日常の気づき

「雑誌のデジタル進化は可能か?」

7月10日、東京ビックサイトで開催された東京国際ブックフェア専門セミナーの1つである「雑誌のデジタル進化は可能か? 〜新しいビジネスモデルの構築〜」を聴講した。講師は日本雑誌協会デジタルコンテンツ推進委員会委員長の大久保徹也氏(集英社雑誌販売部部長)。講演概要は下記の通り。

1997年から下降続ける雑誌業界
雑誌出版の現状は、雑誌販売・雑誌広告共にその売上は1997年をピークに下降を続け、1997年に2兆円だった総売上が2008年には1兆5千億円まで 減少している。この下降現象は、携帯電話・ゲーム機・PCなどを出力機とするメディアのデジタル化の影響が大きいと考えられる。

今後の雑誌デジタル化を予測する角川発言
出版社のデジタル化への取り組みについては、2007年が「デジタル元年」と言われている。この年、出版社独自では「小学館SOOK(2008年9月終了)」「講談社MouRa」、 IT企業との連携では「リプリカ」「グラムメディアジャパン」「ヤフー XBRAND」「MSN マガジンサーチ」などの取り組みが行われた。翌年11月には、日本雑誌協会と国際雑誌連合(FIPP)との共催によるアジア太平 洋デジタル雑誌国際会議が東京で開催されたが、同会議で角川グループホールディングスの角川歴彦会長兼CEO(写真)が、日本における今後の雑誌のデジタル化の方向性を示す重要なスピーチを行った。骨子は次の通り。

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◇角川歴彦氏スピーチ

2011年にはテレビ放送がデジタルに完全移行し、NGN(次世代ネットワーク)が本格化され、雑誌、書籍、映画、音楽、ゲームなどのコンテンツはすべて デジタル化され、ネットを通じて配信されるだろう。その本質は「チープ革命」(ネットを通じて、タダ同然でさまざまな情報やコンテンツが入手できるように なること)だ。

NGNの具体的なイメージは「土管」だ。デジタルマスター化されたさまざまなコンテンツが大容量の高速通信網という「土管」を通って、NGN対応のメディア、すなわちテレビ、携帯電話、PC、ゲーム機などに配信される。

このような環境の元で必要とされるのは、「新たな成長モデルの創出」と「イノベーション」だ。具体的には雑誌や書籍などのコンテンツのデジタル化とデータ ベース化を進めると共に、それに対応した顧客データベースも構築しなければならない。また、新しい高度出版人材(Wikiリテラシー)の育成も重要であ る。

このようなプラットフォーム作りには、出版業界を挙げて取り組まなければならない。その上で、編集や営業で競争すればいいことだ。▼

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広告モデルの限界
とにかく、これまで出版社が実施してきたネットを使った取り組みは、ほとんどが広告モデルだ。コンテンツではお金が取れていない。リーマン・ショック (2008年9月)以来、欧米でもネットによる広告ビジネスは大不況に陥っているし、日本でも広告モデルだけでは限界である。

雑協がデジタル・プラットフォーム事業開始
そこで、この点を何とか打開すべく、2009年1月に日本雑誌協会の常設委員会として「デジタルコンテンツ推進委員会」が発足、翌月には総務省による ICT利活用ルール整備促進事業に応募して採用された。これから入札段階に入るが、入札が決まれば、政府予算の支援で「雑誌コンテンツのデジタル・プラッ トフォーム」整備・促進事業を開始することになる。

3つの課題「著作権・フォーマット・商売」
この事業で実施したい雑誌コンテンツデジタル化には、3つの課題がある。第一に著作権事情をクリアすること(統一契約書の作成、業界ルールの策定など)、 第二にデータのフォーマット(PDFやXMLなど)を統一し、デバイスフリーの中間フォーマットを作成し、それをデータベース化すること、第三にデータ化 したコンテンツをどのように商売にするか(少額課金制度、専用デバイスの作成、国際化への対応など)。

キンドル上陸前に!
特に、「アマゾン キンドル」(電子ブックリーダー)が日本に上陸する前に、何とか専用デバイスを作りたいと考えている。

コンソーシアムで実証実験
総務省の予算が取れるか取れないかに関わらず、このビジネスモデル検討のために8月1日、「雑誌コンテンツ デジタル推進コンソーシアム」を設立する。ここで2年間の実証実験を行う予定だ。皆さんもぜひ参加いただきたい(ただし、参加できるのは日本雑誌協会会員のみ)。

求む、天才!
デジタルコンテンツ推進委員会の仕事は、この新しいビジネスモデルを創造するためのべース作りまでだ。そのあとの、デジタルコンテンツの面白い見せ方は、編集者・クリエーター・プロデューサーのアイデアと力の見せ所になる。求む、天才!(了)

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