日常の気づき

自分に染みついているもの

私の町には市民用に無料で開放されている卓球場があります。そこへ中学生の息子と一緒に行った時のことです。卓球場に入ると、卓球台の後に高校生らしき男の子たちが8人ぐらいベンチに腰掛けていました。彼らは卓球はせず、暇そうにデレッとすわったままおしゃべりをしています。ボールが卓球台の後ろに飛んだ時など、その子たちの足下に来るので、プレーの邪魔になっていましたが、仕方なく私たちは卓球を始めました。

その集団は、息子の背後にすわっていました。息子がラケットを空振りし、ボールがその集団のある子の足下に飛んだのです。するとその子は、ボールを掴んで、思いっきり遠くへ放り投げたのです。

息子があわてて、遠くのほうまで球を取りに走り始めた時、私は「どうしてそんなことをするんだ。きちんと手渡しなさい!」とその子を怒鳴りつけていました。と同時に、咄嗟に大声で怒鳴っている自分自身に驚きました。

怒鳴られた子は、明らかに敵意をむき出しにして、大きな目でこっちをにらんでいます。集団の真ん中にいるリーダーっぽい子がすぐにフォローに出ました。
「おい、おまえ。何かしたのか?」
「いや、ボールを返してあげただけだよ」
「なんだよ! なんにもしてないって、言ってるぞ!」
周囲の子どもたちも加勢に入ります。
「何勝手に切れて、怒鳴ってんだよ」
「ボール取ってもらったら、礼を言うのが筋だろうが」
騒ぎがどんどん大きくなります。
私は私で「ボールはきちんと相手に渡すのが礼儀だろうが」などと、ガラの悪い生活指導の先生のような口調でしゃべっています。自分は普段はおとなしいので、これも我ながら驚きでした。

しばらく、しょーむないやり取りが続きましたが、卓球は1時間の交替制になっていましたので、私は口論を打ち切って退去しました。
卓球場を去る私と息子の背後から、彼らの罵声が飛んできました。
「帰れ、帰れ、もう二度と来るな!」
「あー、これでせいせいするよ」

私は、事務所の受付で卓球終了のサインをしながら、「どうしてスズメバチの巣をつつくようなマネをしたんだろう」と考えていました。従来の私なら、あんな トラブルは避けて、さっさと卓球を途中で切り上げて帰ったはずです。しかも、あんな自分よりも力のありそうな高校生の連中を相手に怒鳴るなんて。

卓球場から自宅へ戻る車の中で、私は思い当たりました。「そうかあ、野球だな」と。私は、あの子がボールをあらぬ方向へ放り投げた瞬間、肉体闘争的にいか に不利かなど何も考えず、即座に注意していました。なぜでしょうか。少年野球でいつも子どもたちを相手に、何かまずいプレーをしたり、問題ある行為をした 時は、即座に注意しているから(実際は怒鳴っているのですが)だと思います。子どもはあとで注意しても効果がありませんから、その場ですぐに注意します。 それを毎週やって身に染みついているので、今回も条件反射的に出てしまったのでしょう。なんとまあ。

で も、この身に染みついた習慣は大切にしたいと思うのです。私が、いくら頭の中で、清いことを考え、教育指導やしつけに関する知識をたくさん知っていたとし ても、日々何らかの行動を習慣化していないと、咄嗟の時には何にもできません。私の今回取った行動は、たぶん教育的には全然ダメでしょう。ですが、そのダ メさ加減は、黙っているよりはマシだったと思います。それに、今回の出来事は私や息子にとってものすごく不愉快でした。たぶん相手の高校生にとっても。だとしても、この出来事は、起こらないよりは、起こったほうがよかったと考えているのです。

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コメント

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  • コメント (4)

  1. 拝読して、つい反射してしまいました。
    私は性格からして、社長と同じ反応をします。
    決して体育会系じゃありませんけど。
    今の日本人は、おとなしい、角を抜かれ、去勢されたようなあんばいです。
    でも、悪を見たときには、断固として行動するということが絶対に大切なことだという価値観がなければ、尊敬は得られないでしょう。
    おとなしい、おとならしく、大人、という言葉に騙されないようにしたいと思います。
    当然ですが、ISOに関しても

    • 中尾優作
    • 2009年 11月 08日

    おばQさんへ
    <私は性格からして、社長と同じ反応をします。
    今回の私の場合は、その場しのぎの肉体的条件反射でしたが、おばQさんの場合は、たぶん確固とした思想的バックボーンの元で行動されていると思いますね。おばQさんのサイトを拝見していると、そんな気がします。

    • 門岡 淳
    • 2009年 11月 12日

    中尾さん,こんにちは。門岡 淳です(^-^)
    私も唯一自転車に乗っているときに車道右側通行の自転車(逆走自転車と呼ばれます)や夜間無灯火の自転車に出くわすと,怒鳴りますね(競技用の自転車に乗ってヘルメットを被っていると声が更に大きくなって・・・)。
    「バッキャロ,自転車は左側走れ!左!。」(品がナイなあ)
    タブン,中尾さんが少年野球の指導をしている時と同じなのでしょう。初めて私と一緒に走っている人はビックリした顔をしますね。いつも一緒の人々は慣れたみたいですが。
    これが私の日常生活にも反映されるか?どうなんでしょう。状況が似ていればツイ?出てしまうかもしれませんね。

    • 中尾優作
    • 2009年 11月 13日

    門岡淳さんへ 同志を得たような気分です(笑)
    門岡さんにとって自転車は身体の一部のようなものでしょうから、自転車がらみのマナー違反は許せない行為なのでしょうねぇ。
    たぶん、日常生活でよく似た状況になれば、無意識に出てしまうかも。

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