GFSI

「FOOD SAFETY DAY JAPAN 2014」の講演概要速報(午前の部)

主催による「FOOD SAFETY DAY JAPAN 2014」が10月30日9:30〜18:00、東京のTHE GRAND HALL 品川で、世界から21人のスピーカーを招いて開催された。午前の部の各講演者のテーマ及び講演概要を紹介する。

今回司会を務めたのは、影山のぞみ氏(MC、DJ、レポーター)と瀬在祥生氏(日本コカ・コーラ 技術・サプライチェーン本部品質保証・オペレーショナル・エクセレンス サプライヤーマネジメント部長、GFSI日本ローカル・グループ共同リーダー)。冒頭に影山氏が安倍晋三内閣総理大臣からのメッセージを読み上げた後、プログラムの講演に入った。

【GFSI最新情報】

テーマ①「GFSIの成果とこれから」

21_cenk.JPG講演者:ジェンク・グロル氏(イオン 執行役 Eコマース事業最高経営責任者兼食品安全推進(GFSI)、GFSI議長、GFSI日本ローカル・グループ共同リーダー)
GFSIのプログラムは、中小企業でも使えるようなデファクトスタンダートに近づいてきており、国際的にも発展している。日本でのこのような形のイベント開催は今回で最後となり、これからはエリアを拡大しアジアでの開催になる。

講演者:イブ・レイ氏(ダノン・グループ コーポレート・クオリティ・ジェネラル・マネジャー、GFSI理事)
2050年には世界の人口は90億人になり、この人口に対して、手頃な価格で安全な食品を提供しなければならない。そのためには、すべての消費者に我々がどのようなすばらしい仕事をしているかを理解してもらわなければならない。食品安全は複数のステークホルダー(政府機関、食品関連企業、教育機関と大学)が背負う責任である。GFSIは相互に連携するステークホルダーをサポートする役割を担っている。これからの戦略目標は、「認証を通じた食品安全リスクの軽減」「ステークホルダーの賛同を得た協力体制の改善」「GFSIの提唱するアプローチの採用の促進」「食品安全に関わる重要な問題に対処するための連携」の4つである。

テーマ②「グローバル・マーケット・プログラムへの挑戦」

02_tokuya.JPG講演者:徳屋邦彦氏(西友 コンプライアンス本部食品安全部、GFSI日本ローカル・グループ グローバル・マーケット・ワーキング・グループ リーダー)
GFSIの承認スキームにすぐさま取り組みを始めるのはなかなかむずかしいところもあるので、その入口として用意しているのが「グローバル・マーケット・プログラム」である。このプログラムは、基礎レベル、中級レベルが設けてあり、ステップアップをしながら、最終的にはGFSIの認証を取得することを目指す。GFSI日本ローカル・グループでは現在、4つのタスクホース(FCP、翻訳・パイロット、トレーニング、実証)を設置して取り組んでいる。その中の実証のタスクホースでは、キリン、イオン、日生協、西友の4者が、自組織の二者監査プログラムに、GFSIのグローバル・マーケット・プログラムが使えるかどうかを検証している最中である。

03_sugaya.JPG講演者:菅谷則雄氏(石井大一商店 衛生管理室)
石井大一商店は、食肉の卸・販売、食肉加工品の製造販売を行っており、西友とメトロキャッシュアンドキャリーとの共通の取引先であることから、西友の徳屋氏とメトロの吉澤氏の協力を得ながら、グローバル・マーケット・プログラムに取り組むことになった。最初は基礎編のギャップチェックとして、食品安全マネジメントシステム、GMP(適性製造規範)、ハザード制御(CodexHACCP)に取り組んだ。食品安全マネジメントシステムでは、ルールの文書化が不足していたので整備し、不適合品の定義があいまいだったのを是正した。GMPでは、GMPに準ずる点検・作業は実施できていたが、これらを全体的に管理するルールがなかったので、これを明確化し記録に残すようにした。ハザード制御では、正しい手法で危害分析とCCPの判定が未実施だった。Codexの手順に基づいて分析を実施、HACCPの力量については第三者による指導を受けた。実際にやってみて、作業の精度が向上し、責任分掌が明確になった。また、従業員の衛生に対する意識向上、海外ビジネス発展に対する意識の高まり、従業員のコミュニケーションの増加などがあった。国内での国産牛の需要は減少しているので、海外で人気が高い日本産牛肉の輸出が必要不可欠だと思う。今後の課題としては、中小加工業者が協同で国際標準化に取り組んで輸出を促進したい。そのためにも、弊社でやってきたことを、他の中小加工業者にも取り組んでいただきたい。

