資格/検定

TOMOさんのTS体験

今月初めに開催された「いそいそフォーラム合宿」での
TOMOさんのスピーチです。
参加された方だけの脳裏に留めておくには惜しい内容ですので、
ご本人の了解を得て、ここに掲載します。
TOMOさんは、TSの規格や制度で確立されている、
明確なる「顧客志向」と「不適合基準」について語っています。
それは、ISO 9000の規格と制度が
本来意図はしていたものの、未だ実現できていないものです。
このスピーチは、TS側から見たISO 9000論でもあるわけですが、
それをTSの研修と試験を通じて自ら体験した
カルチャーショックをベースに話しておられるので、
ISO 9000しか知らない人にも共感を抱かせる説得力を持っています。
【再試験に挑む】
7月下旬にTS 16949(以下、TS)審査員の試験があったが、見事に落ちてしまった。そこで、次の再試験に向けて先週TSの研修を受けた。再試験は9月末にあるのだが、実は、今のTSのプログラムの中では今回が最後の試験となる。その次の試験はさらにハードルが高くなり、難易度が増すらしい。だから、次は何が何でも受からなくてはならない。今度の試験は自腹で受けるので、なおさらだ。

【TS審査員になりたい】
私はどうしてTS審査員の試験を受ける気になったのか? 例えば、ISO 9000の審査でプロセスを本当にきちんとみようとすると、忌避(受審組織が当該審査員が審査をすることを拒否すること)につながってしまうというような現状がある。特に、中小企業やサービス業の審査では、そういったことが起きやすい。「TSの審査にはそれがないぞ」とある人からそそのかされたので、TSの審査員を目指すことにしたのだ。

【TS審査員候補の資格要件】
TS審査員は、審査会社のTS審査員として申請することになるのだが、審査会社のTS審査員候補になるには、次のような要件を満たさなければならない。
【実務経験】直近10年間の実務経験の内、自動車産業界での経験が6年間。その内2年が品質保証業務に携わっていること。
【審査員経験】審査チームリーダーとして製造工場の審査を最低3回経験。
【知識】TS16949規格、コアツール、CSR、承認ルール、プロセスアプローチなど。

【TS審査員が少ない理由】
TS審査員の数が非常に少ないのは、この資格要件の中の「実務経験」がネックになっている。特に、現役審査員の中で、このような実務経験を持っている人がほとんどいない。「知識」については、所属している審査会社に「この審査員はこのような知識を持っている」ということを支持してもらう必要がある。だから、個人的にTS審査員になりたいと思っても、審査会社がスポンサーになってくれないと受けることができない。私が先日受けたTSの試験でも、受験者のほとんどは、それまで自動車関係の会社に勤務していて、TS審査員になるために審査会社に転職してきた人たちだった。

【甘かった私】
私自身は、かつて自動車業界にいたといっても、Tier2での部品サプライヤーとしてTSの認証を取った半導体会社にいた。Tier2なので、ビッグスリーからの直接要求にさらされてはいない。だから、実際にTSの研修を受けてみて、いろんな意味で自分が甘かったことを思い知らされた。恥ずかしながら、研修を受けて「へえ〜、そうだったんだ」と思うことが多々あった。

【審査会社の顧客は受審組織ではない】
カルチャーショック・その1は「審査会社のお客さんは受審組織ではない」と研修で教えられたことだ。TS審査会社の顧客はIATFメンバー(欧米自動車会社8社)であって、受審組織ではない。こういった感覚を持って今まで審査をしたことがなかったので驚いた。TS審査員は、TS規格やCSRに則って受審組織を評価するが、その評価の基準になるのは、IATFメンバーの期待を満足するQMSを構築・運用しているかどうかということなのだ。TSの審査は、第三者審査の形をとってはいるが、実際はIATFメンバーに代わって二者監査を行っていると考えればよい。

【簡単に出る不適合】
受審組織はお客さんではない。だから、ISO 9000の審査のように相手の顔色をうかがうことなく、メジャー不適合は簡単に出る。たとえ2度目の更新審査を受ける大企業でも出る。これはISO 9000の審査ではちょっと考えられないことだ。しかし、TSの審査では出るものなのだ。なぜなら、TSの審査では不適合の基準が明確だからだ。

