ISO 9001:2015

次期ISO 9001規格の最新動向 その5

連載最終回である「その5」では、WDへとつながるラフワーキングドラフトの現状を報告します。ISO/TC176国内対応委員会副委員長・棟近雅彦氏による講演「次期ISO 9001規格について」からの紹介です。

 

9. ラフワーキングドラフトの現状

(1)サンクトペテルブルグ会議での成果

2012年11月にサンクトペテルブルグ会議が行われ、ISO/TC176/SC2/WG24でISO 9001のラフワーキングドラフト(ワーキングドラフト〈WD〉のたたき台)の作成を始めました。基本的には附属書SLの共通構造に従って、ラフワーキン グドラフトを部分的に作成し、同会議後、それを修文したものが同年12月中旬にメンバー各国に配布され、現在日本にも届いています。

その送られてきたラフワーキングドラフトを、TC176国内委員会で、WDに向けてどのような内容にしていくのかを検討しているところです。今のところ、 ISO 9001改正に向けた日本のポジションペーパーにおける3つの要請については、概ね取り入れられる方向で進んでいます。

まず「要請1」の「固有技術の獲得・向上」については、反対意見もなく、それぞれの箇条のドラフト作成で考慮することになっています。「要請2」の 「ヒューマンエラーの仕組み」については、表現上の問題でうまく伝わらなかった面もあったと山田秀委員が言っておられました。「要請3」の「パフォーマンスについての規定」については、概ね好意的に受け取られたと思います。

(2)ラフワーキングドラフトの作成方針

ラフワーキングドラフトについては、次のような作成方針で進むことになっています。

・基本的には、附属書SLから逸脱せずに作成する。

・ユーザーサーベイは重要なインプットなので、規格執筆者は、この結果を参考情報として頭に入れながら規格を書く。

・Future concepts(2009年から2011年までISO/TC176/SC2によって実施された、次期ISO 9001規格に対する意見・見解を約50ヵ国・100人のエキスパートの参加によって取りまとめたプロジェクト。Future conceptsは100頁を超える大作だが、あくまで参考文書であり、ISO 9001原案の一部を成すものではない)が提案している18項目を分類する。

今 後入ってきそうな項目は、リスク、パフォーマンスへの着目、顧客の明確化、プロセスマネジメント、インフラストラクチャの維持、コンピテンス、競争力、 QMSの構造。状況によっては入ってくるかもしれない項目は、コミュニケーション、タイム・スピード・アジリティ、QM原則、ビジネスとの整合、ライフサ イクル・マネジメント、ナレッジマネジメントなど。今のところは考慮しない項目は、財務的状況と品質ツール。

・ISO 9001:2008改正時に残ったコメントの反映。

2008年版は、基本的に要求事項は変えず、小さな修正で終わったので、反映できなかったコメントというのがたくさん残っている。その残されたコメントも、今後は規格改正のインプットして検討する。

今後の改正作業では、ISOが附属書SLで提示している共通構造に、現行のISO 9001:2008の要求事項、ユーザーサーベイの結果、Future conceptsのいくつかの項目、2008年改正時の積み残し、今後各国から出てくる追加要求などが、埋め込まれていくことになります。

(3)ラフワーキングドラフトの現状

では、ラフワーキングドラフトの現状はどうなっているのか。例えば、附属書SLで言うところの「6.計画」は、すでに用意された要求事項として、下記のよ うな内容になっており、その中の「×××」には「品質」が入ることになっています。すでに共通構造として、「6.1 リスク及び機会への取組み」が箇条としてあがっていますから、Future conceptsのリスクの話は、どう考えても入ってくるわけです。さらに、各国から新たに追加要求があるかもしれません。

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あるいは、附属書SLの「7.支援」では、下記のような内容であり、そこには「資源」「力量」などの項目が入っています。それは、ISO 9001:2008の要求事項で言えば、「6.資源の運用管理」に相当しますので、その内容を今後の改正で考慮していくことになるでしょう。また、「力 量」については、ユーザーサーベイの結果、「もっと分かりやすくして欲しい」という要望が多かったので、より分かりやすい表現に書き直すかもしれません。 あるいは、Future conceptsの中に、ナレッジマネジメントに関する項目があったので、それも検討されるかもしれません。

他の要求事項についても、同様にさまざまな角度から検討されると思いますが、基本的には附属書SLの構造に従って作成されるので、見た目は大きく異なるこ とになると思います。すでに、附属書SLの共通構造に従って作成された規格というのは、すでにあります。それは、道路交通安全マネジメントシステム規格、 ISO 39001です。参考にされるとよろしいかと思います。

10. 支援文書の作成

今まではWG24の活動内容を報告してきたわけですが、その1つ手前の番号、ISO/TC176/SC2/WG23というのがありまして、私はそのWGの メンバーです。WG23の作業内容は、Communication and puroduct supportです。具体的には、様々な支援文書、Webなどを通じて、ISO 9000関連の規格をユーザーに啓発する作業を行っています。WG23はサンクトペテルブルグ会議で最初の会合が行われました。

WG23での支援活動の内容ですが、例えば、ISO 9001:201X版が発行されると、移行作業が始まりますから、その移行計画をどうやるのかを説明する文書を作成するとか、支援文書として、ISO 9001やISO 9004の適用ガイドを作成するとか、FAQを作るとか、SC2のウェブサイトで支援文書を出すとか、中小企業向けのハンドブックを発行するとかがありま す。今回、私が特に注目しているのは、WG23でのCorrelation Annexの作成作業です。

Correlation Annexとは、ISO 9001の2008年版と201X年版との対比表のことです。ISO 9001:201Xの要求事項の後の附属書に掲載する予定で、これを見れば、201X年版の要求事項は、2008年版の要求事項のどれに対応しているかが 分かるというものです。一方で、用語を定義しているISO 9000についても、2005年版と201X年版との対比表を作成する予定です。

実際にこの対比表の作成作業をサンクトペテルブルグ会議で始めたのですが、この時は、附属書SLのAppendix 3とISO 9001:2008との対比表を作ってみました。どの箇条とどの箇条が対応していて、どこが変わったのかを記述するのは、結構むずかしいことが、やってみ て分かりました。この作業をあと数年は続けることになります。規格を実際に使う側からすれば、このような対比表があることは非常に重要なことだと思いま す。

11. まとめ

ISO 9001:201Xの改正作業はまだ始まったばかりです。発行予定は、一番早くて2015年9月です。改正版には、附属書SLを適用しますから、見た目は 大きく変わります。新たな要求事項の追加内容については、まだよく分かりません。ただ、少なくともリスクやパフォーマンスに関する事項は入ってくると思い ます。最後に、本当に附属書SLの共通構造をISO 9001に適用するのかという問題ですが、私はたぶん適用すると思います。共通構造にどれだけ追加するのか、あるいは逸脱するのかについては、今後とも注視していきたいと思います。(終了)

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