JABシンポ

ISO 9001公開討論会 速報

本日、JAB主催の「ISO 9001公開討論会」が東京ビックサイトで開催された。第15回目を迎える今回のテーマは「審査を変える 〜QMS認証の価値向上〜」である。開催前に3つのワーキング・グループ(WG)で1年間議論が行われ、今回はその集大成の発表である。各WGのテーマは、WG1が「QMSの有効性をみる 〜ISO 9001逐条審査からの脱却〜」、WG2が「社会・組織の期待に応える審査 〜現行制度の枠内でどこまで可能か〜」、WG3が「組織が望む価値ある審査 〜審査の活用と期待〜」である。事前にJABのウェブサイトには、基調講演と各WGのプレゼン資料が公表され、質問やコメントが受け付けられており、今回のプログラム最後のパネルディスカッションでそれらの質問にパネリストが回答した。

090316iguchi.jpg公開討論回は冒頭、主催者側を代表して井口新一氏(JAB専務理事)が挨拶に立ち、認定を巡る制度改革の新しい動きとして、第一に、審査制度の結果の利用者 (顧客や社会など)の声を聞き、制度運営や審査基準に反映させるためのユーザー委員会をIAF(国際認定フォーラム)内に設置すること、第二に、受審組織 にどのような認証効果が出ているかを調査すること(例えば認定機関がダイレクトに受審組織を訪れて調査するなど)を検討中であること、第三にEUでは1国 1認定機関とすることを決め2010年1月から施行すること(この動きが日本に波及すると、例えばJABとJIPDECという2つの認定機関は、どちらか 1個が生き残るか、合併して1個になることに)、第四に、現在IAFで行われているQMS/EMSに関する認定機関同士のMLAに加え、サブ・スコープ (セクター別規格対応など)の追加を検討していることを紹介した。

090316iizuka.jpg続いて、飯塚悦功氏(東京大学教授)が基調講演。ISO 9000の規格及び制度の発展を説明するとともに、基本的な特徴を解説。特 に制度については、本来審査料は、認証を評価する顧客や社会が支払って、対象となる組織に審査を受けてもらうのが妥当な形なのだが、今の認証のビジネスモ デルは審査料は申請した組織が支払っているので、質の良い審査をする認証機関が発展するような制度運営構造になっていないとしている。では、今のモデルの 中では、良い審査はできないのかというと、前回の公開討論会では「情報公開」によって、それがある程度実現できるのではないかと提案した。今回も、いきな り制度そのものを変えようという議論をするのではなく、あくまで今ある制度の中で、どこまで審査を変えることができるかという議論を行った。では、今ある 制度の枠内とは何か。それは、1.ISO 9001要求事項への適合性評価、2.客観的証拠に基づく評価、3.コンサル禁止の3つの枠内で議論することだとし、各WGの主査発表の前に、議論の基本 スタンスを明示した。

090316090316munechika.jpgWG1 の討論結果は棟近雅彦氏(早稲田大学教授)が発表。このWGの功績は、「有効性審査」を定義し、その審査方法と審査事例を具体的に提供したことにある。 WG1が考える「有効性審査」とは「QMSの有効性を検証するため、アウトプットに着目し、結果または実施された程度(パフォーマンス)が目標または期待 された結果を生み出すようになっているかを判定すること」である。ISO 9001に適合しているかをみるのが「適合性審査」であり、その「適合性審査」の中に、QMSが有効に機能しているかをみる「有効性審査」が含まれている としている。WG1が提示した有効性審査の方法や事例に対しては、JABのウェブサイトを参照のこと。ただ、この事例に出てくるような審査を行うには、かなり周到な審査準備と審査員の力量が必要である。