【IATFの意図を理解すること】
不適合の基準は、TS規格だけでなく、TS規格の意図も含まれる。その意図というのがビッグスリーの場合はCSRに示されている。前述したように、TS審査のお客さんは受審組織ではなくIATFメンバーなのだから、まずIATFメンバーの意図を理解しなくてはならない。研修ではこの意図をたたき込まれるわけだが、初めて3日間のTSの研修を受けた時は、カルチャーショックの連続で、自分としてはその意図が消化し切れないまま試験を受けたので落ちたのだと分析している。

【「効率」は審査しない】
カルチャーショック・その2は、「効率は審査しない」と言われたことだ。TS規格には「効率」についての記述がある。しかし、TSの研修で講師から「第三者審査ではプロセスの有効性をみるが、効率については審査をしない」と言われた。第1回目の研修ではその意味が分からなかったが、2回目のフォローアップ研修を受講して、その意味がようやく分かった。「効率」というのは「組織にとっての満足」である。顧客にとっては、究極的には、自分の会社に不良品が来なければそれでいいのだ。だから、「効率」などみなくてもいいわけである。また、「有効性をみる」と言っているが、TSが言うところの「有効性」とは、組織のお客さん、つまりIATFのメンバーに、不良品が行
かないような仕組みに対する有効性に限られる。だから、組織が儲かるために立てた目標などに対しては、それを達成しようがしまいが、それについてはTS審査で
は見ようともしない。だが、ISO 9000の審査になると、審査員によっては、そういうところにも踏み込むのではないだろうか。

【規格に「効率」が載っているのは?】
じゃあ、どうしてTS規格には「効率」の記述があるのか。その裏話としてビッグスリーのある購買担当幹部の次のような話がある。米国のサプライヤーには「効率」の話をしないと、ダメなサプライヤーが存在する。日本の組織のように、自分たちで「効率」のことを考えて取り組んでほしいのだが、それができないサプライヤーがいるので、規格に盛り込んだそうである。

【TS審査が見るのは品質保証】
カルチャーショック・その3は、組織のKPI(Key Performance Indicator)や品質方針についても、TS審査で見るべきことは「品質保証」に関するものだけであること。逆に言えば、品質方針やKPIに、品質保証に関することが明確に盛り込まれていなければ不適合である。こういった話をISO 9000の審査しか経験のない方が聞くと、「そんなことで不適合を出すのか?」と不思議に思われるかもしれない。実際、品質保証が盛り込まれていなければ、TS審査では不適合である。ただ、こういったことが明確になっているので、不適合を出した場合も、それを出した理由を審査員側としては明確に説明ができる。

【品質保証とは何か】
では、TSが言うところの「品質保証」とは何か? TSにはPPAP(Production Part Approval Process:生産部品承認プロセス)というコアツールがある。TSにおける「品質保証」とは、PPAPどおりの品質の製品を顧客が指定した納期どおりに届けることである。これは、顧客とサプライヤーとの契約の前提条件である。

【日本の「品質保証」とは違う】
トレーナーが言うには「欧米の『品質保証』と日本の『品質保証』とは違う。欧米の『品質保証』を理解しないと、TS審査員にはなれない。日本の品質管理にどっぷり浸かっている人には、TS審査員は無理である」とのことだ。「顧客の要求事項に反したら違約金が発生する」というのが、欧米の『品質保証』である。

【違約金の発生の有無で判定する】
例えば「顧客からあるパフォーマンスの要求があって、それに応えることができなかった場合、すべて不適合になるのか?」という問いに対する答えは、「そのパフォーマンス要求に対応できなかったことで契約上、違約金が発生するほどのものであるなら、それは不適合」である。この切り分けは、きわめて明確である。

【最終的には、顧客に不良品が流れるか否か】
TSの研修で扱ったコントロールプラン(以下、CP;QC工程表に相当)のケーススタディを紹介しよう。「CPの中に、作業者が実施していた目視検査が入っていなかったので不適合とした」という事例だ。TSのCPについての要求事項である「7.5.1.1」では、製造工程管理に使用される管理手段を記述することが求められているが、それに反しているので不適合としたわけである。これについて研修の講師は、「審査の過程で、規格に適合していない事象が見つかったからといって、その場ですぐに指摘はしないようにしてほしい。その場はメモをとるなどして記録しておき、もっとよく証拠を集め、そしてCPの中に目視検査が入っていないことで、最終的に顧客に不良品が流れそうだと判断されるようであれば、指摘すべきである。別に目視検査が入っていないことで、顧客に不良品が流れるリスクがないなら、実態はたとえ『不適合』であっても、ここで指摘する価値はないだろう」と述べた。トレーニングの方法として非常に合理的なやり方だと思う。

