JABシンポ

JAB環境ISO大会 速報

iguchi.jpgテーマの背景【井口新一氏】
JAB主催の「環境ISO大会」が2月19日、東京・有楽町朝日ホールで開催された。午前の部、冒頭、井口新一JAB専務理事が、今回の大会テーマである「環境ISOの有効活用と活動の見える化に向けて」の趣旨説明。JABは「ビジョン2015」の実現に向けて、(1)広範囲なEMS関係者の交流・対話の場づくり、(2)環境ISOの有効性の見える化、(3)環境ISOの普及促進(特に中小企業への浸透)、(4)QMSとの協調・連携の強化、(5)E-EMS(Excellent EMS)の開発、を昨年の環境ISO大会で提言しているが、(1)については、EMS協議会(仮称)の設立準備を進めており、4月から本格的な活動を開始するとのこと。

同会の検討メンバーは、IGES-CFS(エコアクション21)、環境自治体会議KES環境機構JACB(審査登録機関協議会)、エコステージ協会、JAB。 このビジョン2015の実施によって、結果としてEMS登録件数は8万件達成(現在は約2万件)を目標にしている。なお、この10年間の業種別登録件数を 見ると、「卸売業・小売業」と「基礎金属・加工金属製品」がトップ。「公共行政」は2004年をピークに下降を続けている。今回の大会テーマは(2)にス ポットを当てたものである。なお、(5)については、国内のISO未来委員会と共に検討するそうだ。

itohsan.jpgISOは低炭素社会実現の重要なツール【伊藤一道氏】
次に、三菱総合研究所の伊藤一道・主席研究員が「環境経営の実践とISOへの期待 -低炭素経営を取り巻く課題-」をテーマに基調講演。まず、日本の京都 議定書削減目標である-6%が達成困難な状況であり、その不足分をクレジットで購入するにしても、肝心の誰が払うのかが決まっていない。国は自主参加型の 排出量取引制度を2008年から開始しているが、義務型の制度はまだ着手しておらず、東京都がはじめて今年4月から施行、来年度からスタートさせる。一 方、EUでは、目標未達時には罰金を課す排出量取引制度をすでに導入しているし、米国は連邦政府は着手していないが、州レベルでは2009年から東部10 州で火力発電所対象に制度を開始している。今年12月のCOPで次期(2013-2020年)目標が議論されるが、この中期目標は、現在の目標よりもさら に達成困難なことが予想される。そこで、低炭素社会が必須であるという方向性は明らかであるから、当面は2012年まで(中期は2020年まで、長期は 2021年以降)に起こるシナリオを分析し、リスクとビジネスチャンスを明らかにすることが重要である。最後にISOへの期待について触れ、CO2に関す る測定・算定方法などの制度化に伴いISO規格との連携が必ずとられるし、環境に関する国際協調の場ではISOが世界共通言語として使用される。このこと からも、低炭素社会実現のための地球益を目指す重要なツールとして大いに期待したいと結んだ。

nishio.jpg「見える化」の実践事例を紹介
【西尾チヅル氏】
午前最後のプログラムとして、筑波大学の西尾チヅル教授が午後から紹介される2社(パナソニック、ブリヂストン)の事例のポイントについて述べた。この中 で西尾氏は「環境ISOには2つの活用がある。1つは、既存の事業活動を所与として、環境ISOを当てはめるという消極的な活用。もう1つは、環境パ フォーマンスを向上させるために、マネジメントシステムの仕組み事態を変革したり、システムの存在の見える化を実践したりする積極的な活用だ。今回の2社 の事例は、まさに後者の取り組みである」と述べた。以下、午後からのEMS取り組み事例に続く。

 