04_yoshizawa.JPG講演者:吉澤恒治氏(メトロキャッシュアンドキャリージャパン ファンクショナルヘッド、GFSI日本ローカル・グループ グローバル・マーケット・ワーキング・グループ)
日本が直面している問題は、短期的には食品の安全性の確保、中期的には2020年の東京オリンピック開催において海外から来られるお客様に日本の食品をアピールしなければならないこと、長期的には日本の人口が減少し、食品マーケット自体が減り、海外に向けて食品を売っていかなければならないことである。しかしながら、日本の食品業者の99%は中小零細企業であり、その中で、食品安全の認証やHACCP等に対応できているのは5%程度であるから、これからボトムアップをはかっていかなければならない。そのためには中小零細企業向けのトレーニングキットと評価員のトレーニングキット、この2つのトレーニングプログラムの開発が急務である。では、そのトレーニングを誰がやるのか、どうやってやるのか? これは企業だけではできない。やはり政府と協力してやる必要がある。非常に切羽詰まった状況である。自社の食品を輸出したいとお考えの企業は、食品安全の仕組みを構築し、それをお客様にきちんと説明する努力が必要である。そのためにはGFSIのこういった活動が非常に重要であることを認識していただきたい。

【フードフラウド(食品偽装)&フードディフェンス】

テーマ③「食品偽装の脅威と影響」

05_petra.JPG講演者:ペトラ・ウィッセンバーグ氏(ダノン フード・セーフティ・広報担当兼戦略プロジェクト・ディレクター)
・食品の安全性には4つの要素がある。それは食品偽装、食品品質、食品安全、食品防御である。食品偽装と食品防御は分かり用語だが、経済的な動機によって利益増大をもたらしているのが「食品偽装」であり、イデオロギーによる動機によって害をもたらしているのが「食品防御」である。
・食品偽装の具体例としては、置き換え、隠匿、不正な表示、グレーマーケットによる盗品や横流し品、認可されていない手段による機能強化、偽造、希釈などがある。食品偽装は複雑に入り交じった様々な要素を考えないといけない。食品偽装は世界中で起きている。
・偽装で最もよく使われている食品や食材としては、例えば、魚のタラ。本物のタラでないものが流通している。あるいは、オリーブオイル。それはバージンオイルなのか。低品質のものかもしれない。牛乳の70%には混ぜ物が入っているかもしれない。ハチミツについても、世界中に飛んでいるハチが生産するハチミツよりも、市販されているハチミツの量のほうが多い。
・食品偽装が増大している理由としては、サプライチェーンがグローバルで複雑化していることや、困難な経済状況においては最もコストの低いところから調達することになり、その調達先が食品偽装をしているところになりやすいなどがある。例えば、需給の関係でバニラの価格が上昇すると、本当のバニラでない食品偽装のバニラが出てくる。
・食品偽装が起きると消費者の信頼が低下し、食品偽装を行った企業は売上を損失し、危機管理のためのリソースを投入する必要も出てくる。
・GFSIでは、食品偽装の経験をどのようにガイダンスに取り込むかを検討している。GFSIとしては、食品安全管理システムの傘の中に食品安全、食品防御、食品偽装を位置付けている。食品偽装への対応については、2016年にはガイドライン文書のバージョン7に組み込む予定である。
・SSAFEという別の食品安全を扱うグループが、食品偽装対応の現実的なツールを作成しており、2015年の第一四半期には発表する予定である。非常に重要なツールなので、皆さんにもぜひ使っていただきたい。