【ケーススタディはみんな不適合っぽい】
TSの研修のケーススタディは、どれもみんな不適合を出そうと思えば出せるものばかりだった。その中には、TS側からすれば、本当に指摘してほしいものと、実はそんな所には目もくれないで、もっと他の所を見てほしいというものとが仕掛けてあった。その中で、TS審査員として指摘しなければならないのはこれだよ、と研修で教えてくれるわけだ。実際のTS審査員の試験では、ピンポイントで不適合を指摘しないと点数にならない。前述したCPの目視検査のように、実態として規格に適合していないので、その場で「不適合」を出す方法もあるが、CPに目視検査を記載しなくても最終的に顧客に不良品が流れる心配がなければ、「不適合」を出しても試験では点数はつかない。なぜなら、「不適合」を出す価値がないからだ。

【ISO 9000の「品質保証」は今いずこ】
最後に言いたい。TSは、組織と顧客の契約で成り立つ「品質保証」が基準になっているのでブレがない。ISO 9000も品質保証規格なのだが、「品質保証」はどこに行ってしまったのだろうか。

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コメント

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  • コメント (9)

    • GAI
    • 2008年 9月 22日

    TOMOさんの体験記、生で聞いていてとても納得していました。
    ただ、TS2認証組織側の感想としては、ほとんど既知の内容であった、ということになります。
    これまでAIAGお墨付きのJ.Plexusでセミナーを受けたり、SACの試験を受けたり、さらには実際にTS2を要求する顧客との付き合いを通じ、TS2とはそういうものだということを感じていましたので、むしろTS2審査員になろうとする側の方々が、TOMOさんが味わい理解されたこれらの内容を理解できていない人がいる、ということをTOMOさんから聞いて、その方が驚きでした(聞いた時点では)。
    しかし、先日SAC(TS2審査員の組織版)更新試験を受けましたが、その時の講師が「審査員にやらせても、同じようなパフォーマンスですよ」「ISO9001のレベルから脱していない、TS2の意図がまるで理解できていない審査員もいて、その日の試験で全員が落ちることもよくある」という話を聞き、さらにSAC認定者であっても『本当に合格したの?』と聞きたくなるような発言やパフォーマンスを示す人がいたりするのを見て、認証制度も含めたTS2の意図を理解するのはなかなか難しい、とも感じました。
    J.Plexusセミナーを経験するという、慣れも必要でしょうし、何よりもTS2がなぜできたのかという意図も知った上で、TS2ならではの回答ができないと受からないのでしょう。
    と言っている私も、最初のSACの試験では、かなりのカルチャーショックを受けました。このときにやっと「TS2は契約概念」というのが分かりかけてきたようなもので、これも先日の更新試験で「なるほど、そういう意図か」と再認識させられたようなものです。
    さて、私の方はSAC更新試験。まだ結果は出ていませんが、毎回2割程度は落ちるらしく、落ちたらどうしよう・・・

    • TOMOさんの応援団
    • 2008年 9月 22日

    私の知人のTOMOさんの発表の本来の意図は、TS16949という「顧客志向と品質保証」に対し、とても明確な評価基準をもった規格を実体験を交えて紹介することで、「顧客への品質保証」というQMS規格の原点を参加者に訴え掛けたかったことだと言っていました。顧客への品質保証が明確になれば、不祥事なんて言語道断だし、有効性審査だって、何に対して有効かどうかを審査するのか、明確に分かるはずだと言っていました。
    GAIさんは、おそらく、ずーっと、TS16949の意図を知らなくては仕事ができないというポジションに置かれていらっしゃいますよね。でも、GAIさんの会社の他のポジションの方々はいかがですか?
    推測ですが、GAIさんほどには、「TSの意図」「顧客の要求が全て」「TSは顧客との契約」ということを理解(知識として知っているのではなく理解です)されていらっしゃらないのではないでしょうか。
    例えば、そういう方々がTS16949審査員になりたいと思ったとします。余程の何かがない限り、要求される実務経験は、満たしていらっしゃることにならないでしょうか。
    なので、TS16949の審査員試験は、そこのふるい分けなのだろうと思いますね。
    TOMOさんは、ご自身でも述べていたように、現役時代の経験は、GAIさんとは随分と違うようです。
    「『審査で不適合は貰うな』とは言われても、『不適合があるということは、品質保証システムに問題があるということになる。顧客との契約違反につながる可能性があるから是正処置をしなさい』とは言われなかった」とも言っていました。「今の自分なら、後者の説明をして、自組織のQMSの改善をしていたでしょうね」と言っていました。
    では。