sugano.jpg環境ISOと環境経営との一体感が薄れてきた【パナソニック】
(発表者:環境本部 菅野伸和氏)
パナソニックのような巨大企業が本気でCO2削減に取り組むと、その影響力も巨大だ。例えば、日本の家庭部門から排出されるCO2の11.5%がパナソ ニック製品から排出されている。菅野氏のプレゼンでは同社の多彩な環境に対する取り組みが紹介されたが、中でも「グリーンファクトリー(工場での環境経 営)」と「グリーンプロダクト(エコプロダクト)」の話は秀逸だった。パナソニックの工場では、グローバルに月度でCO2排出量を経営にフィードバックし ており、売上高、営業利益、在庫、CCMといった経営指標の中に、さらにCO2排出量も組み込まれている。また、世界初のユニークな環境配慮製品〈鉛フ リーPDP、お掃除ロボットエアコン(25%省エネ)、瞬間式温水洗浄便座(73%省エネ)etc.〉を次々に市場に投入すると共に、2009年は省エネ No.1商品を2007年(15%)の倍である30%(省エネ機種構成比)にする目標を掲げている。最後に、環境ISOについて菅野氏は、「環境経営の推 進(Kとする)と環境ISOの運用(Iとする)は、本来同期化すべきものだが、スピード感(K:月度管理、I:文章化するため年度で管理)、目標設定 (K:競争を前提とした積極的な設定、I:達成可能な確実な設定)、基本姿勢(K:先進性の追及、I:改善するシステムの維持)の3点において、一体感が 薄れてきている」と報告していて、非常に興味深い。

ishikawa.jpg審査機関と目的共有化/内部監査の指摘内容を点数化【ブリヂストン】
(発表者:環境推進本部環境推進部 石川伸次氏、栂野龍彦氏)

ブリヂストンのプレゼンの中で、他社ではあまり聞けない話があったのは、全社統合EMS活動の改善事例についてのくだりである。全社統合EMSでは、 PDCAのうち、Pにおける環境影響評価結果で見える化をはかることと、Cにおける 内部監査・外部審査を特に改善につながる重要な要素と位置づけている。統合したばかりの頃、環境影響評価については、本社や技術センターは環境推進本部が 実施し、工場は工場の担当者が実施していた。その点を審査員に「地区ごとにルールがばらついており、本社・技術センターの環境側面の特定に抜けや漏れがあ る」と指摘された。この指摘を反映させ、2008年には環境影響評価のルール統合を行うとともに、本社・技術センターの影響評価も環境に詳しい工場の現場 の担当者が行うことになった。また、外部審査での指摘が少ないので、これでは改善につながらないと考え、2007年には、事前文書審査を導入することで審 査員にはより多くの時間を現場審査に当ててもらうようにするとともに、審査機関と目的共有化をはかり課題の深掘りを行うことで、改善につながる指摘が出や すいようにした。さらに、2008年には通常のISO審査に加え、重点審査ポイントを設定するようにした。一方で、外部審査で指摘されたことが、内部監査 では見過ごされていることがわかったので、内部監査の改善施策として、法律知識と質問力の習得に力を入れた。その一例として、内部監査員研修では、相手が YES/NOで簡単に答えられる質問をするのではなく、自由な回答を要求するような質問(オープンクエスチョン手法)を指導しているとのこと。また、内tugano.jpg部 監査で良い指摘ができているかどうかの検証方法として、「記録・文書管理に関する指摘(書類の捺印忘れなど)」はポイント数が低く、「システムの不備や本 来改善していきたい内容に関する指摘」はポイント数を高くして、指摘内容の点数化を行い、それをグラフで表示するなどして見える化をはかっている。(写真 上・石川氏、下・栂野氏)

プログラムの最後は、本大会のテーマについてのパネルディスカッションである。司会は西尾チヅル氏が担当。パネリストは統計数理研究所の椿広計氏、松田技 術士事務所の松田啓寿氏、JACBから稲永弘氏、JABから久保真氏と、事例発表を行った菅野伸和氏、石川伸次氏の6人。以下、印象に残ったパネリストの 発言を紹介する。

paneler2.jpg審査市場は「レモンの市場」? 【椿広計氏】
*「レモンの市場」という言葉がある。中古車のように、外から見ても品質の良し悪しが買い手にはわかりにくい市場のことだ。こういう商品になると、中身が わからないので、どうしても価格に誘導される。ISOの審査も似たようなところがあり、いくら良い審査をしても、なかなか外から見ている人にはわからな い。中身が見えないので、価格の安いところに流れてしまうことがある。だから、審査機関は自分たちはこういう良い審査をやっていますということを積極的に 発言していく必要があると思う。しかし、どの機関も「自分ところはいい審査をやっています」と言うだろう。なので、「暮らしの手帖」で評価されていたから あの商品は大丈夫だ、といったような感じを持つことがあるように、審査を公正に評価するような「暮らしの手帖」的機関が必要なのではないか。もちろん、 JABがそれを担っているなら、それでいいのだが。
*環境ISOは外部に対して透明性を確保する上で有効な手段である。パナソニックの事例で、環境ISOが、競争の厳しい中でエコ商品を次々に開発していく 経営スピードに追いつかないという話が出たが、ネガティブな環境情報については企業は環境ISOでオープンにしなければならないが、エコ商品のようなポジ ティブな取り組みについての情報は、企業に余力がある時にでも、遅まきながら対応すればいいのではないか。ポジティブな取り組みで忙しい時に、環境ISO と同期をはかろうとすることは、銃撃戦の時に、鉄砲の弾の数を数えているようなものだ。