テーマ④「食品偽装の効果的な検出戦略と抑止戦略」

講演者:ミッシェル・リー氏(ユーロフィン アナリティクス フランス 協働研究ディレクター)
・検出するだけでなく、実際に偽装を起こさせないようにする抑止戦略について延べたい。2014年7月、イギリスで起きた馬肉に関するスキャンダルの報告書を読むと、食品偽装は科学的な分析を実施しなければなかなか検出できないとしている。食品偽装における奨励事項は消費者第一主義とゼロ・トランス(あらゆるサプライチェーンで検査を行うこと)の2つである。
・必要な検査は、まず脆弱性の審査をすること。偽装の種類に合わせて検査を実施(S)し、それが測定可能なこと(M)、そして権限を明確化し(A)、現実的でなければならない(R)し、トレーサビリティも重要(T)である。このような検査を、SMART検査と呼んでいる。
・不正行為の巧妙度が増大するにつれて、先進的な科学分析に基づく分析のニーズが高まる。また、食品偽装に対しては、特定の対象に絞った分析ではなく、特定の対象に的を絞らない分析が必要になってくる。後者の分析には、赤外分光法、高解像度NMR、高解像度質量分析(LCまたはGC)などがある。
・SMART検査を実施するためのポイントは、どこで検査を実施するか、いつ検査を実施するか、何を検査するか、この3つである。重要なのは、そこで得た情報をしっかりと保管すること。これは将来のメラミン的な事故の予防につながる。
・効果的な検出戦略と抑止戦略は、検査の回数を増やすことではなくて、SMARTな検査を実施することが重要である。

テーマ⑤「テクノロジーができること」

06_nakamura.JPG講演者:中村豪志氏(日立造船 精密機械本部電子制御ビジネスユニット電子システム部部長)
・フードディフェンス、フードテロ対策として、まず外部からの侵入対策としては、①入場の制限、侵入者を製造区画に入れない、②カメラでの威嚇、24時間監視が必要。一方、内部の悪意からの対策としては、①従業員のケアとコミュニケーション、②カメラによる威嚇が考えられる。さらに、一番やっかいなのは、内部の悪意がない場合の対策である。具体的には、認証スキームなどで決められた手順、ルールが守られていない場合で、教育の不足、ケアレスミス、勘違いなどが要因であり、これは日常に潜むフードテロとも言える。
・対策は、製造現場の見える化が大事であるが、ただカメラを設置しても見える化にはならない。必要な管理ポイントを画像で可視化して検証できることが大切である。
・ハイテクで、フードテロは完璧には防止できない。人が効率よく運用するためのツールを使用し、身近なものからICT化するとよい。外部、内部からのフードテロの対策は結局は人対策である。

テーマ⑥「日本における食品防御の現状と課題」

07_imamura.JPG講演者:今村知明氏(奈良県立医科大学 健康政策医学講座 教授)
中国製冷凍餃子事件、アアクリフーズ農薬混入事件などが起きているが、食品流通が複雑になっていて、汚染物質の防御は非常にむずかしくなっている。食品防御は、悪意をもって、予想外の攻撃をしかけてくるため、予測・対応はむずかしい。我が国でも厚生労働省で食品テロ対策のための研究班を立ち上げており、その班長を私が担当しているが、食品防御対策ガイドラインを作成している。これは食品工場用のチェックリストとセットになっている。法的な規制や強制力があるものではない。このガイドラインは日本食品衛生協会のホームページからダウンロードできる。

テーマ⑦「食品企業におけるリスクコミュニケーション」

08_nishizawa.JPG講演者:西澤真理子氏(リテラジャパン代表取締役)
・アクリフーズ農薬混入事件は、企業におけるクライシス対応、準備と訓練不足が非常に大きい。平時からどうやってきたかが問われる。リスクコミュニケーションは平時のフードディフェンスに役立つ。平時のリスク対応ではリスクコミュニケーションが、緊急時の危機対応はクライシスコミュニケーションが重要であり、この2つは違う。アクリフーズは、平時も緊急時もどちらも失敗してしまった。平時のリスクコミュニケーションができていないと、緊急時のクライシスコミュニケーションもできない。
・日本はリスクコミュニケーションが根付いていない。企業の問題としては、①意識=コミュニケーションを面倒・不要と考えている。②体制(システム)=危機管理体制の欠如、③企業文化=傾聴・議論文化の欠落がある。これらの問題は、アジア他各国に進出した場合はリスクになる。
・ハザードは定性、リスクは定量である。例えば、お酒には発がん性物質が入っているので、ハザードはある。しかし、だからリスクが高いのかというと、それは含まれている量によって決まる。
・リスクコミュニケーションの目的は信頼の構築にある。「危険の存在を認め、危険に正対し、議論する文化をつくる」(畑村氏の言葉)ことが大切。だから、平時からリスクを伝える訓練を習慣付けること。平時からリスクコミュニケーションを導入していただきたい。誰かが過度の負担を背負わない社会を作るためにもリスクコミュニケーションは重要だと思う。

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