    • GAI@私もTOMOさんの応援団
    • 2008年 9月 24日

    どこのどなたでしょう?
    TOMOさんも私のこともご存知のようですが、どなたかが特定できないと、なんともお返しするにも困る部分があるわけでして。
    もしかして、ご自分のご意見は聞かせても、私からのお返しはさせないぞ、てなお考えの方? とも思ってしまうわけでして。
    内容から読み取れば、私のよく存じているあの方かな?
    でも、もしそうなら「どうしちゃったの?」というしかないわけでして。
    てな状況で、私の思ったことといえば、もしかして私の投稿が、TOMOさんへ非難する内容と取られたのかと。
    だとしたら、先の一行目を読み飛ばされたのかな?
    少なくともTOMOさんの発表の本来の意図は、充分に理解しております。私もSACによってカルチャーショックを受け(前の投稿にも書いてますとおり)、同時に同じ考えになり、いつだったかのアイソスでTS2とISO9001を比較してそのあたりをのべましたから。
    私だってTOMOさんの応援団なんです。
    それから、私の状況が「ずーっと、TS16949の意図を知らなくては仕事ができないというポジションに置かれて」と述べられていますが、そんなことはありませんよ。むしろ、知ってからの方が仕事がやりにくくなりました。そもそも、TS2に対して答えなければならないのは実際に仕事をしている人であって、事務局なんぞ、大したことができるものではありません。これがいわゆるISOの仕事として答えるのなら、事務局に任せなさいってことになるでしょうけどね。
    私と同等以上に理解している人物なら、一緒に受けた製造サイトの事務局がいますし、それ以外となれば、あるTS2要求顧客からの二者監査に、実際に対応した中心人物のほうが現実ベースで理解しているでしょう(上述のサイト事務局のSAC認定者は両方の経験者ですし)。残念ながら私は、この二者監査を実際に目にしていません。何かあったときに何とかなるよう、私は常に裏方を命じられていましたから、TS2の意図を理解するための情報は、実際に二者監査対応された方から得たようなもんです。
    TS2はISOの仕事じゃダメなのです、現実が全てですから。
    それから、私が審査員の件で述べたのは一般論です。
    審査員になろうとする方にも、TOMOさんのように何か得ようとされ、そして見事に得た方もいらっしゃる一方で、それすらも理解できない方もいらっしゃるということをTOMOさんから聞き、また、SAC更新試験でも聞きました。そして応援団さんからは「なろうという審査員にはいろんな事情がある」という趣旨のことをいま聞きました。その上で、組織側から言わせてもらえば、「そなんじゃ困る、そんなやつは審査員などなってくれるな」です。組織側が一番迷惑するんですよ。
    実例を紹介するなら、これまでのTS2審査員の中には「???」と思う人もいました。そのうちの一人はISO9001の審査員として見ても信じられないような人物でしたので、完全忌避状態にしましたが、最近聞いた話では、更新試験に落ち追試もダメでTS2審査員資格を失ったとのこと。当然といえば当然ですが、そうなってもらわないと組織側が困ります。
    また、今回のTS2審査でも、ある審査員を二人目の完全忌避にし、もう一人はあと一回だけ機会を与える処置をしました。これらは一人目のようなひどいものではないにせよ、IATFが求める審査員には程遠いものであり、結果的に組織側が迷惑する審査でした。
    こういう経験をしていると、応援団さんの言う「なろうという審査員にはいろんな事情がある」は、組織側にとっては言い訳にしか聞こえません。仮にも審査員になろうというわけですから、TOMOさんのような何かを得ようとする態度は持ってもらわないと。
    それに、TS2の意図を知る方法は用意されています。IATFが、彼らの意図を伝えようとプレクサス方式を採用したんですから、審査員試験を受ける前に他の様々なコースを経験し、知ることだって可能なわけです。
    なぜ、受けない? なぜ、得ようとしない? 仮にも顧客に成り代わって組織のQA+Dを審査しようってわけでしょう? 言い訳している場合じゃありません。組織が迷惑します。
    言いたいのはそういうことです。
    ではでは