本気活用組と返上組に二極化する【松田啓寿氏】
*このような厳しい景況になってくると、本当にISOを活用しようという強い意思を持った会社と、やってられないとして認証返上する会社とに、はっきりと 分かれていくと思う。中小企業にとっては特に「目的・目標の達成」が重要になってくる。環境パフォーマンスに貢献できる目標を立てることが大事。また、中 小企業にはスピードがある。これを環境経営に生かしてほしい。
*現場の生々しい状況を経営層に報告するのが内部監査だ。経営層が「もっと詳しく聞かせてほしい」と言ってくるような監査が望ましい。大事なのは、第1回目のPDCAのAが、第2回目のPDCAのPにどうつながっていくか、という点だ。

パフォーマンス検証と連携すべき【稲永弘氏】
*個人的な見解として、環境ISOの制度は、GHG検証などのパフォーマンス検証との連携を促進すべきだと思う。
*システムが有効に機能しているかどうかを、審査でどのようにしてみるのか? それは、要求事項の項目ごとに1つ1つ適合性をみていくのではなく、アウト プットから遡るのである。最終的な達成度合いをみて、初期の目標が達成できていなければ、それはシステムのどこに問題があるのかを審査でみるのである。
*環境ISOの文書化がスピードを遅らせる点についてだが、文書化とは、文章にしなければならないということでない。審査員に見せるために書類にしておかなければならないということではない。例えば、パソコンの中にデータの形で入っている状態でもいいのだ。

paneler1.jpg議論の成果はQMS公開討論会で
【久保真氏】

*認証機関において、有効性をみるというのはどういうことかについては、現在も議論を続けているところだが、「目標を達成しているかどうかをみる」という 点についても、その目標自体が妥当でないかもしれないし(非常に低い水準の目標であるとか)、たまたまその時は達成できただけで仕組みとしてはできていな かったのかもしない。こういった議論の成果については、3月に開催されるQMSの公開討論会で何らかの発表ができると思う。
*環境ISOと環境経営のスピードの同期については、もともと技術開発部門のような、めまぐるしく状況が変わるようなところでは、マネジメントシステムは なじまないのではないか。また、スピードをそぐという問題で、環境ISOの文書化についても、詳細に書かなければならないとか、きれいに書かないといけな いとか、審査のために不要な対応をしていることはないだろうか。

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コメント

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  • コメント (1)

    • おばQ
    • 2009年 3月 01日

    お金がなくて聴講してません。中尾さんのお書きになったものを読んだだけでのコメントです。
    なんか、みーんな実態を知らないという感じですね
    どれということではないのですが、言葉の節々に見ています。
    パナソニックの
    >「環境経営の推進と環境ISOの運用は、本来同期化すべきものだが、スピード感、目標設定、基本姿勢の3点において、一体感が薄れてきている」
    これってパナのEMSはISOと二重帳簿ですって意味ですよ
    西尾氏の
    >環境ISOには2つの活用がある。1つは、既存の事業活動を所与として、環境ISOを当てはめるという消極的な活用。もう1つは、環境パフォーマンスを向上させるために、マネジメントシステムの仕組み事態を変革したり、システムの存在の見える化を実践したりする積極的な活用だ。
    この論理、ハチャメチャでんな
    正しくは「既存のEMSを改善して、環境パフォーマンスを向上させる」ことではないのでしょうか?
    >システムの存在の見える化を実践
    ヘエー意味不明です。
    松田氏
    >本当にISOを活用しようという強い意思を持った会社と、やってられないとして認証返上する会社とに、はっきりと分かれていくと思う。
    単に、経済環境が厳しくなれば、形式のISOは廃れていくだろう、ちゃんとしたISOなら残るだろうというだけでしょう!
    視点が認証側にあるからそういう言い回しになるんでしょうね

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