JABシンポ

速報 JAB環境ISO大会(2010)

日本適合性認定協会(JAB)主催による「2010年度 JAB環境ISO大会」が2月17日、東京・有楽町朝日ホールで開催された。今回のテーマは「情報開示 – 環境ISOの信頼性向上のために -」である。以下、進行順にスピーカーと講演概要及びパネルディスカッションを紹介する。

主催者挨拶:日本適合性認定協会専務理事・事務局長/井口新一

20110217_iguchi.jpg冒頭、2006年のJAB環境ISO大会で提示した「環境ISOビジョン2015」(2015年時で実現すべきあるべき姿)とその実現のための5つの提言を 再確認。続いて世界及び日本におけるISO 14001の認証動向を説明し、昨年同様JABの認証件数とISO Surveyの認証件数に1万件以上の差があることにふれ、昨年同様「なぜそうなのか、分からない」とした。JABは相変わらず2015年時にISO 14001認証件数8万件を目指している。なお2010年度もJABではISO 14001運用状況に関するアンケート調査を実施、1,500社にアンケートを配布し、約800の有効回答を得た。回答企業の7割強が中小企業で、8割以上が更新審査を2回以上経験している。この調査から、ISO 14001認証取得により、事業所内での環境負荷低減活動や、法順守及び組織が同意した要求事項への対応については十分達成できているが、情報開示につい ては環境方針の開示以外は、きわめて消極的なことが分かったとしている。しかし、認証登録証だけでは一般関係者や利害関係者から信頼を得られるとは言え ず、やはり認定機関・認証機関・組織3者のより積極的な情報公開への取り組みが必要であるとした。

特別講演「CO2の見える化に向けて -カーボンフットプリント制度試行事業の成果と今後の取組」:経済産業省産業技術環境局環境調和産業推進室長/村田有

305-20110217murata.jpg温室効果ガス排出量の「見える化」を目的としてカーボンフットプリント制度が日本で2008年に閣議決定され、現在試行事業の2年目に当たり、来年度で試行 事業は終了する。この制度は、商品のライフサイクル全体で排出された温室効果ガスの見える化の仕組みであり、一定のルールに基づいて産出した数値を、製品 にラベルの形で貼付している。すでにカーボンフットプリントを貼付した商品が市場に出回っており、消費者の認知度も向上しつつある。似て非なる制度として カーボンオフセットがあるが、すでに手だてを出し尽くした時にやるのがカーボンオフセットであるから、カーボンオフセットの前提になる取り組みとしてカー ボンフットプリントがあると考えたい。世界動向を見ると、新興国の大都市における消費者の環境意識は日本よりも高く、一方で環境ブランド構築面で日本は欧 州・韓国勢に先行される懸念がある。また、組織のサプライチェーンのCO2の見える化をはかるガイドライン「スコープ3」の標準化の議論に日本企業が参加 していない。カーボンフットプリントは2011年内にISO 14067として発行される予定であり、取引先から認証取得を求められる可能性がある規格でもあることから、日本もこの分野に積極的に取り組むべきであ る。特に、審査料金や登録料、コンサル料が無料となる試行事業は2011年度で終了するので、この分野に関心のある企業はぜひこの機会にカーボンフットプ リントに取り組んでいただきたい。

JAB/ISO 14001研究会の趣旨説明:筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授/西尾チヅル

306-20110217nishio.jpg環境ISOへの取り組みは組織によって温度差があり、積極的にISOを活用している組織とそうでない組織がある。一方で、環境ISO制度の信頼性に対する社 会的要請は高まっており、それへの対応として、JABからは環境ISOビジョン2015が提言されているし、経済産業省を中心とした「アクションプラン」 等の信頼性向上への取り組みも行われている。JAB/ISO 14001研究会では、この2年間環境ISOの有効活用と活動の見える化をテーマに活動を続けた結果、有効活用している組織は、環境ISOの手順や仕組み をうまく活用しながら、EMSの深化とEMSの見える化をはかり、ステークホルダーの信頼を得ていることが分かった。そこで本年度は環境ISO活動の「見 える化」をはかるべく、「情報開示:環境ISOの信頼性向上のために」をテーマとした。

