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ISO 50001シンポ開催 JISは10月発行見込み

本日、(財)エネルギー総合工学研究所(IAE)主催による「ISO 50001(エネルギーマネジメントシステム国際規格)シンポジウム」が東京・千代田放送会館で150名の参加のもとに開催された。
冒頭、山田英司・IAE専務理事が「省エネルギーの一層の推進が緊急の課題となり、また、東日本大震災を契機としてより一層の節電が社会的な要請となっている中、6月15日にISO 50001が発行された。本規格は、省エネルギー推進の有効な世界共通のツールとして、世界各地域で活用が期待されている。今回のシンポジウムは、ISO 50001を利用してエネルギー利用の効率化をはかる有用なヒントを提供するものである」と開会の挨拶を述べた。

続いて来賓挨拶に茂木正・経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネル ギー部省エネルギー対策課長が「今年7月に省エネルギー対策課長に就任した。東日本大震災で、日本はもう一度省エネを見直す時期に来ており、そんな中でま さに省エネの有効なツールとしてISO 50001が発行された。この規格への取り組みを応援したい。具体的な制度等のルールづくりはこれからだが、ISO 50001を活用する中で、これからの日本の新しい省エネ時代を作っていきたい」と述べた。

このあと、各スピーカーによる講演に入った。各スピーカーの講演概要は下記の通りである。

【講演テーマ「ISO 50001の概要、標準化の背景と周辺動向」】
講師:西尾匡弘(独立行政法人産業技術総合研究所エネルギー社会システムグループ主任研究員)

米国で認証取得支援政策
ISO 50000シリーズの開発へ

361-20110728nishio.jpgISO 50001の規格概要、開発経緯、日本の規格対応方針について解説。特に、日本が国際会議において、ISO 9001/14001といった他のマネジメントシステム(MS)規格との整合性をとること、省エネ法の経験を生かすこと、中小企業にも適用できること、 ベースラインについては原単位管理も認めるようにすることなどを主張し、規格に盛り込むことに成功してきたことを強調。
海外動向については、米国ではSave Energy Now LEADER programが 動いており、10年で25%以上の原単位改善を誓言した企業は、ISO 50001の認証を受けるための技術的支援を受けることができること、欧州ではISO 50001発行後は、欧州規格であるEN 16001からISO 50001へ移行する予定であることを報告。最後にISOでは、ISO 50001の審議委員会であるPC242が、PC(プロジェクト委員会:単一規格のみ扱う)からTC(技術委員会:ISO 9000シリーズやISO 14000シリーズのようにシリーズ規格を扱える)に格上げされる。このことにより、ISO 50001をサポートする規格の開発など、ISO 50000シリーズが開発される可能性が出てきたとしている。

【講演テーマ「マネジメントシステム規格としての ISO 50001〜ISO 14001(環境マネジメント規格)との対比を中心に〜」】
講師:寺田博(IMSコンサルティング株式会社取締役)

規格の目的は「エネルギー使用の効率向上」
「パフォーマンス改善」まで要求されている

360-20110728terada.jpgISO 50001規格の目的と対象を明示。規格目的は、ISO 9001は「顧客満足を満たす製品の提供」、ISO 14001は「環境汚染の予防の実現」、ISO 50001は「エネルギー使用の効率向上」とし、各MS規格共通の目的は「アウトプットを通して組織が社会に貢献できること」とした。一方、適用の対象に ついては、ISO 50001は「組織のエネルギー使用・使用量及び組織の監視、影響の下にあるエネルギーパフォーマンスに作用を及ぼす全ての変動因子に適用される」とし て、ISO 14001は「組織が管理できる、又組織が影響を及ぼすことができるものとして特定する環境側面に適用される」とした。
ISO 50001の要求事項の最大の特徴は「エネルギーパフォーマンスの重視」にある。これは「エネルギーパフォーマンスの把握」と「エネルギーパフォーマンス の改善」とに分かれる。ISO 14001で言えば、前者が「4.3.1 環境側面」であり、後者が「4.4.6 運用管理」に相当し、ISO 50001で言えば、前者が「4.4.3 エネルギーレビュー」「4.4.4 エネルギーベースライン」「4.4.5 エネルギーパフォーマンス指標」であり、後者が「4.5.5 運用管理」「4.5.6 計画設計」「4.5.7 エネルギーサービス、製品、設備及びエネルギーの調達」に相当する。
また、ISO 14001と比較して考慮すべき点は、ISO 14001では明確に謳っていない「4.2.1 トップのコミットメント」という要求事項があること、ISO 14001よりもデータ指向が強く、エネルギーデータから著しい使用領域を特定し、さらに「改善の機会」まで要求されていること、ISO 50001では「エネルギーパフォーマンス改善」まで要求されていることに触れ、ISO 14001認証組織は、この「エネルギー」を「環境」に変えて、「環境パフォーマンス改善」にぜひ取り組んで欲しいと述べた。

