日本科学技術連盟

プロセスアプローチに関する3つの問題

あるISO推進者の会合で、QMSに関する議論が行われました。その会合では事前に会員からQMS活動に関する疑問点について意見を求め、その集計結果も発表されたのですが、その中で「プロセスアプローチ」について、次の3つの問題が挙げられました。

1. 組織でプロセスをどのようにセットアップすればいいのか? 迷っている。
2. 実業務組織と認証審査用に用意されたプロセスが一致していない(インプット・アウトプットなど不整合)。
3. 現状の組織運用で仕事が進められているので、プロセスという用語はマッチせず審査用と考えている。

私もその会合に参加していたのですが、この3つの問題点を見て、特に1番目が引っか かりました。組織は仕事をしているわけですから、当然すでにプロセスがセットアップされていて、動いていると思うのです。なので、「組織でプロセスをどの ようにセットアップすればいいのか?」と悩むというのは、たぶん、なにか「ISO独自のプロセス」を想定しておられるのではないかと。

そういう「ISO独自のプロセス」を想定してしまうと、当然そのプロセスによる仕組みは、普段の実務のプロセスと乖離してしまうわけで、2番目の問題である「実業務組織と認証審査用に用意されたプロセスが一致していない」ことになるでしょう。

だったら「ISO独自のプロセス」は審査用のプロセスと考えればよいということになり、3番目の問題である「現状の組織運用で仕事が進められているので、プロセスという用語はマッチせず審査用と考えている」に行き着くのでは。

この会合である方が「うちでは『プロセス』という言葉は使わず、『工程』と言っている。ISO用語は一切使っていない」と発言されました。「単に表現を変 えただけではないか」と思ってはいけないと思います。ISO事務局が社内の人間に「このプロセスをどうセットアップすればいいのか悩んでるんだが・・・」 と言ったらみんな引いてしまうでしょうが、「この工程をどう段取りすればいいのか悩んでるんだ」と言えば、「そこはこうすればいいんじゃない?」と相手も 何らかの反応を見せてくれる可能性があると思います。だって、相手に理解できる言葉で事務局の人がしゃべっているから。

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コメント

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  • コメント (7)

    • イグチ
    • 2009年 11月 06日

    はじめまして。元アイソス定期購読者(今は不定期購読者)です。
    今は新規の定期購読など会社に言い出せる事業環境にありませんが、ここのところの特集に興味を引かれて、都会の大型書店に出向いては実際に中身を確かめた上で単発で購入しています。つい特集に目が行きますが、連載記事も面白く、そちら目当てで定期購読をということなのでしょうが、連載記事ごとにまとめたPDFの販売があればなあと思ってみたり。
    プロセスアプローチについてですが、製造業の当社の場合、製造プロセスはそのまんま製造工程のことですとの説明ですんなりと納得してもらえたのですが、独立した職能別組織(いわゆる「購買部」)を持たない購買プロセスなどは、正直今も「プロセスアプローチ」できていません。加工外注はこっち、検査外注はあっち、資材購買はそっち、メインとなる金属材料だけはむこう、といった具合に担当部署がバラバラで、まさにプロセスアプローチが求められるところなのですが、見える形の組織が無い状態での統括的な管理は難しい状況です。
    いわんや、教育訓練や是正処置、計測器管理、内部監査、マネジメントレビューなどの支援業務を独立したプロセスとして取り上げてアプローチするとなると、現存の組織とは別に(兼任で)責任・権限を定め、目標設定し、PDCAを回すことになり、言うは易し行うは難しかと。
    当工場の9001取得は2000年版発行直後からスタートしたのですが、某MLでの学習効果もあって「現体制ベースでの認証取得」をモットーとしたため、その時の「キープロセスは何ですか」「プロセスの範囲はどこからどこまでですか」「プロセスオーナーはどなたですか」という過剰反応な審査は迷惑でした。今になってようやく「そうあるべきだな」とも思いますが、組織運営に対する意識(固定観念?)や組織構造にも関わる問題なため、実現は今もって難しいと感じます。
    手を付けるならまずは、内部監査やマネジメントレビューなどの現業部門が担当でないところからかなと、夢想したりもしていますが。

    • 中尾優作
    • 2009年 11月 06日

    イグチさんへ
    こんにちは。
    <加工外注はこっち、検査外注はあっち、資材購買はそっち、メインとなる金属材料だけはむこう、といった具合に担当部署がバラバラで、まさにプロセスアプローチが求められるところなのですが、見える形の組織が無い状態での統括的な管理は難しい状況です。
    この記事の会合の席で、某MLでもよく登場されるTOMOさんが「組織のプロセスを表現した図はきれいにできているものほど役に立たないことが多い。プロセス図は、いろんな所からいろんな要素が入っているので、ぐちゃぐちゃになるのは当然のことだ」と発言され、会場の中でもうなづいている方がいました。私もよく分からないなりに、「そう、そう、言えてる」なんて思いました。バラバラでぐちゃぐちゃなのが当然なのかも。
    <「キープロセスは何ですか」
    この質問だけで、審査機関がどこかって分かってしまいますねえ(笑)。今でも「キープロセス」って言葉を審査で使ってますか?

