ファシリテーション

ISOファシリテーションの現場を取材

ある会社での「QMSを活用するための戦略目標会議」を取材する機会を得ました。階層で言えば、会社の役員、営業所長が参加する経営会議に相当します。

会議は、社長さんの決意表明でスタートしました。
「ISO 9001を認証取得したが、うまく回っているだろうかという問いかけを自分自身にしてみると、ノーだった。QMSが仕事とは別なところにある。QMSを、私たちの仕事をもっとやりやすくするために、もっと生かしていきたい。そのために本日、役員の方々に集まっていただいた。今日の最終的なゴールは、『我が社の重点課題は何か』を、みなさんと一緒に見ることができ、今後はこれをベースに取り組んでいこうとみなさんに思っていただけることだ」

yamagami22.jpgこのあとの進行はファシリテーターにバトンタッチです。ファシリテーターは、株式会社イノベイション代表取締役の山上裕司さんです。「さあ、元気に話し合いを始めましょう! 私の役目は支援役で、主人公は皆さんです」という挨拶から、会議はスタートしました。(写真は山上裕司さん)

この会議は、事前に課長職以上の方々全員に、「当社が解決すべき問題は何か」「それが問題だと思う理由は何か」「その問題を引き起こしている原因は何か」 「原因除去のためにどのような方策が必要か」という4つの質問に対するアンケートに回答してもらい、その集計結果をもとに議論が始まりました。集計結果を 私も見せてもらいましたが、各質問の意図に沿って冷静に書いておられる人もいれば、自分の日頃の思いや不満を感情的に書いておられる人もいます。これを元 にどうやって話し合いをするのだろうと興味津々でした。

山上さんは、アンケートの記述内容から、まず「事実」を抽出する作業を参加者に求めました。書いておられる方の意見や信条や解決策ではなく、「確かにこれ は会社で起こっている事実だな」とみんなが納得できるものを挙げていきます。会場のスクリーンにはプロジェクターを使って、マインドマップが映し出され、参加者が挙げていく「事実」を、枝分かれした項目として、どんどん追加していきます。

mindmap.jpgア ンケートには課長職以上の21名全員が回答しています。その21名分すべてについての事実抽出が終わった時、スクリーンの中央には「起きている事実はなに か」という文字が書かれていて、そこから大きな枝から分かれた「組織」「システム」「製品」「人」というカテゴリーが作られ、さらにそこからサブカテゴ リーの枝が作られたあとに、抽出された事実がすべて記述されているという、大きな放射状構造ができあがっていました。これで、今会社で起きている事実を、 1枚の絵で見ることができるようになったわけです。

giron.jpg次 のセッションは、この事実の一覧表から、どの事実とどの事実が連鎖しているかを、みんなで考えるというものでした。事実の連鎖を挙げていく作業を進めてい く中で、ある方が、なぜ社員教育がうまくいかないのか、なぜ人材の育成がうまくできないのかについて、ホワイトボードを使ってループ図を描き始めました。 もともと、マインドマップ上でも、「人」に関する事実が最も項目数が多かったこともあって、じゃあ、「仕事をきちんとやるにはどういう順番でやっていけば いいか、循環図を書いてみよう」ということになりました。

その前に、今までは社内の問題を中心に扱っていたので、社外の、つまり会社を取り巻く顧客、技術、市場はどういう状況になっているのかについても話し合いを行いました。

最後のセッションは、みんなで議論しながら循環図を作ることです(「システム思考」と一般的に呼ばれている技法です)。「仕事がうまく行えないのは、仕事 の定義がきちんとできていないからではないか?」というところから出発して、「仕事の定義」→仕事を行うための「組織構造」→「必要な力量項目」→「力量 の確保」→「仕事の質」という順番にループが描かれていきます。このループには、外からの要素も描かれます。例えば、「力量の確保」には、「世代交代」と いう要素が加わり、「仕事の質」には「システム化」「協力企業の質」といった要素が入ります。このループは最終的には「計画」にたどり着き、「計画」の矢 印は「仕事の定義」につながって循環します。「計画」には、先ほど話し合った、会社を取り巻く「顧客・技術・市場の変化」が外からの要素として結びついて います。

junnkannzu.jpgこ の循環図の完成によって、自分たちの会社で起こっている事実をもとに、会社がどのような連鎖で回っているかを一望することができるようになりました。最後 に山上さんは2つのやるべきことを述べます。「真っ先にやるべき課題はどれか?」「誰が推進してやるのか?」を決めて欲しいと。「誰が推進してやるのか」 については、社長一任となりました。「誰が推進するか、そのメンバーは、来週月曜日に発表しますから、みなさん、週末はドキドキしてください(笑)」との 社長のコメントがありました。その推進メンバーが、「真っ先にやるべき課題」を決めることになるでしょう。(この会議終了後に参加者全員が循環図に署名をしました。写真は最初に循環図に署名する社長さん)

まる1日会議に参加させていただきましたが、これはISO効果が出ていないと感じている組織にはぜひ必要な作業だと確信した次第です。この取材記事は来年のアイソス4月号(2010年3月10日発行)に掲載する予定です。

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