中尾元子 作品集

中尾元子が描いた絵画(洋画および日本画)は、おそらく400点以上あり、そのほとんどは寄贈されたり、購入されたりして、公共施設や私邸などで保管されているものと思われます。このブログでは、中尾家が所蔵している中尾元子の作品(日本画)を公開させていただきます。いずれも正確な制作年月はわかりません。

「水辺の譜」(色紙:242×273mm)
1985年、55歳の時にドイツへ旅行に行ったのですが、その時にヴィルツブルクやローテンブルクの町並みの美しさに感動していました。その後数年は、ドイツで見た家屋や森の印象が絵に表現されていたように思います。水面に映った景色は、デフォルムされ、家屋も映っていない不思議な絵です。

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「ロマンスの森」(色紙:242×273mm)
こちらもドイツ旅行の影響が出ている絵ですが、こちらは水面に映った景色にちゃんと家屋も描かれています。見る人は、卵型の水晶球をのぞいているかのような気持ちになります。真ん中に描かれているのは巨大な花なのか、あるいは花は目の前にあって家屋が遠景なのか・・・見ていて、いろいろなことを考えさせてくれる絵です。

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「少女」(F4:242×333mm)
髪が花咲く、森の妖精のような少女。静かにうつむき、見る人を静寂に誘います。絵を見る側から言えば、顔の左半分にうっすら緑の影が入っています。左右ほぼ同じ目鼻立ちをしているのですが、左半分だけを見ると暗い表情に、右半分だけを見ると明るい表情に見えます。この作品で、顔を半分に分けるという表現を初めて使い、その後、変容しながらもこの表現が継続されます。「この絵だけは絶対手放さない」と中尾元子が言い残した、1972〜1973年ごろの作品です。

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「花陽炎(はなかげろう)」(F8:455×379mm)
植物群が、燃えたぎる炎のように躍動しています。ただ、無限の世界で動いているのではなく、「ロマンスの森」に見られたように、閉じた球体の中での出来事であるかのように、上部に円弧が見えます。それと、この絵も、「ロマンスの森」も「少女」もそうなのですが、右手から白い光が差し込んでいます。制作年代は1970年代後半だと思います。

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「フラメンコ」(F8:379×455mm)
中尾元子は生前、フラメンコの踊りを見て、「情熱を爆発寸前のギリギリで抑えているところがたまらない!」と評しておりました。「フラメンコ」には、そんな思いも込められているのでしょう。頭に花輪をいだく森の精に、もはや「少女」のような静寂はなく、黒い輪郭でエッジを切りながら、今にも爆発しそうな苦悩と憎悪が凝縮されています。顔半分には、葉っぱの形状をした魔の手が伸びているかのようです。ただ、胸のあたりにうっすら白い光があり、わずかな救いとなっています。制作年代は1970年代後半です。

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「情念」(F50:909×1167mm)
もう植物模様は顔中に広がりました。絵を見る側からすると、顔の右半分は笑みを浮かべ、左半分は睨みつけるような表情になっていますが、右半分の笑みさえ、深い苦悩に覆われています。ですが、人物を中央に置く「フラメンコ」には、自我を前面に出す「若気」がありますが、「情念」には、人物を少し右にずらして三角構図をとり、我々に語りかけるような「成熟」があります。一方で、高さ1mを超えるこの大作には、「フラメンコ」を超えるエネルギーがあふれています。「情念」は、中尾元子が抱えていたアンビバレンツを集大成した作品だと思います。その後は、このような大きな作品は描いていません。母のお気に入りだった高校生の息子(三男)は、「この絵の中には動物がたくさんいるね」と言っています。私には見えません。みなさんには、見えますか? 制作年代は1970年代後半で、「フラメンコ」の後に描いた、中尾元子最後の大作です。

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(日本画について)
日本画というと「日本的な絵」という誤解があるようですが、正確には日本絵具を使った絵画のことです。ですから、日本絵具さえ使っていれば、中尾元子のように、一般人から見て「わけのわからない絵」であっても、立派な日本画です。洋画を見たことがある人は多いと思いますが、日本画を見たことがある人はおそらく非常に少ないと思います。日本画では岩絵具という顔料を使用しますが、粉末なので、そのままでは画面にくっつきません。ですから、ニカワという固着材と混ぜて塗ります。この絵具の粒子が画面上につや消し効果(だから、油絵のようにテカった日本画というのは、ありません)と立体効果を演出します。この粒子は、写真ではなかなか表せません。また、額縁のガラス越しでは見づらいものです。ですから私は、日本画というものは、額縁に入れずに、生で、しかも間近で観るのがもっともよいと思っています。

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