    • イグチ
    • 2009年 11月 07日

    中尾さんへ
    >今でも「キープロセス」って言葉を審査で使ってますか?
    いやあ、さすがに最初のせいぜい2,3年でした。
    今、審査員があえて「プロセス」という言葉を前に出すのは、内部監査のところくらいでしょうか。2,3年前の審査で、部署割の内部監査に対して「本当はプロセスの監査を…」とつぶやかれました。
    一応それ以後、「内部監査報告書」は相変わらず全体のものとは別に部署毎に出しているのですが、監査対象の欄のタイトルを「被監査部署」から「被監査プロセス」に変え、「製造プロセス(製造○課)」と書くようにしました。だから何ってことも無いんですが…。
    実際に第三者審査でも、「購買プロセスの審査」だからといって、一まとめの時間内に関連する部署から購買に関する部分だけを審査するといったことは今までに一度も無く、結局はその部署の購買以外の業務(そちらがメイン)について聞かれていますし。

    • TOMO
    • 2009年 11月 09日

    いつの間にか登場していたTOMOです。
    現行の審査計画は、多くの場合、部門単位で区切った形式を採用しているように感じます、その場合、プロセスアプローチをすべきは、審査員の方ですね。
    中尾さんがおっしゃるように、組織は既に活動していますから、プロセスは既に存在しています。「プロセス=仕事や活動」ゆえにプロセスは、各組織が自組織にとって管理しやすい単位に区切れば良いだけなのですが、プロセスアプローチという言葉が初めて輸入されたときに、黒船来航よろしく、何だかわからないからと色んな人がひな形モデル的なモノを作り出し、それをそっくり真似した結果が今に至っていると思います。
    日本のISO9001は、なぜか、実務と何か違うもの=エクセレントモデル的に考えている方が多いように思います。
    中尾さんがブログの別スレッド紹介している、米戸さんも言っているように、「最低限の要求事項」なのにです。
    「マーク」を最高の勲章と思うか、ようやく話が通じるレベルになったと考えるか、この違いはとても大きいのですが、日本のマークに対する思考は、「お墨付き」から由来しているのかもしれませんね。

    • 中尾優作
    • 2009年 11月 09日

    <実際に第三者審査でも、「購買プロセスの審査」だからといって、一まとめの時間内に関連する部署から購買に関する部分だけを審査するといったことは今までに一度も無く、結局はその部署の購買以外の業務(そちらがメイン)について聞かれていますし。
    「購買プロセスの審査」っていう名目の審査をすることってあるんでしょうか? 例えば、審査員が「今日は午後から購買プロセスをちょっと見させていただきます」と言うとか。
    それと、「一まとめの時間内に関連する部署から購買に関する部分だけを審査するといったことは今までに一度も無く」についてですが、普通はそうなんでしょうね、きっと。審査員は、部署を順番に見ていきながら、購買も見れば、記録も見れば、要員の力量もみるといった具合に、現場を移動しながら全要求事項を同時に関連づけながら見て行っているのではないでしょうか? (もちろんポイントは絞っているでしょうけど)なので、TOMOさんが言っているように、「プロセスアプローチをすべきは審査員の方」でしょうね。「本当はプロセスの監査を・・・」と審査員がつぶやかれたのは印象的です。監査する側がプロセスアプローチをするべきだと言っておられるのでしょう。
    ただ、うちは購買プロセスが弱いので、「購買プロセスをちょっと重点的に見てもらえませんか?」と審査員にお願いすることはできるでしょうね。実際、そういう要望を出している組織があり、そういう要望に応えた審査をしている審査員もいますし。