    • GAI
    • 2008年 9月 24日

    PC復活作業が夜中までかかって、まだままならないまま応援団さんの投稿を読み、そのまま夜中に一気に書いちゃいましたが、時間をおいて、こうして画面に表示されたものを見ると、私は言いたいことを好き勝手に言ってますね(支離滅裂状態)。
    元のTOMOさんの投稿をも無視した先の私の投稿、正直言って価値なしかも、そんな気がしてきました。
    中尾様、このブログの意図から反れているようでしたら、削除していただいてもかまいません。

    • 中尾優作
    • 2008年 9月 24日

    ブログの意図に合致しておりますので、GAIさんのコメントは削除しません(笑)。

    • TOMOさんの応援団
    • 2008年 9月 25日

    GAIさんが、TOMOさんの応援団であることは、彼女も、私も充分理解しています。ですので、TOMOさんが非難されたと感じて投稿したわけではなかったのですが、私の投稿が誤解を招くような内容だったようですね。申し訳ありません。
    歯切れの悪い言い方で申し訳ないのですが、立場上、TS16949審査員試験の話を公開の場でする際に、正体が分かっちゃうような自己紹介ができないことをお察しいただけますでしょうか。
    TOMOさんも同様なもので、お節介にもしゃしゃり出てきてしまった訳です。
    ところで、私が言いたかったのは、審査員候補になるための要件である自動車産業界での実務経験を満たしていても、その実務経験には必ずしもIATFの意図を理解するだけの「何か」があるわけではなさそうだということなんです。TOMOさんも、同じようなことを発表していましたよね。認識が甘かったと。
    GAIさんがおっしゃっているように、トレーニングを受けても、そのことに気付ける人と、気付けない人が当然ながら居ます。気付けない人は、P社の試験であれば、まず合格することはないだろうと思いますが、残念ながら、試験という限られた条件下である以上、そこには限界がありますので、間違って受かってしまう人も居たのではないでしょうか。
    TS2の二者監査対応をしているだろうポジション出身の方でも、自分の仕事のことは説明できたとしても、そこにIATFの意図を絡めた理解をされていなかったり・・・。故に、自分の仕事としてコアツールの使い方を知っていても、審査という視点でコアツールを見て、「顧客との契約を達成する」ための道具の一つとして、「有効に機能しているか?」を見ることができない。
    例えば、審査先の業種の特性から、必ずしもトレーニンングで教わった状態になくとも、充分に「道具として機能していて、顧客との契約を達成できている」のに、自分が習ったのと違うからと、不適合を指摘してしまうとか・・・。IATFが第三者審査に期待している部分は、組織の「品質保証のためのマネジメントシステム」が、「顧客との契約達成」に向けて、“有効に機能しているか?”“将来に向けて懸念はないか?”という観点で、しっかりと審査で評価してほしいわけですね。だから、あれだけの工数を掛けている。ここが正しく捉えられていれば、実質的な問題が何もないのに、基本の形と違うから不適合なんてことは、起きないはずなんですね。
    そういう思い(実務経験が有っても、IATFの意図が理解できていなければダメ)で、実務経験の話を出したんですが、言葉足らずで誤解を招いてしまったようです。申し訳ありませんでした。

