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CIAJ主催講演 日吉信晴さんの「QMSに磨きをかける」

hiyoshi11.jpg情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)QMS委員会(青柳礼子委員長)主催によるQMS戦略セミナーが11月16日に東京で開催され、同委員会会員約50名が参加した。講師は日吉信晴さん(アムシック・パートナーコンサルタント/審査道無風流・家元)。テーマは『QMSに「磨きをかける」ための目の付けどころ ーQMSの「望まれる成果」とは何か プロセスアプローチを極める』。1時間半の講演後、30分間のフリートークが行われた。講演の骨子は下記の通り写真:日吉信晴さん)

なぜ「役に立たない」って思っているのか
QMS が役に立たないのか? 役に立たないなら、やめればいいのだが、もしかすると組織側に役に立たせる能力がないのかもしれない? そうなると、やめるにやめられないだろう。一方、 QMSが役に立っているのか、立っていないのか、分からないのかもしれない。「分からない人、手を挙げてください!」(会場に問いかけたが、誰も手を挙げ ない)。「分からない」っていうのは最悪の状態だが、どうもそういう人はいないようだ。ということは、みんな確信をもって「役に立たない」と思っていると いうことだろう。では、なぜ役に立たないのか? どうすれば役に立つのか? そこを考えていこう。

そもそもQMSを分かっているのか
そ もそもQMSとは何か? みなさんはこの問いにきちん答えられるだろうか? これに答えることができないと、どこに目を向けていいのかよく分からなくなってしまう。ISO規格に書かれていることを私になりにまとめると、QMSとは 「方針・目標を決める、その目標を達成する、ための5W1H(誰、いつ、なに、どのよう、どこ、なぜ)」のことだ。

どういった「結果」に至れば、役に立ったと言えるのか
ダ イエットの例で考えてみよう。「3カ月で体重が5kg減った」という結果は、たとえば「毎日昼食はざるそば一杯にした」とか、「毎朝体重を測り、グラフに つけた」とかいったことが要因となっている。この両者の関係が因果関係が重要なのだ。冒頭、「QMSは役に立つのか?」という問題を提示したが、実際に昼 食をざるそば一杯にし、毎朝グラフをつけることによって、3カ月後に体重が5kg減ったのなら、このシステムは役に立ったのである。減らなかったら、役に 立っていないか、あるいは別のやり方が必要なのかもしれない。QMSも同様である。どういった結果に至たれば役に立ったと言えるのか、その明確な答えを、 まず自分自身が持っていなければならない。それを持っていなければ、そもそもQMSが役に立ったか否かが分からないのである。

ダイエットの要因と結果
最 近は「有効性」のオンパレードだ。やたら「有効性」という言葉を使って議論が行われているが、そもそも「有効性」とは何か。ISO 9000の3.2.1では「計画した活動が実施され、計画した結果が達成された程度」のことだと言っている。これを先ほどのダイエットの話に当てはめてみ ると、次のようになる。
計画された活動(要因:昼食はざるそば一杯で我慢する)が実施され、
計画された結果(結果:3カ月で体重を5kg減らす)が達成された程度

あなたは「計画された結果」を持っているか
ポ イントは「計画された結果を持っているか?」だ。例えば、マネジメントレビューを年1回やっている組織がある。これに対して、「どうして、それをやるの か?」と問うと、「審査に通るためだ」という回答が帰ってきたとする。この組織がISO 9001に対して、「入札の際に認証が必要なので、認証さえ取れればいい」という「結果」を求めているなら、審査のためにマネジメントレビューをやること で、計画された結果が達成できているのだから、なんの問題もない。だが、「入札の際に認証が必要なので、認証さえ取れればいい」という「結果」を求めてい る組織が、「ISO 9001をやっているのに、クレームが減らないぞ。うちのQMSは役立ってないぞ」と言うのは、おかしい。なぜなら、計画された結果に、そんなことは書い ていない。計画された結果は「入札できること」であって、「クレームを減らすこと」ではないからだ。

「適合」であっても「有効」でないと意味がない
こ こで、有効性と適合・不適合の関係を整理しておこう。決めた通りに動いていれば「適合」、決めた通りに動いていなければ「不適合」だ。つまり、適合・不適 合は1か0かの世界。しかし、有効性というのは、成果の達成度合いだから、達成目標に近いとか遠いとか、段階的に示されるものだ。組織にとっては、たとえ 決めた通りに動いていても、つまり「適合」していても、狙った成果の達成度合いが低ければ、あまり意味がない。ここでも、重要なことは、「成果」をきちん と設定できているかだ。逆に、「不適合」であっても、成果が達成できる場合がある。例えば、不適合なことをやっていても、最後はきちんと悪い奴をやっつけ て成果を出してるダーティーハリーとか(笑)。

