JABシンポ

速報 第17回 JAB/ISO 9001公開討論会

346-20110530panel.JPG公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)は5月30日午前10時から午後4時30分まで、東京・ビッグサイトで「第17回 JAB/ISO 9001公開討論会」を開催した。この公開討論会では、4年前から審査・認証制度をメインテーマにした議論が続けられているが、今回のテーマは「QMS能力実証型審査 ─真の有効性審査を求めて─」。実際にどのような審査をするべきなのかという実践的な方法論に踏み込んでいる。討論会の進行順に、発表者と発表内容の概要を以下に紹介する

【主催者挨拶】
JAB理事長/久米均氏

TC176国内委員会を立ち上げたときから、ISO 9000に携わってきた。この仕事に対する最後のご奉公ということで理事長を引き受けた。ISO 9000審査登録のメリットは次の3つである。
1. 購入者品質システム監査の代替化
2. Quality Lossの予防
3. 供給者品質保証能力の社会的認知(国際的に認知してもらう)
審査ではシステムをみるだけでなくて、パフォーマンスも評価すべきではないかという意見もある。しかし、審査員がパフォーマンスに精通しているわけではな いし、それを国際的な基準で行うことはむずかしい。また、ISOは予防のための仕組みだが、事故が起きていない状態で、予防のパフォーマンスを評価するの はむずかしい。このようにパフォーマンスの評価については、まだまだ議論をしなければならない。

【JAB活動報告】
JAB専務理事・事務局長/井口新一氏

井口氏は、これまでのISO 9001公開討論会の提言を紹介。それに基づいて、情報公開(認定審査及び認証審査の情報公開)と認定審査手法について検討した旨を報告。認証審査の情報 公開についての検討は、認証機関の自主参加で行っているとし、また認定審査手法及び認定審査プログラムの概要について説明した。

【基調講演】「QMS能力実証型審査 ─真の有効性審査を求めて─」
東京大学大学院・特任教授/飯塚悦功氏

公開討論会はこの3年間、社会制度としてのISO 9001認証を議論してきたが、今年はこの枠組みをくずさずに、どのような審査をやるべきかということを考えてみたい。まず、認証制度のビジネスモデルの 問題点を認識してほしい。認証は能力証明なので、適合していることを組織は証明しないといけない。適合の実証によって、はじめて適合と言える。であれば、 適合のモデルを持っていないと、審査はできないはずだ。
QMS能力実証型審査というのは、組織の「あるべきQMS能力像」について、認証機関と組織双方が共通認識をもち、その能力を有していることを実証する審査である。実際、こういう審査をやっておられるリーダークラスの審査員がおられるので、やってできないことではない。
審査の焦点は、それを見ればQMSが分かるという、「注目すべきQMS要素」をみることだ。このためにはきちんとした審査計画を立て、注目すべきQMS要素をすべて審査すること。また、審査側と組織側とで認識を共有する審査でなければならない。

【WG1発表】「QMS能力実証型審査の基本的考え方と計画」
ペリージョンソンレジストラー株式会社・取締役副社長/米岡優子氏

「QMS能力実証型審査」とは、組織が有すべきQMS能力像について、認証機関と組織が共通の認識を持ち、その能力を有していることを実証する審査であ り、製品の品質保証に必須のISO 9001要求事項の意図に適合する審査のことである。また、「有すべきQMS能力像」とは、規格の「意図」への適合であり、「形式」への適合ではない。ま た、3年間の認証期間を保証できるQMS能力を有していなければならない。では、今の審査とどう違うのか。本質的には同じだが、これを言葉によって可視化 していくことに大きな意義がある。あくまでISO 9001の中でのQMS能力ではあるが、形式的・逐条的な適合ではないという意味において、切り口は違う。
有すべきQMS能力像の描き方については、次の5段階のステップによる。製品を定義する→顧客を定義する→製品要求事項を明確にする→「必要なQMS要素」と「注目すべきQMS要素」の明確化→「注目すべきQMS要素」を中心に、有効に機能しているQMS能力像を描く。
ここで、この5段階ステップの具体的な取り組みとして、タクシー会社とプリンター製造会社の事例を紹介。注目すべきQMS要素の明確化と関連する規格要求事項として、7.2.2、7.3.6、6.3、7.5.1、8.2.4、7.5.1がある。
一方、審査側の取り組みとしては、組織の実情をよく理解した上で、審査プログラムを作成し、審査計画を立てる。審査においては、第一段階の審査に入る前 に、認証機関は、組織の注目すべきQMS要素と能力像を描いておかなければならない。そして第一段階を終えてから、注目すべきQMS要素と第二段階審査計 画について組織と合意を得なければならない。このQMS能力実証型審査を実践するためには、認証機関には、審査員の力量管理や審査計画立案プロセスをどう するのか等の課題もある。

