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ISO/SR(ISO 26000)国内委員会を傍聴

sr.jpg10月16日、東京で第25回ISO/SR国内委員会が開催されたので傍聴に行った。同会はISOで現在DIS(国際規格原案)まで作業が進んでいるSR(Social Responsibility:社会的責任)の国際規格について審議を行う委員会で、今回の主要課題はCD(委員会原案)からDISへの変更点の報告と意見交換。この委員会後のスケジュールは、委員会、各ステークホルダー、委員会外(一般)からのコメントを回収し、それを元に11月末から幹事会でDISコメントの日本案を作成開始、2010年2月14日にISOへコメントを提出すると共に、DIS投票(DISに賛成するか否かを表明)を行う。5月17日から始まるコペンハーゲン総会では各国から寄せられたコメントが審議され、うまく事が運べばそのままFDIS(最終国際規格原案)に進むことになり、同年9月にはIS(国際規格)発行となる。国内委員会事務局によると、DIS作成に際して、日本側からのコメントの7割が採用され、質の高い日本のコメントが国際会議で注目されているとのことだ。
CDからDISへの変更点は多々あるが、ISOマネジメントシステム関係者が関心を持ちそうな分野を下記に紹介しておく。なお、DISの原文と参考訳はいずれも日本規格協会のウェブサイトからダウンロードできる(PDF)。
DISの原文はこちら。DISの参考訳はこちら

ISO 26000認証なんて許さない!

「1. 適用範囲」の最後から3つ目のパラグラフでは、「ISO 26000認証なんて、絶対許さないもんね」という気迫が伝わってくる文章が追加された。日本でも一時、CSR認証をやろうとしてスペックまで作っていた審査機関があったけど、IS発行後に実際にISO 26000のスペックで認証やっちゃうと、ISOは怒ってくるだろうなあ、この文面を読むと。

(CD)
この国際規格はマネジメントシステム規格ではない。この国際規格は,認証目的,又は規制若しくは契約のために使用することを意図したものではなく,それらに適切なものでもない。

(DIS)
(上記のCD文に追加して)このISO 26000による認証を提案したり, 認証するよう要求したりすることはこの国際規格の意図及び目的を不当に表示することになる。

(DISの原文)
This International Standard is not a management system standard. It is not intended or appropriate for certification purposes or regulatory or contractual use. Any offer to certify, or claims to be certified, to ISO 26000 would be a misrepresentation of the intent and purpose of the International Standard.

「6.5 環境」に関する質疑応答で気づいたこと

これは国内委員会の会合なので、日本側のコメントがいかにDIS改訂に貢献したかを強調して報告するのは仕方がないかもしれないし、そうしないと委員のモチベーションも上がらないかもしれないが、「ちょっと強調しすぎではないか」という意図の発言が報告者とは別の委員から出された。例えば、以下のような項目。

6.5.5.2.1 Climate change mitigation
気候変動緩和

(CD)
⎯ reduce its dependence on fossil fuels and make use of low-emission technologies and renewable energy with the aim of reducing the life cycle GHG emissions, bearing in mind the possible environmental and social consequences of increased use of such sources;
― 化石燃料への依存を低減し,ライフサイクルにおけるGHG排出の削減につながる低排出技術及び再生可能エネルギーを利用する。その際,そのような技術やエネルギーの利用の拡大により, 環境及び社会的な潜在的影響を考慮する。

(DIS)
⎯ reduce the use of fossil fuels and the impacts of their use, for example by making use of low-emission technologies and renewable energy, with the aim of reducing life cycle GHG emissions, bearing in mind the possible environmental and social consequences of increased use of such resources;
- 例えば,ライフサイクルにおけるGHG排出の削減につながる低排出技術及び再生可能エネルギーを利用する ことにより,化石燃料の使用,及びその使用に伴う影響を軽減する。その際,そのような資源の利用の拡大による環境上及び社会的な潜在的影響に留意する。

この部分について、事務局側から「気候変動問題を解決するために、あらゆる手段を総動員すべきであるから、日本側のコメントが採用され、このような修正(下線部分の位置変更)によって、化石燃料への依存からの脱却をより強調することができた」と報告されたが、これについて別の委員から「化石燃焼への依存からの脱却を強調したと言うが、このDISの文章からはそこまで読み取れない」という指摘があった。私もちょっと大げさな気がするけど、みなさんはどう?