    • イグチ
    • 2009年 11月 09日

    中尾さんへ
    >「購買プロセスの審査」っていう名目の審査をすることってあるんでしょうか?
    審査計画ではそのようになってます。「製造プロセス(製造○課)」「購買プロセス(総務課)」など。その中身は中尾さんの仰る通り、「全要求事項を同時に関連づけながら見て行って」います。
    TOMOさんの仰るように「各組織が自組織にとって管理しやすい単位に区切」るとすると、大括りの「購買プロセス」ではなく、「金属材料購買プロセス」「加工外注プロセス」と実態にそって細かく割ることになりますが、確かにその方が社内的には分かりやすいですね。今のバラバラの管理がいいのか、もっと統括的な管理の必要は無いのかを検討したうえで、現状の管理がベターであると判断されれば(中立的な提案では間違いなく現状維持になりますが)、そのような記述に改めるよう働きかけようかな。

    • とある事務局の代弁者
    • 2009年 11月 11日

    ISO9001で言うプロセスアプローチって何なんでしょう?
    いろいろ解釈はあるだろうし,「こうやった方が良い」というようなアイデアもあるでしょうけど,
    > 組織は仕事をしているわけですから、当然すでにプロセスがセットアップされていて、動いていると思うのです。
    ですよね。
    ISO9001:2000では私もこの「プロセスアプローチ」なる用語に悩まされましたが,当初の私は,
    「“プロセスアプローチ”なる用語が理由で,認証のためにこれまでの文書を刷新とか,組織形態を“ナンチャラプロセス”で表現し直さなければならないことなどあろうはずがない」
    と割り切りました。この背景には「ISOの(認証の)ために新たな何かをするのは必要最低限にしよう」という,これまでの「ISOのための仕事」の増殖に対する反省もあったからです。
    そうした場合,組織には確かに複数の部署があり,責任と権限,活動などが決められ,しかし多くはこれらが絡み合って業務プロセスが動いているわけで,それらは通常,第二階層文書で定義されているものであり,これまでのものでプロセスアプローチは説明可能なはずだ,という結論に至りました。
    じゃあ,何で
    > なので、「組織でプロセスをどのようにセットアップすればいいのか?」と悩むというのは、たぶん、なにか「ISO独自のプロセス」を想定しておられるのではないかと。
    になるのかということですが,これには審査する側の当初出した「ISO9001:2000認証のためには・・・」と,それに従った組織側の双方に問題があるのではないかと。
    例えば,
     ・組織のプロセスを決めてください。
     ・どうやって,どのレベルまで決めるかは組織の考えることです。
      (うまく決めないと認証上のリスクが高くなりますよ)
     ・組織図は部署単位ではなく,プロセス単位で描いた絵を用意してください。
     ・品質目標は部署ではなく,プロセス毎に設定してください。
     ・その品質目標を監視する「プロセスオーナー」を決めてください
      (部門長じゃないですよ)
     ・プロセスの監視(PDCA)を見なければならない「主要なプロセス」と,
      手順書通りにやっていればプロセスの監視(PDCA)までは不要な
      「ふつうのプロセス」を識別してください。
     ・審査はプロセス単位で,プロセスの監視は「主要なプロセス」で見ます。
     ・品質マニュアルにはプロセスの絵を書いて,そこに「主要なプロセスはどれ」
      と判るようにしてください。
     『でないと,ウチでは審査しません!』
     『ウチで認証したいなら,言う通りにしてください!』
    のような話をする審査会社があり,それに無条件降伏する組織があり,その結果として,
    > 1. 組織でプロセスをどのようにセットアップすればいいのか? 迷っている。
    > 2. 実業務組織と認証審査用に用意されたプロセスが一致していない(インプット・アウトプットなど不整合)。
    てなことになった,のかもしれませんね。
    そして開き直れば,
    > 3. 現状の組織運用で仕事が進められているので、プロセスという用語はマッチせず審査用と考えている。
    に行きつくのでしょう。
    > ISO事務局が社内の人間に「このプロセスをどうセットアップすればいいのか悩んでるんだが・・・」と言ったらみんな引いてしまうでしょうが、「この工程をどう段取りすればいいのか悩んでるんだ」と言えば、「そこはこうすればいいんじゃない?」と相手も何らかの反応を見せてくれる可能性があると思います。
    まじめですね。
    私はそこまでまじめではないので,最近は「実際の業務プロセスについて,現実ベースで書いてください。この段階でISOなんて気にする必要はありません。現実が全て,まずはそれで充分です。要求事項を満たしているか否かは,そのあとで見ればよいし,もし満たしてないと分かれば,その時に直せばよいのですよ」で済ませます(^。^;)
    > だって、相手に理解できる言葉で事務局の人がしゃべっているから。
    だって,その業務プロセスについて一番分かっているのも,どう直せばよいかのベストな答えを知っている(出せる)のも,その業務を運用している方々であり,事務局なんぞじゃありませんから(^^)

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