    • GAI
    • 2008年 9月 26日

    応援団さん、趣旨は理解いたしました。
    導入部分の内容は問いません。
    審査員の条件である実務経験は、確かに自動車サプライチェーンで品質に関する仕事をしていただけでも満たせるところはありますから、「いわゆるIATFの意図するもの」に何も触れていなくても条件は満たす、となることはありえますね。ただ、「いわゆるIATFの意図するもの」=「欧米自動車産業の常識」みたいな常識?になっていて、そうではないところにいると「それは常識ではない」ことでも、彼らにとっては「やって当然じゃん」みたいなところもありますよね。特に日本には日本の文化なりの品質管理があり、それを理解できない彼らは日本に学んで規格にし、欧米での常識に要求事項として付け足し求める、というようなところもありますよね。これに対し「認識が甘かった」といってよいのか否かは疑問なところもありますが、まあ、そうとも言えるという(どっちや?)。
    まあ、その一方で、日本の商慣習がしでかした「事故米」事件などもありまして、サプライヤの出してきた紙(社長印が押してある)を信じきったがための出来事。こういったものは欧米の常識からすると品質保証を放棄しているとも見えるようです。特にTS2には、サプライヤの開発とか監視の要求があって,その意図の一つには「自分の目で見てこい」=「相手の太鼓判だけで信用するな」もあるようで、TS2一派からすると当たり前に防げた信じられない事件という見方になるようです。
    ただ、Plexus方式のトレーニングに対し、「気付ける/気付けない」という表現はちょっと違うような気がします。むしろ「気付く/気付こうとしない」ではないかと。あのセミナーでは「そこでディスカッションして、何か一つでも学び取ってやろう」という受講者を求めているような気がします。なので「教えて」状態では何も得られない。私は個人的に、あそこは「生いそいそのできる場」ととらえています。いそいそフォーラムでも、他の方々の投稿を読んでいるだけで何らかの得るものはあるでしょう。しかし自ら投稿し、必要に応じ闘論してこそ考え方が学べ幅も広がる点では同じ場だと思っています。なので、「気付ける/気付けない」じゃあダメかもって思うわけです。「気付く(気付こうとする)人」と「気付かない(気付こうとしない)人」の間の、何となく受身的な受講者の中に「たまたま気付けた/気付けなかった」人が存在しているだけのようなイメージです。
    それから、私が例示した二者監査、およびその応対者は、応援団さんの示されたものとレベルが違います。まず、顧客の二者監査の内容はQA+Dに留まらず、QM主体で始まりました。当然ながら会社のMS全体からシックスシグマレベルの内容もあり(もちろんC.S.R要求およびチェックシートにも含まれてます)、それらを部署ごとに聞かれて答えるのではなく、全体として代表者に「説明して示しなさい」でしたから、現場レベルで自分の仕事の説明をするのとはわけが違います。この役を二者監査応対者がほとんど一人で引き受け、私は裏方という役割分担でした。しかも顧客の二者監査員は、TS2審査員試験を受けた方ならよくご存じのあの人でしたから(汗)、TS2を認証した我々に対し、TS2の意図するもの、TS2認証でその顧客が何を求めているかという点を生で経験させられたようなものです(だから参加したかった・・・)。たとえばコアツールにしても監査が終わってみれば、リンケージについてあーだこーだと解釈論を言っていた私よりも、よほど現実に即したリンケージを語っていました。やっぱり「実際の仕事」が全てです。
    それと、もうひとつ気になることが。
    「コアツールの使い方を知っていても・・・」「必ずしもトレーニンングで教わった状態になくとも、充分に道具として機能していて」のあたりですが、具体的にどのような状態のことでしょう?
    PPAPは別物としても、他のコアルールは言わば手法とか技法だけが書いてあって、それを理解しどのように使うかがポイントですよね。しかもPlexusでは「どう使え」なんて一切ありません。あくまで「考え方」しか教えてなく、「手法はマニュアルに書いてあります。考え方を理解し、それをどう適切に使えばよいかを考えて、適切な使い方をしてください」ですから、「コアツールの使い方を知っている」「必ずしもトレーニンングで教わった状態になくとも充分に機能している」なら、それはそれで適切に使えているかもしれない状態が再現されているということじゃないですか? 少なくともコアツールに対するIATFの思い入れは「使いこなし」であって「そこに書いてある通りにやりなさい」ではないですし、そもそもその使い方が如何に適切かの説明責任は組織側にあるんですから、審査員は当然、審査の場でその説明をさせることになるんでしょ?
    「基本の形と違うから不適合」なんてのは、確かにありえないはずです。
    最後に、「実務経験が有っても、IATFの意図が理解できていなければダメ」はそのとおりでしょう。でも、「IATFの意図」に気負いしすぎていませんか?
    文化的な違いから違和感はあっても、あらゆるリスクを考えたら,彼らの描くQMS像はある意味で妥当かも、という気もしないわけでもなかったりして(どっちや その2)。
    そんな特別な状況を求めているわけでもなく、最低限のQA+Dの100%実施とQM’の取組であって、QM’は第三者審査では実施状況の確認,二者監査では次の取引に向けた検証ですから。
    先の二者監査はまさにQM’の監査でした。「TS2認証したというが、なぜ説明できない?」「TS2は契約だ」に始まり、コアツールもマニュアル通りの実施なんかではなく、使いこなしとリンケージが重視されていたと聞いています。さらにはQA+Dにも触れ最終的には数十件の指摘をもらいましたが、その内容は我がままではなく、管理責任者あたりも「これが事実ならよくぞ指摘してくれた」と喜んでいました。しかしこの二者監査員は「これ(QA+D)は私の仕事ではない。私がこんなことをする必要がないようにTS2認証があるのに、審査員はいったい何を審査しているんだ」。これが二者監査での最後の言葉だったようです。
    思えばこの後、某審査機関に対するIAOBの事務所審査/立会審査が厳しくなったような(汗,汗)。