【WG2発表】「QMS能力実証型審査の方法と実施」
株式会社小林経営研究所・代表取締役/小林久貴氏

QMS能力実証型審査の準備は、「組織の注目すべきQMS要素の特定」→「QMS要素を観点シートによって、評価項目と評価基準を特定」の流れで行う。「観点シート」とは、適切な評価項目と評価基準を導き出すためのキーワードを設定し、一覧表にしたものである。
例えば電子部品製造業における「あるべきQMS能力」の1つに「設備メンテナンス能力」があり、それを検証することを目的に、「注目すべきQMS要素」と して「設備管理プロセス」を取り上げる。このプロセスの観点シートには、「設備」「変更」「作業」など数多くの「観点」があるが、そのうちの1つである 「作業」を例にとると、作業の運用側面における「評価項目」は「作業効率が良いこと」であり、「評価基準」は「省スペースで効率の良い作業ができる配慮が されていること」「故障時のメンテナンス性が良いこと」等がある。審査チームは、各評価項目による評価基準により、組織の注目すべきQMS要素の達成能力 を確認することになる。
(審査のシナリオ)
1.事前に審査チームからQMS能力、注目すべきQMS要素とその評価項目を組織側に提示する。
2.その提示に対して、組織側から説明を行う。
3.審査で注目すべきQMS要素の達成能力を確認する。
4.評価基準とのギャップがあれば、組織の見解を確認する。
5.組織側が実証シナリオを考え、現地審査で自らのQMS能力を実証する。
6.これにより、従前の不適合がなければ適合という考えのもとに繰り広げられた組織側の消極的な情報提供、審査側の不適合のあら探し、という不適切な審査活動が是正される。

【WG3発表】「組織の視点でのQMS能力実証型審査の価値の追究」
日本検査キューエイ株式会社・審査第2部長/勝俣宏行氏

組織がQMS能力実証型審査で得られるメリットには、「組織自身が重要な品質特性や品質保証能力を認識できる」「共通の認識に基づく審査を受けている安心感と審査への信頼感を持てる」「改善モデルへの主体性を持てる」といった点がある。
このQMS能力実証型審査を受ける前に組織がしなければならないことは、「重要な品質特性を理解する」「注目すべきQMS要素を特定する」「実証対象を確認する」の3点である(これについては、醤油製造メーカーの事例を使って詳細な説明があった)。
実際のQMS能力実証型審査で行う組織側の実証方法については、管理責任者は「製造モデル、重要な品質特性、プロセス体系/組織構造、QMS要素と目標及 び達成方法」について、プロセスオーナー(部門長や会議体等)は「工程内容、QMS要素の目標、手順・達成手段、運用証拠、結果/パフォーマンス/傾向」 について、現場の担当者は「現場・現物の実施状況や運用証拠」について、審査員に説明しなければならない(これについても同事例を使って詳細な説明があっ た)。
また、組織が実証する方法として、品質マニュアルについても、組織の概要、組織構造とその運営、製造モデルの概要、品質マネジメントの特徴、プロセス図、品質保証体系図などの記述を加えることが提案された。

