ISO 9001:2015

次期ISO 9001規格の最新動向 その1

11116-20121227munechika.jpg2012年12月27日、ISO研修機関・テクノファ(平林良人社長、本社・神奈川県川崎市)主催による「第19回テクノファ年次フォーラム」が東京都品川区の「きゅりあん」で開催されたが、当日のプログラムの中で、早稲田大学・棟近雅彦教授(写真・ISO/TC176国内対応委員会副委員長)が「次期ISO 9001規格について」をテーマに講演を行った。2012年11月に開催された第1回目のISO 9001改正会議であるサンクトペテルブルグ会議の最新情報を含めた重要な内容だったので、同講演の詳細を本ブログで5回に分けて報告する。

 

講演「次期ISO 9001規格について」
講演者:ISO/TC176国内委員会副委員長(早稲田大学理工学術院教授) 棟近雅彦氏

講演概要

今回の講演は次の順序で行います。
まずは、どういう流れで国際規格が作られていくのかについて説明します。この流れは、ISO 9001改正に限った話ではありません。それと、この講演では「改正」という言葉を使っています。日常用語で言うと「改訂」のほうが正しいと思いますが、 JISでは「改正」という用語を使っていますので、それに準じています。

続いて、ISO 9001改正が決まり、新作業項目が可決した話。さらに、この改正作業を始める前に、実はISOではユーザーサーベイを実施していました。このサーベイの 対象はISO 9001:2008です。2008年版について、ユーザーはどういう思いがあるのかをISOは調査しましたので、その概要をお話します。

また、ISO 9001改正に対して、日本としてはどういう規格にしたいのかをきちんと述べる必要があります。ISO 9001の作成作業をしているのは、ISO/TC176という技術委員会ですが、このTCに対して、国内に対応委員会というのがあります。委員長は中央大 学教授の中條武志さんです。この対応委員会で、ISO 9001改正に対してポジションペーパーを作成し、今回のサンクトペテルブルグ会議で提出しています。それがどういう内容だったのかについてお話します。

それから、今回の規格作りにおいては、ISOマネジメントシステム規格の共通構造を示したAnnex SLを採用しているのですが、そもそもAnnex SLとはどういうものなのか、それを踏まえて作成されたラフワーキングドラフトはどのような内容であるのかをご紹介します。

最後に今後の見通しについてお話しますが、確定しているのは、2013年3月にブラジルのベロオリゾンテで次回のISO 9001改正会議が開かれることまでです。その先については予測で話さなければなりません。今、申し上げたことが先々変わってくることもありますので、そ の点はご承知置きください。

1. 規格制定作業

(1)NWIP
ISOで作成された国際規格は5年に1回は見直すことが決まっています。その時点で必ず、改正するか否かを見直すことになっています。そこで、ISO 9001も今回、改正作業を始めるかどうかを審議しました。新しく改正作業を始めるわけですから、新作業項目というのがまず提案されます。これは、 NWIP(New Work Item Proposal)と呼ばれています。NWIPが提出され、これについて世界のメンバー国が承認すれば、そこで初めて改正作業がスタートするわけです。今 回は可決され、改正作業が始まりました。

(2)WD
改正作業では、最初にWD(Working Draft:作業原案)が作成されます。これは、一般の方々は見ることができなくて、ISO/TC176内のエキスパートだけで検討される事項です。

(3)CD
WDが少し成熟してくると、CD(Committee Draft:委員会原案)に進みます。ここで言うCommitteeとは、TC176のTC、つまり技術委員会のことです。CDというのは、TCが正式に 原案として認めたものです。CDについては、回付されれば一般の方々も見る機会があり、誰でもコメントをすることができます。

(4)DIS
CDの回付で出てきたコメントなどが反映され、次はDIS(Draft International Standard:国際規格原案)に移行します。これが、国際規格の原案と言われるものです。これもまた回付されれば、一般の皆さんが見ることができ、コ メントをすることもできます。

(5)FDIS
DISの回付で出てきたコメントなどに対応して、FDIS(Final Draft International Standard:最終国際規格案)に移行します。これも回付されるのですが、FDISの時点では、意見を言っても反映されません。(5)から(6)へ至 る段階になると、編集上の間違いなどが指摘できるだけで、要求事項の技術的な問題などについての意見は、もう通りません。