    • 家元
    • 2008年 9月 28日

    GAIさん、GAIさん、ちょっと熱くなっているみたいじゃない。
    いつ乱入しようかと思っていたんですが・・・
    (因みに、私は応援団さんではないですから・・・念のため)
    私にはGAIさんと応援団さん、両者の論点はあまり違っていないような印象を受けているのですが、いかがですか。
    応援団さんは単に「事実」と思われることを述べていて、
    GAIさんは、そんなんじゃ「困る」みたいな論点になっている。
    つまり、一方は事実で一方は価値観といった立場では、議論にならないはずじゃぁないでしょうか。
    議論の息抜きに「家元ネタばなし」を一席。
    日本で行われた第3回目のQS-9000審査員トレーニング。
    講師は、第2回目もやったオーソンウェルズみたいなアメリカ人。
    前の晩に事前打ち合わせをした時に
    「日本の受講者はなぜおとなしい?」・・・
    トレーニング当日の規格解説で
    (受講者は9000の主任審査員だし、QS規格も知っている前提)
    「4.1・・・Any Question?」
    (受講者・・・シーン)
    「OK、4.2・・・Any Question?」
    (受講者・・・シーン)
    「OK、4.3・・・Any Question?」
    (受講者・・・シーン)
    「OK、・・・」
    この辺でさすがの受講者も、質問しないとこいつは何も教えない、と気づいたみたいで、ちらほらと手が上がり始める。
    「受講者・・・項番を戻って質問してもいいか?」
    講師・・・(待ってましたとばかりに)Of Course!
    だって。
    受講者の態度に関する文化的な違いを感じた瞬間でした。
    (この手法はどこかでパクッてみたいと思っていたんですが、結局実現はしていません。)
    「なぜ得ようとしない」とこのときの講師も言いたかったのでしょうね。
    チャンチャン
    では、また。

    • GAI
    • 2008年 9月 30日

    まいどまいど家元さん、やっと出てきましたか(汗)
    最初は家元さんかとも思ったのですが、どうも文体が違うし、そもそも家元さんならこんなことは書かないはず、なんてことで、別のあの方を想定してました(これは論点じゃありません)。
    で、熱くなっているように見えたようですが、そのほうが、どなたでも乱入?しやすいかなという思いもあって、抑えつつ、でも、そうではないような事例を並べてみたり・・・
    でも、そろそろ潮時でしょうね。
    以下に論点?らしきものを示して、この件は終わりにします。
    まず、応援団さんが事実として書かれていることは納得しています。私が言いたいのは、応援団さんが事実として示した内容はあり得るにせよ、それは多くの事実のひとつでしかなく、他にもいろんな事実があるんですよ、ということです。
    さらに応援団さんは、私の示した事実に対しても、ご自身の基準でご自身の示した事実にはめ込んでしまおうと(無意識とは思いますが)されているわけですが、それは明らかに違うということです。
    で、他の事実も知っていただき、固定観念にとらわれずに柔軟に考え反応していただきたいということです。というのも、我々の組織に来るTS2審査員もピンキリですから、この人でよかったという審査員もいれば、明らかに迷惑だと判断する審査員もいました。こういった後者の審査員は積極的に忌避していますが、それすらも迷惑な話ですし、さらには顧客の二者監査でも文句を言われますから本当に迷惑なんです。これだったらISO9001レベルの審査員の方がまだマシなんですよね。
    なのでご自身の経験から事実はどうだと判断されるばかりじゃなく、使える機会は最大使ってうまいTS2審査員になってほしい、ということでした。
    ではでは

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