【パネルディスカッション】
飯塚氏がコーディネーターを務め、米岡氏、小林氏、勝俣氏、平林良人氏(テクノファ)、森下裕一氏(TDK)、五十嵐誠氏(ヤマサ醤油)、久保真氏 (JAB)ら7人のパネリストの参加によるパネルディスカッションが行われた。内容は例年通り、JABがホームページで今回の公開討論会のプレゼン資料を 事前に掲載し、質問を公募、集まった質問について1つずつ担当パネリストが回答するというもの。【質疑応答割愛】

なお、今回の公開討論会の詳細報告は、パネルディスカッションの質疑応答も含めて、6月中にJABのホームページで公開される予定。最後に、これは筆者(中尾)から。
今回の討論会の内容は、あくまで「JAB/ISO 9001公開討論会」という会議体からの提言である。アクションプランではない。ここで議論されたことがただちに、JAB、JACB、JATA、 JRCA、JAB認定認証機関といった国内関係機関に通達され(提案はされるかもしれない)、実施を促されたり、実施されたりするものではない。念のため。

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コメント

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  • コメント (7)

  1. だいぶ前招待券のお流れをいただいて膨張したことがありました。もう4年かそれ以上前のことです。そのときは満員でした。
    今はどうなんでしょうか?
    満員だったのでしょうか?7割程度だったのでしょうか?
    気になります。

    • 中尾優作
    • 2011年 6月 01日

    震災の影響で、日時及び会場が変更になりましたが、ほぼ満員でした。

    • ISOのハジッこにいるヒト
    • 2011年 6月 01日

    震災の影響で、今回お誘いを受けて、初めて参加させていただきました。
    ハジっこにいる「若葉マーク」には、自身の考えている事とリンクする部分が大変〝気付き″になりました。
    手にも届かない大先輩より「JABは3回目にして、今回初めて言った」という内容も追加でお伺いしました。
    皆様が、アンケートに何を書かれていたのかが、大変気になります。

    • 中尾優作
    • 2011年 6月 01日

    <「JABは3回目にして、今回初めて言った」という内容も追加でお伺いしました。
    どういう内容なのか、気になりますねぇ(笑)

    • ISOのハジッこにいるヒト
    • 2011年 6月 03日

    中尾さん
    今度お茶菓子持って、遊びに行きます!
    逆に物流業界話に華が咲いてしまいそうな気配が・・・(笑)

    • 明日は走る仔豚
    • 2011年 6月 06日

    こうやって宣言してしまうと、引っ込みがつかなくなるという効果があるのですが。
    さて、1カ月遅れの6月号がやっと回覧されてきて、二者監査のお話や内部監査の実戦のお話を読んでみて、今回の討論会で腑に落ちかねているところが見えて来ました。
    飯塚先生を始めとして、進められようとしているところは素晴らしいことなのだと思いますし、認証審査の目指すところであるのだとは思います。世界で日本の組織が勝っていくためには、これまでの審査の考え方では不足しているのかも知れません。
    ただ、「いんたーなしょなる・すたんだーど」であるISOの立場で考えて、日本の認証機関<だけ>がそこまで踏み込むことが正しいのかなぁ。。。と思います。富士山マークがあるところは、ここまでやる。王冠マークなら、ローマ字なら、お隣は・・・と審査の考え方が違っていて良いのでしょうか?
    その結果、富士山マークの付いていない認証機関が中途半端な審査をして市場を荒らしているというのは、ガラパゴス状態にしておきながら、インターナショナルなレベルを否定されているようなことにはならないでしょうか?
    むしろ、二者監査代行やJIS Q 900X認証という形で、堂々とガラパゴスな認証をするのが解決の方向ではないでしょうか?
    もうちょっと早くこの考えがまとまっていたら、事前アンケートに書いていたのに、この辺りが仔豚の未熟な所なんでしょう。

    • 中尾優作
    • 2011年 6月 06日

    <ガラパゴス状態にしておきながら、インターナショナルなレベルを否定されているようなことにはならないでしょうか?
    うーん、鋭い!

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