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第2回事業競争力WG傍聴記(3) ブリヂストンの環境への取り組み

本日は、第2回事業競争力WGの「傍聴記(3)」。今回紹介するのは、「環境マネジメントシステムを基盤としたブリヂストンの環境への取り組み」と題し、ブリヂストン環境推進本部フェローの平田靖氏(写真)が行った発表の概要を報告する。
3.「環境マネジメントシステムを基盤としたブリヂストンの環境への取り組み」(平田靖・ブリヂストン環境推進本部フェロー)

hirata_yasushi.jpgブリヂストンの会社概要と環境活動への取り組み
ブリヂストンは今年で創業82年。連結売上高約3兆円、連結従業員数約14万人。世界の生産開発拠点は25カ国、193個所。日本でもかなりグローバル化が進んだ企業だと思う。当社の環境活動については、公害防止と顧客対応を主軸とした時代を「第1フェーズ」、事業と環境の両立を主軸とした時代を「第2フェーズ」(現在)としている。

 

認証取得の目的化と工場だけでの対応の限界
第1フェーズでは、生産拠点での対応を優先しており、1997年5月の東京工場を皮切りにISO 14001の認証取得を開始し、2001年12月には国内全15工場(当時)でISO 14001の認証取得を完了した。このような活動の効果については、環境活動の標準化が進むことで、環境リスクが軽減されるとともに、認証工場からOEM への製品出荷が可能になった。当社のOEMは自動車メーカーが大半である。ただし、このような活動を通じて、限界と課題が見てきた。1つは、認証取得が目 的化し、審査を受けるための活動になりがちだった。さらにもっと大きな問題として、全社活動と事業所活動の連携が不十分だったこと。工場だけで対応できる 範囲には限界があり、企画・開発等の活動がISO 14001の範囲外であったので、工場だけの対応では会社全体の環境問題に十分対応できていなかった。こういった課題が明確になり、生産拠点中心の環境リ スク・顧客対応から、会社全体を対象とした環境活動への転換が必要であることを痛感した。

環境活動を生産拠点中心から会社全体に転換
そこで、従来の生産拠点中心のEMS活動を、本部機能+全工場による統合EMS活動に変更した。環境委員会の委員長はCEOであり、経営陣及び各部門の トップクラスが全員集まって会議をして決めることになったので、ここで決められたことは全工場・全部門に降りてくる。このように、生産拠点中心の環境活動 から、会社全体を対象とした環境活動へと転換をはかった。

環境活動の「ありたい姿」
この図(下図) が現在の環境活動の「ありたい姿」である。ISO認証取得によるグループでの環境マネジメント体制の構築を底辺として、その上の当社独自の人材育成・環境 リスクの最小化を推進し、さらにその上に共通の環境指針に則った目標を設定して、それぞれの地域で推進していくというものである。

bridgestone_ems.jpg

世界の生産拠点におけるISO取得率は98.2%
ISO 14001の認証取得活動は1996年からスタートしており、日・米・欧州・中国では現在100%取得している。ただ、工場を新規に作ったり、企業を買収 したり、売却したりといった活動が世界各地で常に行われているので、世界でISO認証の取得率100%というのは、物理的にむずかしい。

グループでの人材育成
当社では、ISOによる環境マネジメント体制をベースに独自の活動を行っている。そのうちの1つが人材育成である。グループ全体で階層別研修を実施してい る。階層は、経営層、工場長、部長、ユニットリーダー/スタッフ、主任、職長、技能職となっており、それぞれ環境について知っておくべき内容が異なるの で、階層別に研修を行っている。特に重要なのは経営層で、日本から各海外子会社に経営陣が送り込まれるが、その海外赴任の前には必ず環境研修を受けること になっている。そこできちんと環境の重要性を認識して、現地の経営に携わってもらうことにしている。

環境リスクの最小化
もう1つの独自の活動が、環境リスクの最小化である。生産活動による環境への影響評価を実施し、それを見える化をしている。例えば、工場周辺と工場内と で、生物多様性のポテンシャルを調査・評価し、低い場合は工場の緑化などに努めるといったことが一目で分かるようになっている。この結果はホームページに も掲載している。また、各拠点で環境リスクを自分たちでチェックできるようになっているし、さらにそれを専門機能、つまり環境であれば我々、品質であれば 品質部門が監査をしてチェックする、という形でのPDCAを回している。