環境ISOの情報開示の意義と課題「組織の目線から」:味の素株式会社環境・安全部専任部長/田辺和光

308-20110217tanabe.jpg「規格の採用そのものが最適な環境上の成果を保証するものではない」とISO 14001の序文に書かれているように、ISO認証取得は、良い環境パフォーマンスを保証しているのではなく、良い環境パフォーマンスが期待できるのであ る。今回のテーマである「環境ISOの信頼性向上のための情報開示」で照らし合わせてみると、ステークホルダーがこれまで組織に求めてきたのは良い環境実 績であり、不祥事がないことであったが、今後は、将来のより良きパフォーマンスを期待してくるだろう。すると、その期待に応えるには、現在のパフォーマン ス(結果)に加えて、現在活動中のプロセスと将来のポテンシャルを情報開示することが必要になってくる。では、その開示されたプロセスの中身は何かという と、具現化されたISOの要求事項であることに気づく。つまり、組織がプロセスの中身を情報開示していくことでISO 14001の有用性が認知され、ISO 14001認証取得の価値も上がるという相互作用が生じる。これが情報開示の大きなメリットである。

環境ISOの情報開示の意義と課題「消費者・社会の目線から」:ジャーナリスト・環境カウンセラー/崎田裕子

20110217_sakita.jpg環境への期待が高まる一方で、環境関連不祥事も認証組織で起きており、環境ISOへの信頼度が低下しており、認証を取っただけでは消費者・社会は納得しなくなっている。環境ISOはプロセスを認証し、結果を保証するものではないことを消費者・社会に広報を徹底しなくてはならないし、一方で組織はISOの認証 を取得して、どのような環境活動をしているのか、そのプロセスを開示することが期待されている。情報開示の内容は、例えば組織が不祥事を起こした場合、組 織はネガティブ情報の開示を信頼性回復に生かし、認証機関はなぜ組織状況を的確に判断できなかったのかを調査し、対応内容を開示してほしい。情報開示の方 法については、環境情報の開示過程で、消費者・社会が参加できる仕組みをつくること(環境意識の高い消費者との意見交換など)が重要と考える。特に、環境 ISO認証の信頼性アップには、投資家・金融のニーズを意識した相互交流できる過程情報開示が重要である。

環境ISOの情報開示の意義と課題「認証機関の目線から」:財団法人日本品質保証機構マネジメントシステム部門理事/穂高志郎

303-20110217hodaka.jpg認証機関の情報公開については「情報公開プログラム(仮称)」で具体的に検討を進めている。消費者・社会は環境ISO活動の仕組みやプロセスの情報開示を求めているので、我々としても認証制度の広報活動、登録内容の開示、審査の仕組み・プロセスの開示を推進する必要がある。認証機関に対する要求事項である ISO/IEC 17021には、認証機関は、組織の認証状態に関する適切な情報開示をする必要があるが、一方で組織との機密保持は第三者機関として重要な前提であるとし ている。MS認証懇談会では環境情報の公開・開示について議論を続けている。なお、環境ISOの環境情報の開示は、組織の自主的な判断により行い、開示し た情報の説明責任は組織にある。認証審査は、ISO 14001との適合性(要求事項としては外部コミュニケーション)を第三者の立場から評価する。

パネルディスカッション:司会/西尾チヅル、パネリスト/椿広計(統計数理研究所)、田辺和光、崎田裕子、穂高志郎、久保真(日本適合性認定協会)

309-20110217zdan1.jpg【西尾】
まず、環境ISOの仕組みやプロセスを開示するメリットは何かについて、各パネリストから意見を聞きたい。

【崎田】
最 近、環境情報開示に熱心に取り組んでいる事業者が増えている。ただ、一般消費者は大きな会社はブラックボックスだと思っている。しかし、たとえ2時間のプレゼンでも、企業が環境について話をするだけで、一般消費者の理解は相当進む。なので情報開示に積極的に取り組んでほしい。結果情報だけでなく、どういう 中でそういう結果ができてきたのかをしっかり開示し、その開示のプロセスに一般市民も参加できるようにしてほしい。