同じ項番で「カーボンニュートラル」に関する記述がある。日本側はこれについて「すべての組織がカーボンニュートラルを目指すことは非現実的。あらゆる組織は、その活動に際して二酸化炭素を排出しているが、排出量と同量の二酸化炭素はを吸収する術を持ち合わせていない」という考え方を示していた。

(DIS)
⎯ consider aiming for carbon neutrality by implementing measures to offset remaining GHG emissions, for example through supporting reliable emissions reduction programmes that operate in a transparent way, carbon capture and storage or carbon sequestration.
- 例えば,透明性をもって実施される信頼性の高い排出削減プログラム,炭素回収・貯留又は炭素固定化を支持することにより,残留GHG排出を相殺するための措置を実施し,カーボンニュートラルを目指すことを検討する。

この日、事務局から「日本側のコメントが採用されて、カーボンニュートラルに関する記述が削除された」と報告されたのだが、先ほど「化石燃焼」について意見を述べた同じ委員から、「その文章は削除されたのではなくて、6.5.5.2.1の一番最後に移動しています」との指摘があった。実際、事務局が「削除された」と報告した同じ文章がそのまま一番最後に移動している。私は別に事務局側の揚げ足を取るつもりはないし、誰でも間違いはあるのだからそれは正せばそれでいいのだけれども、ひょっとしてこの委員が指摘しなければ、そのまま「ああ、削除されたんだ」で議事が進行していたかもしれないと思うのだ。なので、事務局側も見落としたりすることもあるのだから、エキスパートの委員(国内委員会のメンバーにはまったく規格の門外漢の方もたくさんおられるので、表現や用語の問題などはエキスパートに期待したい)はしっかり見ておかなくてはならないし、委員会外の方々も「これはおかしい」と気づいたのなら、どんどんコメントを出したほうがいいと思う。一般コメントの受け付け期限は10月30日までとなっている。
DISへの一般コメント受付先のURLはこちら

大幅に変わっているところ

大幅変更があるところは、「6.3 人権」「6.8 コミュニティ参画及び開発」「7.6.2 社会的責任に関する報告及び主張の信頼性向上」など。附属書Aは、前文が大幅に修正されている。

ISO 26000無償化の議論がおもしろい

委員会の主要議題がほぼ終了した頃、冨田秀美委員(ソニー)からおもしろい報告があった。いま、ISO/SRのWG(ワーキンググループ)で「ISO 26000の無償化」の議論が盛り上がっているらしい。

「WG の議長自身もそれに乗り気で、ISOの理事会に具申したところ、却下された。数多くあるISO規格の中で、ISO 26000だけを特別に無償化するわけにはいかないからだ。だが、WGのメンバーはそれでは腹の虫が治まらない。我々の力だけでダメなら、ステークホルダーに協力を依頼しようということになった。今後ステークホルダーから『ISO 26000を無償化しろ』という要求が出てくるかも
しれない」(冨田委員)とのこと。

これを聞いて、「ISO 26000を作るにはかなり多くのお金がかかっている。無償化にしてしまうと、それをどう補填するのか?」とISO側の採算面を心配する国内委員もいた。冨田委員は「それについはWGでも議論があったのだが」と前置きしつつ、「だが、すでにCDもDISも無償で公開されている。続いてFDISも無償で公開されるとどうなるだろう? たとえISが発行されたとしても、それをわざわざ買うだろうか? ISを買わずに、FDISでみんな対応し始めると、逆にまずいのではないか」と述べた。うーん、確かに。この議論の成り行き、おもしろそう。

今回の国内委員会、私自身は日本規格協会のWebで、無料で誰でも傍聴できる旨の告示があったので、応募して参加した。傍聴人は30人ほどで、意外と少なかったけど、これいいですよ。最新情報聞けるし、資料いっぱいくれるし。あなたも次回はぜひ。

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