090316katou.jpgWG2 の討論結果は加藤芳幸氏(日本規格協会名古屋支部)が発表。同WGでは、審査制度に対する批判・不満・不信などが起きるのは、社会や受審組織が持つ期待に 対して、第三者認証審査の成果が応え切れていないことのギャップから生じていると分析。WGとして具体的には3つの提言を行っているが、そのうちの1つ は、組織能力を伸ばすための5つの審査ステップ(1.組織・製品プロファイル等の精査、2.組織が持つべき能力の特定、3.この能力のQMS要素への埋め 込み方の想定、4.有効性審査+前述に基づく審査、5.期待に応えるための取り組みが積極的に開始されるよう審査結果を文書化)であり、そのステップを1 から3までを適用した事例を紹介している。

090316tomono.jpgWG3の討論結果は友野猛雄氏(株式会社山櫻)と古泉功氏(インクリメントP株式会社)が発表。まず友野氏は「組織の期待を実現するために、有効性審査の厳格化を提案。受審組織側の取り組みとしては次の5つを提言している。
1.審査前に組織の実態を伝達する。
2.トップインタビューにおいて組織の問題意識・経営課題を伝える。
3.組織は現場の実態を見せる。
4.不適合を真摯に受け止め改善につなげる。
5.組織として不本意な審査をされた場合には認証機関へクレームを出す。

090316koizumi.jpg続いて、古泉氏が、上記5つについて、自社でどのように取り組んでいるかを発表。
まず、1については、品質マニュアル、品質目標及びその進捗、マネジメントレビュー、内部監査状況、不適合の発生状況、経営層の審査への期待などに関する 資料を、審査計画へのインプットとして提供している。ただし、それは日頃使っている資料をそのまま渡すのであって、決して別個に作成したりはしないとして いる(この点は重要だ。ある審査機関は、審査前に、自機関のフォーマットによる何枚もの調査資料を受審組織に書かせて、提出させている。これなどは、受審 側にどれだけ余分な負担をかけているかを考えない、実に官僚的な対応と言えるだろう)。
2のトップインタビューでは、トップだけでなく、他の経営層も参加してもらう。経営層には、認証に理解を示す人もいれば、そうでない人もいるので、その温度差を審査員に感じてもらいたいとしている。
3では、真因に近づいてもらえるように、不適合検出への協力を惜しまない。
4では、不適合の指摘を受けたら、即座に対応する。指摘の中には、真因に迫るようなものが審査で見つからなかったので、時間不足のため改善の余地が出されたと思えるものもある。組織に真因に至る考えを促すような指摘をしてほしいとのこと。
5は、クレームを含めた審査に対する評価についてであるが、組織側が審査について評価する場としてクロージングミーティングがある。ここでは、良かったこと、良くないと思ったことをお互い隠さずに伝えることが大切だとした。

各WGの発表のあと、パネルディスカッションに入り、事前に受け付けた質問やコメントに対して、コーディネーターの飯塚氏と7人のパネリスト(棟近氏、森 住光男氏〈日本規格協会〉、加藤氏、武田昌彦氏〈株式会社アドバンスド・アイソ・マネジメント〉、友野氏、古泉氏、久保真氏〈JAB〉)が回答した。50 以上の質問やコメントが紹介されたが、その中で印象に残ったQ&Aを紹介する。なおここでは、質問や回答は簡略化して記述している。

【質問】
虚偽の対応をしている組織に対して、審査で何か対応できないか?
【回答】
・審査では法規制への適合性を担保できる仕組みになっているかをみている。(森住氏)
・会社全体がグルになって虚偽の対応をしていた場合は、審査でそれを見つけることはむずかしい。それを見つけるには、おそらく捜査権のようのものが必要になるからだ。だから、今の認証制度ではそこまでのことはできない。(飯塚氏)

【質問】
有効性審査のガイドラインをJABが出すべきではないか。
【回答】
現在、JABとしてもそれをまとめているところだ。たぶん今回のWG1が発表した内容に似たようなものになると思う。(久保氏)

【質問】
有効性審査の事例が出されているが、このような審査を行うには相当な工数がかかるので、現状の工数内ではできないのではないか。
【回答】
「審査を変える」ことの中には「審査工数を変える」ことも含まれている。(加藤氏)

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コメント

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  • コメント (5)

