日本規格協会

日本の標準化政策はすごいぞ

夕食後、浴室からシャンプーとリンスを持ち出し、テーブルの上に置いて、「さあ、目をつむったまま触るだけで、どっちがシャンプーかリンスか当ててみなさい」と子どもたちの前でクイズをやりました。10月16日の講演で得た知識を、早速子ども相手に使ってみたのです。

inoue3.jpg10月15日・16日に東京で日本規格協会主催の「標準化と品質管理全国大会2009」が開催されたのですが、私はその中の「我が国の工業標準化政策について」というテーマの講演を聞きに行きました。講師は経済産業省産業技術環境局基準認証政策課工業標準調査室長の井上悟志さん(写真)です。冒頭のシャンプーとリンスの話は、高齢者・障碍者配慮を促進する標準化の例として井上さんが挙げた「容器触覚記号」の事例です。シャンプーには容器の側面にギザギザが付いていて、リンスにはそれがありません。あるいは飲料用紙パックについても、牛乳パックには上部に切り欠きが付いていて、ジュースなどには付いていません。「そんなことも知らなかったのか」と言われそうですが、知らなかったので驚きました。帰宅後、本当かどうかを確認したあと、子どもの前でその知識をひけらかしたわけです。ちなみにこの「高齢者・障碍者配慮を促進する標準化」については、日中韓で連携してJISを基礎とした国際標準化を提案しようとしているそうです。なかなか野心的ですね。

本音を言うと、「標準化の講演なんてたぶん退屈だろうけど、一応職業柄、基本的なことは知っておかなくては」という気持ちで受講したのですが、聞いてみるとおもしろいのなんの(この場合のおもしろさというのは自分の知識の低さに比例しているのかもしれませんが)。例えば、次のような話に驚きました。

目的付記型JISマーク
福祉用具分野のJISマークであることが一目で分かるように、「目的付記型JISマーク」の導入が始まっているそうです。これは、お年寄りの方の手を子どもが握っているというデザインのマークで、現在、手動車いす、電動車いす、在宅用電動介護用ベッドの3品目に表示が付き始めています。このJISマーク認証には、日本品質保証機構、電気安全標準研究所、日本文化用品安全試験所の3機関が参加しています。

リコール社告
リコール社告の記載事項はJISで決められています。今回の講演で聴講者のある方が「新聞に掲載されるリコール社告は文字が小さくで読みづらい。社告に掲載する文字のポイント数もJISで決まっているのか?」と質問され、それに対して講師の井上さんは「ポイント数がJISで決まっているかどうかはよく覚えていないが、新聞の社告というのは広告なのでお金がかかる。文字のポイント数が大きくなると、その分掲載スペースも大きくなって、お金もより多くかかるので、あまりそのへんは決めにくいのではないか」という、なかなかおもしろい返答をされました。

環境負荷低減に向けた標準化が急ピッチ
家庭用冷蔵庫については消費電力量を測定するための標準化はすでに行われていますが、業務用になると非常に遅れていて、業務用冷蔵庫等の消費電力量を測定するためのJISが制定されたのは、なんと平成21年9月24日。まだ制定されて1カ月も経ってないじゃん!
続いて、太陽光を反射することで建物や道路表面などの温度上昇を抑える遮熱塗料の反射率を評価する方法がこれまで統一されていなくて、今年9月20日に評価方法がJIS化されました。これも1カ月経ってないよね。
さらにハイブリッド電気自動車用として注目される電気二重層キャパシタ(蓄電池)も、各社の製品を比較評価する統一基準がなかったので、今年4月20日にJISで性能評価試験方法を決めたそうです。これも、ついこの間のこと。

スマートグリッドに出遅れるな!
こういった環境負荷低減に向けた標準化の極めつけは、なんといっても米国の「スマートグリッド」でしょ。米国では標準化機関のNISTがものすごいスピードでスマートグリッドの標準化作業を進めていて、第一フェーズとして今年9月までにロードマップと標準第一版を策定し(もう9月は過ぎているから、このフェーズは終わったか、もしくは終わろうとしているはず)、第二フェーズで2009年末までに中長期開発のための官民のパートナーシップを構築し、2010 年1月からは試験・認証の仕組みを構築して運用開始するというものです。もう来年早々運用開始って、すごすぎです。
一方、日本では経済産業省主導で今年8月31日(ついこの間ですよね)に「次世代エネルギーシステムに係る国際標準化に関する研究会」で検討を開始しました。論点は、日本国内でスマートグリッドをどうするかということではなくて、グローバル市場でスマートグリッドに関連する技術開発、製品サービス提供で出遅れないように、市場動向や産業活動の分析を行うことだそうです。その分析結果をもとに国際事業戦略としての国際標準化ロードマップを年内に作成するとしています。井上さんは明言していませんが、要は、狙いは海外市場。そこで儲けるため、総研会社のように分析・調査をやる、ということではないでしょうか。

日本の国際標準化戦略
平成18年(2006年)11月に経済産業大臣及び産業界トップで構成される国際標準化官民戦略会議で「国際標準化戦略目標」が策定されました。その目標とは「欧米並の幹事国引受数の実現」と「国際標準の提案件数の倍増」です。幹事国引受数については、2005年に60件だったのが2008年には74件に、国際標準の提案件数については、2001から2003年の間に63件だったのが2006から2008年の間に102件と着実に増加しているそうです(かなり恣意的な年数のとり方をしているようですが、まあいいでしょう)。

takeda3.jpgまた、ISO/IECにおけるプレゼンスも向上しているとのこと。例えば、日本規格協会専務理事・武田貞生さん(写真)が今年9月に開催されたISO総会でISO副会長に信任されました。任期は2010年から2011年です。この方は、通商産業省時代に工業技術院標準部標準認証課長をつとめた方で、アイソス1999年11月号に取材記事が掲載されています。さらに2010年から、日本はISOのTMB(技術管理評議会)の常任国になることが決定しました! TMBとは、ISOのすべての国際標準化活動をとりまとめる元締めであり、団体における幹部会、会社における役員会、生徒会や労働組合における執行部みたいなもんですから、その影響力にもっと期待していいと思うのですが、みなさん、あまり騒がないですねえ。本当はたいしたことないのかなあ?

とにかく、おもしろかった。来年の「標準化と品質管理全国大会」でも同じテーマの講演があれば、聞きに行こうと思っています。

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