グループでの目標設定・推進
こういった独自活動の上に、共通の目標を設定して、全社で取り組んでいる。まず、あるべき姿を描き、それに対してみんなで目標に向かって推進活動を行って いる。ブリヂストンとしては、環境宣言を行い、未来のすべての子ども達が安心して暮らすための持続可能な社会を実現すべく、「自然と共生(生物多様性)」 「資源を大切に使う(資源循環)」「CO2を減らす(低炭素)」という3項目を挙げている。それらに対して2050年の長期目標、2020年の中期目標をそれぞれ設定し、全社を挙げて推進している。

CO2削減目標
前述した3項目の1つである「CO2削減目標」については、製品のライフサイクル各段階で実施するとしている。まず、モノづくり段階でCO2を2020年までに売上高当たり35%低減(2005年比)する。さらに、製品使用時として、タイヤの転がり抵抗を2020年までに25%低減(2005年比)し、モノづくりの過程で排出される以上のCO2削減を目指す。ここでいうモノづくりの過程というのは、自社の工場内で発生するCO2だけでなく、原材料が作られる過程で発生するCO2から、最後に廃棄される時に発生するCO2まで、すべてを含めている。

世界でCO2削減する時の苦労
私自身としては、ここに一番苦労している。というのも、CO2と いうのは、生産の方には理解してもらえやすいのだが、原材料を調達している方とか、輸送に関係する方とかは、なかなかピンと来ないところがあるからだ。さらに、国内だけならまだしも、それを世界で理解してもらうのは大変なことである。例えば、基準年である2005年という過去に遡ったデータをきちんと集め るには、ほとんどすべての部署の協力が必要なので、生産以外の人たちを説得するのに非常に時間がかかった。また、データが揃ったとしても、今度は目標設定 をする時、「そんな目標を本当に達成できるのか?」といった声が出て、それぞれの部門の責任者の賛同がなかなか得られず非常に苦労し、何度も何度も説明す る中で理解してもらった経緯がある。目標を立てたことも重要だったのだが、むしろこういう過程の中で、「環境問題が自分たちの部署にとっても関係があるのだ、自分たちの事業競争力にも役に立つのだ」という理解を現場で得られたことが、一番の成果だったと思っている。

事業競争力向上につながった事例:低燃費タイヤ
では、そういった取り組みが、事業競争力向上にどのような貢献をしたかという事例を2つ挙げたい。1つは、低燃費タイヤの事例である。先ほどCO2削 減に一番効果があるのは、タイヤの転がり抵抗を下げることだと述べた。ただ、単純に転がり抵抗を小さくすることは、濡れた路面での制動力(タイヤの止まりやすさ)を決定するウェットグリップ性能の低下につながる。この相反する要素を両立させるため、長年研究を重ねた。そしてついに、転がり抵抗を低減しなが らも、高いウェットグリップ性能を発揮するタイヤを完成させ、転がり抵抗(低燃費性能):AAA、ウェットグリップ性能:aという最高グレードで両立させ た。この低燃費タイヤは、昨年(2011年)から発売している。

事業競争力向上に向けた施策事例:ソリューションビジネス
もう1つの事例は、ソリューションビジネスである。当社では「エコバリューパック」と呼んでいるもので、タイヤが古くなった時に、タイヤを新品と買い換え るのではなく、タイヤの溝の部分だけを張り替える「リトレッドタイヤ製造方式」を提供するとともに、タイヤ全体のメンテナンスを取り入れたソリューション ビジネスを展開している。リトレッドタイヤの場合、必要な原材料(石油資源)が従来の3分の1で済むし、タイヤユーザーにとってもコストメリットがある。

グローバル展開においてISOという共通言語が役に立った
ISOに取り組んだからといって、直接事業競争力に結びつくとは考えていない。ISOを基盤に会社独自の活動及びありたい姿の目標を掲げる中、それに向 かって進む過程で事業競争力が出てくると考えている。特に、当社はグローバルな会社であるので、ISOという共通言語が役に立っている。環境1つ取ってみ ても、それぞれの国によって価値観が違うので、環境に対する考え方が国によって異なる。そのため、それをどう会社として統一していくかが課題になる。そん な時、ISOは共通言語として非常に役に立つ。ISOをベースに、まずやるべきことを決め、その上で、ブリヂストンとしてどうあるべきかを決め、それぞれ の地域に合ったやり方を決めていった。ISOは、世界共通の基盤になったということで、当社としては非常に役に立ったと考えている。▼

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