    • 迷える仔豚
    • 2009年 3月 17日

    このネタ、いそいそフォーラムの研修会での不完全燃焼のにつながりますね。
    今が旬のネタなのかなぁ。
    Part2(バトルロワイヤル版)やりましょうか。

    • 中尾優作
    • 2009年 3月 17日

    迷える仔豚さんへ
    <Part2(バトルロワイヤル版)やりましょうか。
    なぜ、こういう闘論をやると、不完全燃焼に終わるのか? そこのところを見極めてからでないと、もう一度やってもうまくいかないと、私は思います。アイソスも一度、2006年2月号で「システムの進化を共に考える」という企画をやったことがあります。この「共に」というのは、ご存知の通り、受審側と審査側という意味です。夏に合宿をやったり、クリスマスの日には公開で討論会をやったりしましたが、この企画は、各論成功、総論失敗でした。各プレゼンターの発表内容はすばらしかったのですが、最終的にはいい結論を出せずじまいでした。やはり、本音レベルで、お互いに目指すべき共通項がちょっとでも見えていて、はじめて総論成功の可能性が出てくると思います。私にはまだそれが見えていませんが、仔豚さんは見えていますか?

    • とある会社の事務局
    • 2009年 3月 17日

    ウェブサイトの資料を見ただけで、討論会には参加できなかったので、見当違いなことを言っているのかもしれないのですが、
    例えば資料1で紹介されている有効性審査の事例 … 有効性審査ってこういうものなのでしょうか。
    与薬ミスとか患者とのコミュニケーション上の問題とか、ある意味では病院にとって品質保証の根幹に関る重大問題が発生しており、それは品質目標であるにもかかわらず、削減できていない … これは品質マネジメントシステムの8.2.3なり8.5.2なり(あるいは5.6なり)が機能しているのかが疑われる事態ではないのでしょうか。
    6.2.2のその他の処置 … そこに手を打たなければならないということはそのとおりでしょうが、そんなことが審査で指摘されるまで発見できないQMSって何なのでしょう。
    有効性を云々する前に、
    「顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たした製品を一貫して提供する能力」に関る問題として厳しく指摘すべき事項なのではないのでしょうか。

    • 迷える仔豚
    • 2009年 3月 17日

    あぁ、ウワサの「ふざけるな」ですね。
    どうして総論的に失敗となるかということですね。
    なんで「2ちゃんねる」で炎上や祭が起きるのか?という疑問につながるのかも知れません。
    良くも悪くも匿名性のなせる業ではないでしょうか。
    仔豚も、仔豚だから書ける話があります。リアルでは言えないことも書けてます。この書き込みもリアルに書くならば、本社のCSR部門を通して承認を取ってから(たぶん取れないし)ということになるんでしょうね。
    100号の時も、それでもめたんだけれど、最後は「朝日新聞の読者の声も本社の許可が要るのか?」ということで個人でOKとなりました。でも次のページに出入りの業者さんが書いたのでバレバレでしたけど(^0_0^)
    いそいそのメンバーはそこのところのコントロールが自然とできるようになっていますが、普通はスーツと言う鎧を付けてしまえば勝手なことも言えませんし、結果的に本音の意見が出ないのかも。
    ましてや、舞台の上で本音がでるなんてことは絶対にないでしょう。
    紙風船の後藤悦治郎さんが昔言ってられました。
    民謡を伝承しようと各地に行くけれど、聞かせて欲しいとたずねるとその途端にオリジナルと変わってしまったということです。録音をすると全く違う。同じようにとお願いしても素朴な感じが無くなるということでした。
    そんなことかも知れません。
    確かに、雑誌の討論で本音で語れるというのは普通ではないのかも知れませんね。白鳥の『アクティヴ・フェーズ』を使うようなことをしないと駄目なのかも。でもそんなことしたら、骨折だけではすまないだろうしなぁ・・・・・

    • 中尾優作
    • 2009年 3月 17日

    迷える仔豚さんへ
    うーん、雑誌における本音実名トークが非常に困難な事であることはよく理解できました。

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