ISO 50001:2011

ISO 50001シンポ速報

本日、東京の経団連ホールで「ISO 50001(エネルギーマネジメントシステム国際規格)の策定に関するシンポジウム」がエネルギー総合工学研究所主催で開催され、約300名が参加した。シンポの主な内容は、現在CD(委員会原案)段階まで作成作業が進んでいるISO 50001の概要と、ISO 9001及びISO 14001との関係、日本の省エネルギー法との関係の3点。講師によるこれらの解説のあと関係者によるパネルディスカッションが行われた。以下、各講師のプレゼン内容を報告する。

sakamoto.jpg【来賓挨拶骨子】経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 省エネルギー対策課長/坂本敏幸氏

省 エネルギー法により30年にもわたってエネルギーマネジメントをやってきた国というのは、日本以外、世界には見当たらない。指定事業所は1万4千件もあ り、エネルギー管理者は4万7千人もいる。国際規格の作成にあたっても日本は貢献しており、実際、これまでISO 50001に関する国際会議が2度開かれ、例えば、工場1件1件の取り組みではなく企業ベースの取り組みにするとか、役員クラスの管理責任者による統括と か、ベンチマークへの取り組みとか、を日本から提案し、それがCDに幅広く取り込まれている。現在、この規格は非常に重要な局面に来ている。9月26日ま でに日本からのコメントをISOに提出し、年内にはDIS(国際規格原案)が発行される。2011年までには正式な国際規格を発行をするべく、関係者にお いて精力的な取り組みが行われている。今回のシンポでは、できるだけ幅広い方々からご意見をいただきたいと思う。

nishio_san.jpg【講演1:ISO 50001の概要、標準化の背景と進捗状況】産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門 エネルギー社会システムグループ/西尾匡弘氏
西尾氏は、ISO 50001策定の経緯と、規格策定の現在までの進捗状況と今後の予定、ISO/CD 50001の規格概要について解説した。ISO 50001は、エネルギーマネジメントシステムの国際規格である。2010年末から2011年までの間に発行することを目指し、ISO/PC242で策定 中で、議長国は米国とブラジルである。ISO 50001は、組織のエネルギーパフォーマンス及びマネジメントシステムを継続的に改善する規格である。日本としては、日本の実態や省エネ技術・経験を規 格に反映させる。6月20日に配信されたCDに対する投票・コメントが9月26日に締め切られ、11月中旬にロンドンで開催される第三回国際会議でそれら のコメントについて審議される。

terada_san.jpg【講演2:マネジメントシステム規格としてのISO 50001、ISO 14001との対比を中心に】IMSコンサルティング取締役/寺田博氏
寺田氏はISO 50001とISO 14001の対比を中心に解説。ISO/CD 50001の要求事項の目次構成は次のようになっている。

4.1General requirements(一般要求事項)
4.2 Management responsibility(経営者の責任)
4.3 Energy policy(エネルギー方針)
4.4 Planning(計画)
4.5 Implementation and operation(実施と運用)
4.6 Checking performance(パフォーマンスの評価)
4.7 Review of the Energy MS by top management(トップマネジメントによるエネルギーマネジメントシステムレビュー)

ISO/CD 50001にあって、ISO 14001にない項目は下記の通り。
4.4 の中の、Energy profile(エネルギープロファイル)、Energy baseline(エネルギーベースライン)、Energy performance indicators(エネルギーパフォーマンスインディケーター)。
4.5の中のDesign(設計)、Purchasing energy services, goods and energy(エネルギーサービス、機器及びエネルギーの購買)。

ISO 50001の特徴について寺田氏は次のようにまとめた。まず第一に、ISO 50001はISO 14001の側面という考え方をエネルギーに特化して作られた規格である。その中でパフォーマンスの把握・評価・改善をより明確に示している。また、サプ ライチェーンの管理についてもより細かく要求している。第二に、ISO 50001は省エネルギー法の中で有効に機能できるものである。そして第三に、すでにISO 14001の認証を取っている組織は、ISO 14001を少しモディファイすればISO 50001に対応できると考えて欲しい。モディファイすべきところは、「パフォーマンスの評価」と「サプライチェーンの管理」である。そこさえ注意すれ ば、既存のマネジメントシステムを使うことにおいて何の問題もない。

hirabayashi-san.jpg【講演3:ISO 9001とISO 50001の関係】テクノファ代表取締役/平林良人氏
平林氏は両規格の要求事項を比較する中で、ISO 9001にあってISO 50001にない条項として下記の18項目を挙げた。
品質マニュアル/顧客満足/インフラストラクチャー/作業環境/製品実現の計画/製品に関連する要求事項のレビュー/顧客とのコミュニケーション/設計・ 開発からのアウトプット~設計・開発の変更管理/購買製品の検証/製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認/識別及びトレーサビリティ/ 顧客 の所有物/製品の保存/監視機器及び測定機器の管理/顧客満足/製品の監視及び測定/データの分析/継続的改善