【田辺】
情報 開示というと一方通行的なので、コミュニケーションといったほうがいいと思う。組織から情報を出すだけでなく、その情報についてステークホルダーから フィードバックが欲しい。それに対して、組織がまた対応する。そのようなことをきちんとやれば、企業競争力がついてくる。

【穂高】
情報開示することによって、制度への信頼性が高まり、認証件数も増え、それが最終的に地球環境に貢献することになるだろう。消費者・社会と情報交換を行うことで、レスポンスが得られ、それがさらなる環境活動促進につながる。

【久保】
認 証は登録されるか否かという1か0かの世界である。一方、認証状態にある組織のマネジメントシステム活動の内容は、組織によって異なる。どういうプロセス で認証されたのかを開示することで、消費者・社会からフィードバックがかかり、それが認証制度の発展につながると思う。同じ認証状態でも、その中でそれぞ れの企業がベストプラクティスを追求し、情報公開すれば、さまざまなレスポンスがあって、メリットが出てくるだろう。

【椿】
マネ ジメントシステムというのは、まじめな仕組みだと思う。しかし、一般の方が、組織がまじめにやっているかどうかを判断するのはむずかしい。だから、まじめ にやっている組織は、もっと積極的にまじめにやっていることを外に向かって言わないといけない。まじめな組織がバカをみない、いい意味でのドミノ効果を期 待したい。ISO 14001の認証を取ったというだけでは、消費者・社会はよくわからない。マネジメントシステムの中で、自分たちはどう取り組んでいるのかを、外部に言う ことが大事だ。

【西尾】
品質と比べ、環境ISOの仕組みを開示するメリットについてはどう考えるか。

【椿】
環 境のほうが、品質よりも、情報開示では先んじることができると思う。環境ISOの情報を開示することは、品質のようにステークホルダーが限定されていた り、企業秘密に抵触したりといったケースが少ないはずなので、組織にとってもステークホルダーにとってもメリットが大きいと思う。

【西尾】次に、どうやって情報開示をしていくのかについて、意見をうかがいたい。

【穂高】
情報開示は、組織自身が自主的に行ってほしい。

【田辺】
組織にとっては、情報開示をしたという事実だけでも大変なことです。審査結果の中に、情報開示したことについてちょっと書いていただけると有難い。

【崎田】
企業が環境に熱心に取り組んでおられる情報を欲しいと思った時、どういうところにアクセスすればそういう情報が得られるのか、その情報源を明確に分かりやすく提示してほしいので、そのへんの仕掛け作りをお願いしたい。

【久保】
情報開示を進めても、制度そのものを知ってもらわないと、効果が出ない。そこで、この制度のメリットを訴求するなど、広報活動に力を入れている。(パワーポイントを使って、JABの広報活動の詳細や、組織不祥事が起きた時の情報公開の対応プロセスなどを説明)

【穂高】
断片的にパフォーマンスの数値だけみても、それがどういう意味なのかはわかりにくいものだ。システムについても、経年変化でどうなってきているのかというところを見ないといけない。情報開示をする側は、そのあたりについて気をつけるべきだろう。

【崎田】
公開された情報が消費者・社会に理解されるか否かという問題ももちろん大事だが、それ以前に情報公開を積極的にしている姿勢を示すことはもっと大事だと思う。

【久保】
制度の情報公開については、日本は進んでいるほうだ。また、認証関係の情報を政府に提出せよという国もある。

【椿】
自分たちで積極的に情報開示をやっていこうという認証組織が集まって「名門酒会」のような団体を作って、アピールしていけばいいのではないか。そういう活動をしていると、そのうちに今まで情報開示に関心のなかった組織も寄ってくるのではないか。

質疑応答

310-20110217zdan2.jpg質問
【発言者:コンサルタントのKさん】
情報公開は認証取得の普及につながるのか?
「消費者や社会は環境ISO活動の仕組みやそのプロセスの開示を求めている」と述べているが、これは事実としてそういうことがあると言っているのか?
(会場から拍手あり)

【田辺】
私は必ずつながると信じている。プロセスを開示していくことは、1つ1つの要求事項に結びびついている実例を開示していることであり、それは、まだ認証を取得していない企業にISO 14001を教えることにつながる。