考えるべき出発点は「結果」である
今 回のテーマの中に「磨きをかける」を入れたが、この意味は、今までやっていたことを「変える」ことだ。例えばこれまでは、「内部監査をやる時は、この チェックリストを使え」と言われていたとする。自分がそのチェックリストを使った形式的な監査に疑問を持っているなら、「そのチェックリストを使うのをや めよう」と言えないだろうか。重要なのは、何か変えるための方策を考え、実施することだ。ここでも、考えるべき出発点は「結果」である。内部監査の結果、 どういうことが起こらなければならないのか。その結果を得るためには、どういうやり方をすべきなのだろうか。その結果を得るために、チェックリストが必要 であるなら、そのチェックリストは使っても問題ないだろう。しかし、その結果達成のために不要であるなら、チェックリストの使用はやめるべきだろう。

「結果」を考えていないのは世界中どこも同じ
結 果を得るために、どのようなことをするべきを考えなければならないのに、なかなか現実はそれができなくて、何か仕方なくISO 9001をやっている。これは何も日本だけの話ではなくて、世界中で起きている状況だ。だから、ISO 9001の2008年版では序文に「望まれる成果」という言葉をわざわざ入れたのだろう。組織内において「望まれる成果」を生み出すために、プロセスを明 確にし、その相互関係を把握し、運営管理することと併せて、一連のプロセスをシステムとして適用することが「プロセスアプローチ」である。

「望まれる成果」を得るためにプロセスを区切る
こ こで「プロセス」という言葉が出てきたが、そもそもプロセスとは何か。なんらかの動作は、すべてプロセスである。例えば、「歯を磨く」「髪をとかす」と いったこともプロセスだし、この両方を括って「身支度をする」という、より大きな区切りのプロセスもある。だが、重要なことは、先に区切りがあるのではな い、ということだ。例えば、顧客からクレームが出た時に、そもそも顧客の要求をきちんと把握できていたのかという点に焦点を当てるなら、まず「要求把握」 という活動のプロセスで区切ることが大事である。「望まれる成果」を得るための活動をプロセスで区切って、コントロールすることがプロセスアプローチなの である。

成果と品質目標
ここで「成果」と「品質目標」について考えてみよう。ISO 9001では、品質目標は必ずしも定量的である必要はなく、定性的でもよい。定性的な品質目標例としては、「全員の品質意識の向上」などがある。ただ、規 模と複雑さによっては、定量的な数値目標が必要だ。定性目標を定量目標に展開する手法として使えるのがQFD(品質機能展開)だ。例えば、「良い車を作 る」という定性目標を、「燃費が良い(km/リットル)」「ハンドルが軽い(kg)」といった定量目標に展開していくことができる。

成果と達成手段
成 果を達成するための手段としての5W1Hがはっきりしていることが重要だ。例えば、不良率△△%削減を狙うなら、今までと同じやり方ではダメで、5W1H のどこかを変えなければならない。よく「当社のQMSはマンネリ化している」という声が聞かれるが、そんな場合は成果目標を変えてみることだ。成果目標を 変えると、5W1Hを変えないといけないから、当然刺激が出てきてマンネリ化は起こらない。
また、成果を達成するためには、どこを変えなければい けないのか、そのポイントを間違えないようにしなければならない。例えば、衣服の着用のプロセスで考えてみると、ネクタイが曲がっているのを直す動作は、 ネクタイを締めるプロセスで変えなければならない。ズボンをはくプロセスでは対応できない。どのプロセスで何を変えるのかという、プロセスマトリックスを 作ってみると分かりやすいだろう。

成果と実績評価
成果の達成手段はきちんと実行されたのか、その手段は成果の達成に貢献したのか、をみるのが監査である。最後に2つの監査手法を紹介しよう。
磨きをかけるための目の付けどころとして、「一つ先」を見てみるという方法がある。例えば、「記録を残す」なら、その一つ先のプロセスである「その記録をどのように使うのか」を見る。「顧客満足を分析する」なら、「その分析結果から実際に改善されているのか」を見る。
あ るいは、「一つ前」を見てみるという方法もある。例えば、「品質目標が設定されている」なら、その一つ前のプロセスである「目標はどのような考え方で設定 しているのか」を見る。「デザインレビューに3部門が参画している」なら、「3部門はどのように決めているのか」を見るという具合。▼

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コメント

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  • コメント (2)

    • BAN
    • 2009年 11月 18日

    家元のセミナー直接お聞きしてみたかったです。
    QMSのマンネリのくだり等は、ブログを拝見しながら頷いてました(笑)

    • 審査道 無風流 家元
    • 2009年 11月 22日

    中尾さん、
    ブログ掲載ありがとうございます。
    いつも思うのですが・・・
    「手練れライター」の手にかかると、
    何か自分が「すごいこと」をやったような気がしますね。
    後は、受講者の皆さんが「動ける」ようにやれたか、で
    この検証にはもう少し時間が必要です。

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