ISO 50001:2011

ISO 50001とISO 14001との相違点(1)

ISO 50001とISO 14001との主要相違点についてまとめてみた。編集内容は、ISO 50001(エネルギーマネジメントシステム)の規格審議団体であるISO/PC242の委員をつとめる寺田博さんが、月刊誌アイソス6月号の特集記事「ISO 50001 エネルギーマネジメントシステム国際規格案(DIS)発行」に書かれたことと、6月15日のアイソス主催セミナーでの規格講習会での講演内容とをベースにしている。

以下、「ISO 50001」と表記されているものは、すべてDIS(国際規格案)段階での規格内容であり、今後変更される可能性がある。

ISO/DIS 50001とISO 14001との相違点

A. 適用範囲
・規定される要求事項
【ISO 50001】
エネルギーパフォーマンス、エネルギー効率及びエネルギーの保全管理を継続的に改善するエネルギーマネジメントシステムを確立し、実施し、維持し及び改善するための要求事項。
【ISO 14001】
法的要求事項、著しい環境側面を考慮に入れた方針・目的を策定・実施できるような環境マネジメントシステムの要求事項。

・適用の対象
【ISO 50001】
この規格は組織に監視され、影響されるエネルギー使用に関するすべての因子に適用。
【ISO 14001】
この規格は組織が管理できる、また組織が影響を及ぼすことができるものとして特定する環境側面に適用。

B. 用語と定義
ISO 50001ではパフォーマンスが強調されている点がiSO 14001と大きく異なる。「エネルギーパフォーマンス(energy performance)」という言葉が規格本文中に27カ所も出てくる。

C. エネルギーマネジメントシステム要求事項

4.2.1 一般(経営層の責任)
ISO 50001には「マネジメントチーム」という概念が出てくる。一方、ISO 14001には「マネジメントチーム」という概念はない。
最高経営層はエネルギーマネジメントシステム並びにその有効性の継続的改善に対するコミットメント及び支援を以下の事によって示す。(中略)

b) 管理責任者を任命、マネジメントチームの設立を承認
*「マネジメントチーム」という用語は、ISO 50001の「4.4.1 役割、責任及び権限」の中のc)項に「責任者のマネジメント活動を支援する要員を特定」という文章が出てくるが、この「要員」によるチームがマネジメントチームのことである。

4.3 エネルギー方針
ISO 50001でエネルギー方針として挙げているa)〜h)項目の中のC)項とf)項が、ISO 14001にはない。
C)目的・目標達成に要する資源、情報の入手を確実にするコミットメントを含む
f) エネルギー効率の良い製品、サービスの購買を支援する
また、ISO 14001には「g) 一般の人々が入手可能である」があるが、ISO 50001にはない。

4.4 エネルギー計画
エネルギー計画については、ISO 14001と異なる部分が多いが、ISO 50001の附属書A1に下記のような図が掲載されている。エネルギー計画の概念を非常に分かりやすく図式化しているのでぜひ参考にしていただきたい。
6021-20100713energyplan.jpg

上図の小さい箱が3つ横に並んでいる部分(使用・データの分析→著しいエネルギー使用→改善の機会特定)が、「4.4.3 エネルギーレビュー」に相当する。ISO 50001においては、このエネルギーレビューを組織がいかにこなすかが最も大事な点である。以下は4.4.3の全訳。

4.4.3 エネルギーレビュー

組織はエネルギーレビューを作成し、記録し、維持しなければならない。エネルギーレビュー作成の方法及び基準は文書化しなければならない。エネルギーレビュー作成に当たって組織は下記を満たさなければならない。

a) 実測値他のデータに基づくエネルギー使用の分析
・エネルギー源の現状特定
・過去・現在のエネルギー使用及び使用量
・将来のエネルギー使用及び使用量の予測
b) エネルギー使用の分析に基づく著しいエネルギー使用及び使用量のある領域の特定
・施設、設備、プロセス、システム、エネルギー使用及び使用量に著しく影響を与える組織で働く、または組織のために働く要員の特定
・著しいエネルギー使用及び使用量に影響を与えるその他の関連変数の特定
・特定された著しいエネルギー使用に関連する施設、設備、システム及びプロセスの現状のパフォーマンスの決定
C) 再生エネルギー、代替エネルギー源の利用などを含めてパフォーマンス改善の機会を特定し、優先度を決定して記録する

エネルギーレビューは定められた期間及び施設、設備、システム及びプロセスの主な変更に応じて更新しなければならない。
* b)項に出てくる「関連変数」とは、「関連するすべての因子」と考えればよい。ただ、どこまでの範囲を入れるかについては今後の議論になるところ。
ISO 14001 では「4.3.1 環境側面」に相当する部分。「4.4.3 エネルギーレビュー」のa)項では、過去・現在・将来の使用及び使用量の分析が求められてい る。しかし、ISO 14001では、現状及び将来(「計画されたもしくは新規」)の環境側面は特定しなければならないが、過去までは求めていない。
また、c)項、つまり「パフォーマンス改善の機会の特定」は、ISO 14001では要求されていない。

(明日に続く)

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