【崎田】
認証取得した企業が、情報公開する余裕がない場合があるだろうが、情報公開することで、環境ISOの裾野を広げるための説得材料になるに違いないと思う。

【椿】
中小企業にとって、間尺に合わない認証取得に走るのは好ましくない。しかし、本当は、環境ISOの仕組みを導入することは、中小企業の体質改善につながると 思う。自分たちでわからないまま、形式だけのEMSを取り入れているから、間尺に合わなくなるのではないか。本来は認証前に、自分たちのEMSはどんなも のかを考える必要がある。そのあと、自分たちで考えたEMSを認証機関でみてもらうか否かは、それはビジネスメリットを判断して選択するしかない。情報公 開を進めることで、認証取得の加速度は逆に落ちるかもしれないが、一方で無意味な認証が減っていくことにつながるかもしれない。

【穂高】
もともと自主的な基準なので、情報公開も自主的にやっていくものだと思う。情報公開が進み、いい情報が普及することで、認証取得が拡大する可能性はあると思う。

【久保】
認証制度の普及のためには、いろいろな手を考えないといけない。情報公開もその1つとして取り組んでいる。情報公開をやっている環境ISOが、やっていない環境ISOよりも価値が高いということになれば、認証取得が広がると思う。

【西尾】
今回の質問は、情報開示の危惧すべき側面を指摘していただいた。制度関係者からみれば、パイを大きくするというのは非常に大事なことだと思う。しかし、パイ を大きくする一方で、制度の質を向上させることも、この制度を続けるためには重要な要素である。情報開示もその質を上げるための1つの要素だと思う。情報 開示することによって、その組織が評価されるようにすることが重要だ。

311-20110217zdan3.jpg意見
【発言者:認証機関所属のEさん】
当機関では登録している組織の情報を公開しているが、登録組織の情報を公開していないJAB非認定の認証機関が、安い値段で当機関の登録組織の所へ営業に来て、登録を持っていく。これが今の現状だ。情報公開が、そういった状況を助長する危険性もある。
(会場から拍手あり)

【椿】
質が可視化されていない市場をレモンの市場と言うが、認証がそういう状況になっては困る。認証には質があり、それを見せることができる。それは認証機関では できなくて、組織しか見せれない。認証を価格競争に落とし込んでいけば、結果として認証を取っても意味がないということになり、第三者制度の信頼性がなく なってしまう。制度の質を守りたいという人々は、認証の質を見せなければならないと思う。

【田辺】
情報公開を義務化すると、ちょっと重荷だ。なぜなら情報を開示することでメリットを受けるのは、情報を開示している側だからだ。

【崎田】
せっかく公開した情報が、他の認証機関に利用されてしまうということを聞き、大変なことだと思った。そうならないための仕組みを作っていただきたい。

【久保】
情報公開については、認証機関の状況を踏まえた上で、認証機関の自主参加によって議論している。

【穂高】
当機関でも、認証登録をしたとたん、すぐにその登録組織の事務所に他機関の営業が来ているという状況だ。ただ、登録組織の情報は開示するというのは、認証制度の基本だと考えている。

【西尾】
質問者から「足下をすくうを危惧」として貴重な指摘をいただいた。一所懸命コツコツやってきたEMSを、社会にしっかりと知らせていくことは重要だが、情報 開示にはむずかしい面も多い。まずは自主的に環境ISOに取り組んだ組織が、共通のフレームで情報開示することで、それらの組織の頑張りが消費者・社会に 評価され、それが制度の発展につながるだろう。では具体的にどうやっていくかは、まさにこれからの課題であり、みんなでディスカッションしていくことが必 要だ。

以上でパネルディスカッション及び質疑応答は終了、閉会となった。

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コメント

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  • コメント (3)

    • イソハドーグ
    • 2011年 4月 26日

    今日(4月26日)、JABのホームページに大会開催報告が掲載されました。2ヵ月半熟成されてからの報告ですね。
    中尾さんは、大会開催当日に掲載してくださってますね。
    ありがとうございます。さすが、中尾さんです。
    あぁ〜、これは、ボツかなぁ。

    • イソハドーグ
    • 2011年 4月 28日

    あれっ?ボツじゃなかったのね。

    • 中尾優作
    • 2011年 4月 29日

    ええ、これくらいならJABさんもセーフだと思って。

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