年 10月 20日

    shika0323さんへ
    難しい話なのに、
    適度に笑いがあり、
    楽しく学習できた
    いやー、是正処置WSを簡潔に表現した見事なコピーですね。

    • GAI
    • 2008年 10月 21日

    いつも感心させられます。あの長時間かつ発散ありの状況が、それらも含めこんなにも端的にまとまるものなんですね。
    さらに家元からのコメントを読んで、少々心苦しい(それなりの発言をしたので)気持になりましたが、中尾さんのコメントで救われたような気持になりました(^^ゞ
    同じ犬を飼うものとして正直な話、リードなしで散歩はうらやましいです。おそらく我が家の次男(ワンちゃんです)も、私との散歩ではリードを引っ張らず同じ速度で歩きますから可能だと思います。実際のところ、公園でリードを外して自由にさせることもありますし、河原の遊歩道(土手の上)でもリードを外して一緒に散歩しています。ただし、公園なら誰も(人も、ワンちゃんも)いないこと、河原の遊歩道なら自動車が入ってこない、歩行者と自転車が識別された一本道という条件下で、さらに他の犬が散歩していないなどの条件付きです。何かあっては困りますからね。
    後はドッグラン。数キロ離れた所にありますが、そこまで一緒に散歩しながら連れて行くこともあります。しかしここも手放しにOKとはいきません。たとえば攻撃的な犬種(柴ちゃんとか)だと、躾が不十分なら噛みつきに来ましたし、質の悪いブリーダーの場合は躾もできていない犬を10匹くらい放したりして、犬だけでなく人間が噛みつかれるようなこともありましたから、結果的には普段の散歩よりも気を使います。しかし、嬉しそうに戯れる次男の様子を見ていると心が和みますので、普段よりも気を使わなければならない状況が苦痛になりません。
    このように、リスクがある程度予測可能であって、それが回避可能なケースにおいてはノーリードにすることもあります。しかし一般道のような環境ではしっかりリードを付けています。でなければ、結果的にはワンちゃんが被害をこうむるだけになってしまいますから。大自然の中で飼うのでなくて、人間社会の中で飼うわけですから、世間では人間が主役です。動物嫌いの人もいますから、やはりそれなりの配慮と監視状態は必要になります。
    犬を愛し信頼関係を築いても、同じ犬を飼うものとして外に出ればそれなりの配慮はしてほしい、そんな思いがWSの私の回答になってしまったんだと思います。中尾さんの、息子たちを愛する気持ちを否定するものではありませんでした。

    • 中尾優作
    • 2008年 10月 21日

    GAIさんへ
    「リード」というのは実に悩ましい問題ですね。やはり、リードなしで駆け回っているワンちゃんって幸せそうですから、どうしてもそうさせてやりたくなりますが、なかなか自由に外せる場所がありません。これは、犬だけでなく、飼い主にとっても、結構ストレスです。
    私の場合、自宅から車で10分ほどで九十九里浜に着きますので、天気の良い日は犬を積み込んで、人のいない浜に放ったりします。浜の遠くに人影が見え始めると、犬たちを呼び寄せ、自分の近くに「伏せ」をさせておきます。人が去ると、また放ちます。浜辺を走り回って喜んでいるのは犬なのであって、自分はじっと座ってそれを見ているだけなのですが、なぜか自分も自由な気持ちになってうれしいのが不思議です。

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