(6)IS
このあと、最後にIS(International Standard:国際規格)に進みます。

ルールとしては、作業を始めてから、WD提出まで6ヵ月以内、DIS投票まで24カ月以内、FDIS投票まで33ヵ月以内、IS発行まで36ヵ以内と決められています。現在(2012年12月27日時点)は(2)の段階にあり、WDが作成されつつあります。

20130107_zu.jpg

 

2. ISO 9001の改正の現状

(1)NWIP
新作業項目・NWIPは、2012年3月にスペインのビルバオで開催された改正会議で案が作られました。このNWIPの中身は、分かりやすく言えば、「こ のようにしてISO 9001を改正していこう」という提案です。同年6月29日から投票が始まり、10月1日に投票を締め切りました。投票結果は、賛成46、反対0、棄権8 です。賛成多数により、改正作業のスタートが決まりました。

(2)WD
では、改正作業の最初の原案であるWDは、いったい誰が作るのでしょうか。ISO 9000シリーズ規格はISO/TC176が作成していますが、TC176内のSC(Sub Committee:分科会)の1つにSC2があり、ここで、ISO 9001とISO 9004の作成作業を行っています。SC内にはWG(Working Group:作業グループ)が設置されるのですが、今回のISO 9001改正作業を行うのは、SC2の中のWG24というグループです。

WG24という名称が付いているからといって、現在、SC2内に24個以上のWGがあるのかというと、そうではありません。実はISOのWGは、仕事が終 了すると、そのWGの番号はもう使いません。ですから、新しい作業が生まれるたびに、新しい番号のWGが生まれます。例えば、ISO 9001の2008年版を作成したのはWG18でしたが、このWGは仕事が完了したので、廃番となっています。

WG24のコンビナー、つまりリーダーは、サンディ・サザーランド氏(英国)です。WGにはメンバー各国のエキスパートが登録することになっていますが、 登録できるのは、1国2名までです。日本からは、須田晋介氏(テクノファ研修事業部統括リーダー)と山田秀氏(筑波大学教授)の2名がエキスパートとして 登録しています。

ISO 9001改正の第1回目の会議は、前述したように2012年11月に開催されたサンクトペテルブルグ会議です。この会議におけるWG24の目標は、WDの ラフ段階のもの、つまりラフワーキングドラフトの作成です。ラフワーキングドラフトは、一般の方には公開されていません。今、そのラフワーキングドラフト をWG24が各国メンバーに回付し、メンバーからのコメントを募集している段階です。このあと、コメントなどをもとにWDが作成され、回付されることにな ります。

 

3. 規格制定までの手続き

(3)CD
Pメンバーに意見紹介のためのCD回付を行います。Pメンバー(P menber)というのは、Participating memberの略で、投票権のあるメンバーのことです。一方で、Oメンバー(Observer member)という投票権のないメンバーがいます。日本はPメンバーです。そのPメンバーに意見照会のためにドラフトが回付されます。そこで、次の段階 に進めてもいいかどうかについて投票が行われます。そこで3分の2以上の賛成があれば、次の段階に進みます。

(4)DIS
ここでは、Pメンバーだけでなく、Oメンバーも含めた、すべてのメンバー国にDISが回付され、投票が行われます。賛成票が3分の2以上、かつ反対票が投票総数の4分の1以下であれば、次の段階に進めます。

(5)FDIS
ここでもすべてのメンバー国に回付され、投票が行われます。ただ、前述したように、FDISでは、要求事項の中身に関する意見交換は行われませんので、基本的にYes/Noの投票になります。

(6)IS
FDISが投票で承認されたあと、ISが発行されます。このようにメンバー国が投票する機会は3回ありますが、大事なのは、規格の中身について意見を出すことができるCD段階とDIS段階での投票ということになります。

4. 今後の改正計画

今後の改正計画については、下記の内容で可決されました。

2013年3月  改正会議(ブラジル・ベトオリゾンテ)
2013年4月  作業原案(WD)回付
2013年6月  委員会原案(CD)投票
2013年11月   改正会議
2014年5月  国際規格原案(DIS)投票
2014年7月  最終国際規格案(FDIS)投票
2015年9月  国際規格(IS)発行

2013年3月の改正会議では、ラフワーキングドラフトに対するコメントを整理し、同年4月にはWDを回付することになると思います。その後の予定は、あ くまで最短の場合です。今までの経緯を踏まえると、半年くらい延びる可能性は十分にあります。規格発行の予定年としてよく使われるのがX(エックス)とい う表現です。次期ISO 9001の発行は、おそらく201X年でしょう。202X年にはならないと思います。
(明日に続く)

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