また、ISO 50001にあってISO 9001にないものとして、次の5項目を挙げた。
エネルギープロファイル/エネルギーベースライン/エネルギーパフォーマンスインディケーター/目的、目標、行動計画/順守評価

すでにISO 9001の認証を取っている組織に対して、平林氏は「組織にすでにISO 9001の枠組みがあるのなら、それは変えないで、ISO 50001の要素を既存の枠組みに組み込んだほうがよい。 ISO 9001とISO 50001とでは、共通の要求事項が6割もあるのだから。ISO 9001ではなくて、iSO 14001をベースにしている組織についても同様のことが言えるだろう」と述べた。

ishihara.jpg【講演4:省エネルギー法とISO 50001標準化】省エネルギーセンター常務理事/石原明氏
石原氏は施行30年の実績を持つ日本の省エネルギー法の概要について解説し、ISO 50001との比較の中で、この規格の活用に対する期待などについて語った。石原氏は「日本のこれまでの省エネに関する経験・実績をISO 50001に反映させる必要がある。この規格には、トップマネジメント、管理バウンダリー(境界)設定、指標設定の自律性、ベースラインといった注目すべ き考え方がある。またこの規格の開発によって、日本がこれまで取り組んできた計測、見える化、ベンチマークなどの考え方を国際的に広めることができる。省 エネ法に準拠しつつ、ISO 50001に適合するようなエネルギー管理を構築・運用することは可能である」と述べた。

ISO50001_panel.jpg【パネルディスカッション】
モデレーターを西尾氏が担当、パネリストとして上述の寺田氏、平林氏、石原氏のほか、電子情報技術産業協会 制御システム専門委員会WG1主査/井上賢一氏、日本電機工業会 省エネシステム・機器普及専門委員会副委員長/酒井孝寿氏、電気事業連合会 工務部副部長/中井浩之氏が参加。冒頭、3名のミニ・プレゼンが行われた後、パネラーによる発言、フロアーとの質疑応答が行われた。ミニ・プレゼンの内容は下記の通り。

inoue.jpg(ISO 50001 電子情報産業界の対応/井上氏)
ISO/CD 50001の段階で、省エネ法との整合性は確保できたので、次はISO 14001との実務の整合化が課題だ。また、ISO 14001の枠組みで省エネ活動を行っている企業は多い。ISO 14001とのダブル認証の負担に対する不安は大きいので、現在の省エネ活動はそのままにして、軽い負担でISO 50001の認証が取得できるようにならないものか。

sakai.jpg(工場エネルギー管理システム〈FEMS〉による省エネ/酒井氏)
ISO 50001が国際規格になることで、エネルギーマネジメントがルール化されることは、FEMSの推進にも大きな期待が持てる。また、平成22年から施行さ れる省エネ法では、エネルギー管理の対象が工場・事業場単位から事業者単位になるので、トップマネジメントの省エネ意識も高まり、FEMSが一層普及する ものと期待している。

nakai.jpg(火力発電所における熱効率管理について/中井氏)
省エネ法の対象は、発電関係では化石燃料を利用する火力発電所が主である。火力熱効率の向上に向け、省エネ法の下での年1%原単位改善(中長期)達成に取 り組んでいる。また、省エネ技術の海外移転としてAPP(クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ)活動も注目されている。とにかく火力 発電における日本の省エネ技術は世界の中で飛び抜けている。その技術はISO 50001の規格作成において貢献できるのではないか。

matsuhasi.jpg【国内審議委員会委員長挨拶】東京大学大学院 新領域創成科学研究所環境システム学専攻教授/松橋隆治氏
パ ネルディスカッションのあと、ISO 50001の国内審議委員会の委員長である松橋氏があいさつに立ち、「省エネ活動においても2000年代後半から、それまでの『守り』の姿勢から『攻め』 の姿勢に変わって来たのを強く感じる。ISO 50001への取り組みについても、『守り』も大事だが、『攻め』の姿勢を忘れず、関係者の皆さんと共に取り組んでいきたい」と締めくくった。

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