【講演テーマ「省エネルギー法とISO 50001〜エネルギー管理への活用のポイント〜」】
講師:石原明(財団法人省エネルギーセンター国際協力本部長)

省エネ法に対する整合性が確保されている
管理責任者は1人に限定していない

6220-20110728ishihara.jpg日本におけるエネルギー管理の経験はISO 50001の規格開発に大きな貢献を果たしており、その結果、ISO 50001は省エネ法に対する整合性が確保されている。
ISO 50001と省エネ法とを比較し、下記の点をチェックしておく必要がある。

・ISO 50001では管理責任者を複数形で表示し1人に限定していないように、省エネ法でも、エネルギー管理統括者、エネルギー管理企画推進者等、複数の選任を規定している。
・ISO 50001では、エネルギーパフォーマンス指標については組織で適切なものを使用するとしており、省エネ法で規定している指標は、エネルギー消費原単位である。
・ISO 50001で要求されているエネルギーベースラインは、省エネ法であれば、前年度のエネルギー消費原単位に相当する。
・省エネ法における提出書類(中長期計画書)も、ISO 50001での「エネルギーマネジメント行動計画」の一部として使用することができる。
・ISO 50001では、重要項目について監視・測定・分析を定期的に行うことになっているが、省エネ法でも、定期報告において、エネルギー消費原単位の実績値及びその変化について記載することになっている。
・ISO 50001では法令遵守が求められているが、省エネ法は法的要求事項に相当する。等々

【講演テーマ「JIS制定等の国内動向について」】
講師:岡本 裕(財団法人日本規格協会規格開発部規格第三課課長)

JIS Q 50001制定は10月頃の見込み
省エネルギーセンターが審査員評価登録機関に

6219-20110728okamoto.jpg現在、ISO 50001の翻訳版であるJIS Q 50001作成作業は、JIS原案作成を終え、JISC(日本工業標準調査会)での審議段階に入っており、8月末には答申(JISC会長→主務大臣)が行われ、おそらく10月頃には官報公示になる予定。
今後のJIS Q 50001の普及啓蒙策としては、ISO 50001の国内審議団体であるIAE内にISOセンターを設置して、説明会や広報活動を展開するほか、国内委員会が中心となって、同規格の詳細な解説書 や入門書を10月から11月にかけて発行する予定である。
JIS Q 50001による認証・認定スキームについては、これからスタートするところである。7月25日から日本適合性認定協会(JAB)は認証機関からの認定申請の受付を開始した。審査員評価登録機関には省エネルギーセンターが対応する予定。
11月には認定機関の国際フォーラムであるIAFの総会が開かれるので、ISO 50001についての国際的な制度の枠組みはおそらくこの総会で正式に決定されるものと思われる。
5月13日付で経済産業省が「夏期の電力需要対策」(別紙5)の中で、「今夏に策定される予定のエネルギー管理システム規格について、その認証取得を政府調達の際に考慮すること等を通じて、活用を促す」と発表していたが、この件については現在省庁間で協議中の段階で、現時点ではまだ詳細な発表はできないとのこと。

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コメント

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  • コメント (2)

    • イソハドーグ
    • 2011年 7月 30日

    (中尾さんが、この方々のスピーチを忠実に再現されていることを前提にコメントします。いや忠実に再現されていることでしょう)
    微妙な言い回しに、コンセプトの違いがあります。
    お役人さまや財団法人職員さまは
    『ISO50001は、省エネのツール』とおっしゃいます。
    寺田さんは
    『ISO50001の目的は、エネルギー使用の効率向上』とおっしゃいます。
    前者は、規格の使い道の一事例にだけスポットをあててます。
    後者は、規格そのものの本質にせまっています。
    さすが、規格作成にたずさわっている人は違うなぁ。
    でも、この違いに気をつけないと規格の使い方を誤ったり、
    これで儲けようとしている人たちの餌食にされちゃうよ。
    以前にもコメントしましたが、
    この規格は規格を使う側の主体性を尊重しています。
    狭義の省エネ活動のみにこだわらず、主体的に前向きにしたいものですね。

    • 中尾優作
    • 2011年 7月 30日

    鋭いなあ。

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