品質MS

久米均さんのISO観(2)

前回に続いて、1993年11月17日に実施した久米均さんへのインタビュー記事の抜粋を掲載。本稿で久米さんは、日本企業のグローバル化に焦点を当てている。人間的なつながりだけでやってきた日本の経営システムは海外では通用しない。となると、どうしてもISO 9000のような論理的な規格が必要になってくる……

ISOのような論理的な規格でないと
海外では通用しない

質問 ISO 9000規格はすでに世界50数カ国に翻訳され、企業の審査登録も急ピッチで進んでいます。これだけ短期間でグローバルに普及した規格も、ちょっとないのではありませんか。このような現象の要因は何でしょうか。

久米  それは2つあると思います。1つは、品質が非常に重要であることをみんなが分かってきたからです。モノが豊かになってくると、みんな良いモノを欲しがる、 良いモノを作ることができる企業は利益が出る、そこで、品質が非常に重要視されるようになってきた。欧米は日本の発展に対し、その要素の1つに高品質があ ることに注目した。また、ASEANや開発途上国は日本の発展を見て、品質が非常に大事であることを理解するようになった。そういうベースがあって、 ISO 9000シリーズが出てきたのだと思います。それともう1つは、欧州の経済統合です。これが直接の引き金です。日本なんかどちらかというと、欧州に輸出で きなくなると一喝され、仕方なしにやっているわけです。だから日本の企業でも、日本の審査登録機関ではダメで、欧州の審査登録機関の審査を受けないと通用 しないと言っているところもある。これが事実になると非常にまずい。まさにこれは「非関税障壁」になってしまう。これからが第2ラウンドです。国際的な相 互承認をやっていかなければならない。

質問 ISO 9000規格は、日本の企業がとちらかというと苦手な、文書化の作業を要求します。これは日本の経営システムにこれまで欠けていた要素を補うという意味 で、普及を促す要因になるのではないでしょうか。例えば、「終身雇用」の問題。終身雇用ゆえに、人に頼ったシステムになってしまい、その人がいないと誰も その仕事ができない。今、不況ということもあって日本の終身雇用制がぐらついています。いつまでもこの制度を保つことはできないとすれば、日本もそれに対 応して社員の役割と権限を明らかにし、一人一人のやるべき仕事を文書化して、マニュアルに従えば誰でもその仕事ができるようにしておく必要がある。それは ISO 9000規格の領分だと思うのですが。

久米 むしろね、私はもっと重要な問題があると思う。日本人だけの企業と いうのはだんだん減ってくる。日本の企業はグローバルになっていくる。私は、1993年5月にマレーシアのクアラルンプールで開催されたPASCに出席し た時、まる1日、当地の日本企業を見て回ったのです。その時、日本企業の進出の激しさに驚きました。クアラルンプール付近だけで、日本からの進出工場が 1,000近くもあるんです。大手の企業では事業所だけで10カ所以上もあるところがあります。ということは、もうそこでものを作っているんですよ、本当 に。海外で作れるものだけを持って行って、作るのではなくてね。クアラルンプールだけでもそうなんです。他の地域を考えると極めて多くの日本企業が世界中 に進出しているわけです。
つまり、企業自体がグローバルになってきているんですね。すると、人間的なつながりだけでやっていくという、今までの日本的な経営システムでは行き詰まる でしょう。そのためには、ISO 9000シリーズのような論理的な規格できちんとやらないと日本では通用するが海外では通用しなくなる。そういうことを、私はクアラルンプールの日本の工 場を見て実感しました。おっしゃるように、日本全体の雇用形態は変わってくるでしょう。これは経済的な必然性なんでしょうね。しかし私は、本当は、終身雇 用というものは、できれば温存しておいたほうがいいと思っています。

質問 どうしてですか。

久米  やっぱり、仕事をよく知っている人が一生懸命やれば、効率が高いですよ。もちろん、終身雇用でぬるま湯に浸っているということじゃあ、まずいけど。そうで なければ大変効率が良い。しかし、これが温存できるかといえば、むずかしい。ただ、私の知っている欧米の優良企業は終身雇用的ですよ。AT&T 社、ヒューレット・パッカード社、コダック社、デュポン社など、みんなそうです。私の理解では、いい企業というのは終身雇用的ですね。▼

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