ISO 9001:2015

次期ISO 9001規格の最新動向 その2

前日に続いて、ISO/TC176国内対応委員会副委員長・棟近雅彦氏による講演「次期ISO 9001規格について」を紹介します。

5. ユーザーサーベイの結果概要

ISO 9001改正作業に入る前に、まずは現状のISO 9001:2008がユーザーにどのように受け止められているのかについて、ISO/TC176による公式のユーザーサーベイが、2010年10月〜 2011年2月、オンライン調査によって一般ユーザー対象に実施されました。前回のユーザーサーベイは、英語によるアンケートしか実施しなかったのです が、今回は回答数を増やすために、11カ国の言葉に翻訳して行われました。日本語のバージョンもありました。

調査項目は14の質問カテゴリーがあり、下記のような内容について聞いています。

・ISO 9001の利用状況、有用性
・ISO 9001の認証取得状況、意義
・ISO 9001の適用における難しさ、課題
・ISO 9000ファミリーで利用されている概念の分かりやすさ
・今後のISO 9001のあり方(構成等含め)、意義
・今後のISO 9001に必要な概念、要素

今日はその中の一部しかお話できませんが、ポイントを絞って、ユーザーサーベイの結果を報告したいと思います。

(1)ISO 9001の認証取得に影響を与える要因

「ISO 9001の認証取得に影響を与える要因は何ですか?」という質問項目に対して、このような回答結果になっています。「顧客満足」「市場ニーズ」というお馴 染みの答えが並んでいますが、中には「顧客からの強制的な要求」という答えもありました。「顧客満足」というのがトップに位置しているという、きわめてま ともな結果になっています。
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(2)ISO 9001を適用すること便益

「ISO 9001を適用することの便益(benefit)は何ですか?」という質問項目に対して、ここでも「顧客満足の向上」がトップにきており、ほぼ同じくらいの回答数で、ISO 9001の強味とも言える「ビジネスプロセスの標準化」が多かったようです。

survey2.jpg

(3)現状のISO 9001に対する意見

このほか、いろいろな質問項目があり、自由回答形式の質問もありました。総じて、現状のISO 9001に対する意見をまとめてみると、次の4点が大きな問題として浮かび上がりました。

・有効なISO 9001実施に向けた取り組みが必要(運用、認証の問題を含む)
ISO 9001は、プロセスをきちんとしたものにすることが基本なんですが、じゃあ、結果としてちゃんと満足したものができているのかという点については、日本 だけでなくて、いろんな国で問題になっています。いわゆる Output Matters です。そういう問題があるので、もっと有効な実施に向けた取り組みが必要なのではないか、という要望です。

・リスクマネジメント、財務マネジメント、変更管理、アウトソーシングなどの概念の導入が必要
これは、現状のISO 9001に書かれている要求事項に加え、上記のような項目について、もう少しスコープを広げる必要があるのではないか、という要望です。

・製品実現、検証及び妥当性確認、設計・開発に関する要求事項の明確化が必要
これも、現状のISO 9001に書かれている要求事項に加え、さらに明確化する必要があるのではないか、という要望です。

・サービス分野及びソフトウェア分野での適用が難しい
ISO 9001は、すべての業種・業態に適用できると謳っていますが、現実としては、サービスやソフトウェア分野への適用は難しいという意見です。

(4)ISO 9001:2008の今後の意義

これは、「現状の2008年版を今後も続ける意義はあるのか?」という質問項目に対する回答です。「現状で十分意義がある」という回答は27%で、「意義はあるが改善が必要」という回答は64%あります。

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(5)今後のISO 9001の望ましい姿(選択肢)

「今後のISO 9001の望ましい姿」についての質問項目では、下記のように選択肢をAからGまで7つ用意しました。ざっくり言うと、Aが一番現状のISO 9001に近くて、Gに近くなるほど現状からの変更が多くなります。例えば、Aは、現状のままで、さらに5年間は変更しないというものです。一方、Gは、 ISO 9001で成熟度を点数評価し、3つのレベルを持つ規格にするというものです。そして、「このAからGの中で、どれがいいですか?」と聞いたわけです。
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(6)今後のISO 9001の望ましい姿(回答)

その結果がこのグラフです。グラフの左側が反対(negative)で、右側が賛成(positive)。賛成の多い順に並べてあります。賛成が最も多 かったのは「B」です。「B」というのは、「現在の規格をベースに、必要な部分は改正する」という内容です。このグラフを見ると、比較的保守的な意見が多 いことが分かります。

survey5.jpg(7)ISO 9001に取り込むべきコンセプト

一方、「どのようなコンセプトを今後のISO 9001に取り入れていけばいいか?」という質問に対して、賛成の回答が多い順に並べたのが下のグラフです。「資源の運用管理」「顧客の声」「パフォーマ ンス等の測定」などが上位につけています。こういう質問をすると、あれもこれも入れよう、という傾向になりがちなのですが、この中で上位の項目について は、今後ISOの改正作業でも検討されることになると思います。
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(8)ユーザーサーベイのまとめ

最後にユーザーサーベイのまとめです。ユーザーが望んでいる重要なポイントは、「ISO 9001は、ある程度改善を行えば、将来的にも意義のある規格である」「大規模な改正は望んでいないが、改善は必要である」の2つです。ここで注意しなけ ればならないのは、今回のユーザーサーベイは、Web上で誰でも回答できるものであり、全世界的な利害関係者から、統計的に意味のあるサンプリングをした わけではないこと、また、認証取得を要求する側(顧客側)と認証を取得する側(認証組織)との意見を分けることができないことです。例えば、認証組織にし てみれば、「もう規格内容は変えないで欲しい」という要望が強いかもしれないし、認証取得を要求する側からすれば、「もっとこういった要求を入れて、厳し くして欲しい」という要望が強いかもしれない。そのあたりが峻別できていないことが、少し残念なことです。ただ、このサーベイには全世界で1万件を超える 回答がありましたので、多くの人たちがこのように思っているとして参考にすべきものでしょう。
(明日に続く)

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