読書感想

古典の品質保証

norinagaあなたは古典が読めますか?
私は全然ダメです。

読めないのですが、ある古典については信頼しています。
現代人の中に、その古典の品質を保証してくれる方がいるので、
その仕組みを利用しています。

 

小林秀雄の大作「本居宣長」(写真)。
この本を読んで、
「生きているうちに『古事記伝』は読んでおくべきだ」
と思いました。
で、実際に読み始めると、
本居宣長の文章というのは、クニャラクニャラして、
あまり論理的ではありません。
何が言いたいのか、はっきりしないところがあります。
その上、同じことを何度も言うのです。
「中国のマネばかりしている日本書紀がいかにくだらないか」
ということを1ページに最低1回は言っているのではないか、
と思えるくらい、しつこくおっしゃる。
昔の文章なので、このへんは乗り越えないと
「古典」は読めないのかもしれませんが、
根性がない私は、
「もうたくさんだ!」と思って読むのをやめてしまいました。

河合隼雄の「明恵 夢を生きる」。
明恵上人の「夢記」を読んで、著者は
「日本人で、自分の師と仰ぐ人を見出すことができた」
と語っています。
今で言う「メンター」です。
その体験にあずかりたいと思い、
「夢記」を読み始めたのですが、
夢にしてはあまりにも話ができすぎていますし、
記述されている内容のいったいどこがすごいのか、
自分にはさっぱりです。
やはり華厳経の知識が必要なのかもしれません。

井筒俊彦の「コーランを読む」。
「コーランを読む」は読みましたが、
「コーラン」はまだ読み切れていません。
井筒さんのイスラーム関係の本は、
「イスラーム思想史」「イスラーム生誕」
「イスラーム哲学の原象」「イスラーム文化」など、
すべてが実におもしろいのですが、
肝心の井筒俊彦訳の「コーラン」が、
いまだにおもしろいとは思えないのです。
カーライルは著書「英雄崇拝論」で、
ムハンマドはアラビア砂漠の生んだ偉大な英雄だが、
「コーラン」は何とも退屈でかなわない本だ、
退屈で読み切れるものじゃない、と語っていると、
「コーランを読む」に書かれています。
私はカーライルを知らないのですが、
カーライルだってそう言ってるんだし、と思って、
途中で投げ出しました。
ところが井筒さんのイスラーム関係の本を読むと、
またぞろ「やっぱり、コーランは読まなくちゃ」と思って、
読み始めるのですが、前回同様全然おもしろくなくて
(聖典に対して不謹慎ですが)、投げ出してしまうのです。
その繰り返しで、今に至っています。

10代や20代で「古典」が読めないというのは
仕方ないかもしれませんが、
50を過ぎて、まだ読めないので、
「少しはできる男かと思ったが、
やっぱり徹頭徹尾凡人だったね」と自覚した次第。
ただ、「古事記伝」「夢記」「コーラン」、
いずれも自分には読み切れなくても、
これらの書物は「古典」として信頼できるものだ、
と自分なりに確信しています。
小林秀雄、河合隼雄、井筒俊彦といった人たちが、
彼らの著書の中で、その品質を保証してくれているからです。

品質保証は、取引当初だけ良ければいい、
というものではありませんよね。
これから先も、契約期間があるならその期間内はずっと、
良いことを保証しなくてはならない。

彼らもそうしてくれています。
遙か昔に作られた文書ですが、
発表当時だけ良かったのではなく、
それを現代に引用しても立派に通用することを、
自論の展開の中で証明しているのですから。

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コメント

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  • コメント (2)

    • 鈴木 信吾
    • 2008年 10月 07日

    私は、古典は少しは読めます。
    徒然草は大好物です。
    でも、古事記伝やコーランを読んだことはありません。
    ロシアの古典は大の苦手でした。
    なにせ名前が覚えられない。
    人類の傑作といわれている「カラマーゾフの兄弟」は、
    高校時代に数ページで挫折して以来、
    30年以上放置してありました。
    今世紀になって、新訳版が出たのを機会に、
    一念発起して一気に読んだところ、面白かった。
    書かれずに終わった続編をあれこれ想像するのが
    えも言われず楽しいほどです。
    でも、ドストエフスキーは意地が悪い。
    この小説には、ダンテやゲーテやシラーといった
    私が読んでいない「定番の古典」を下敷きにしているのでした。

    • 中尾優作
    • 2008年 10月 07日

    信吾さんへ
    「徒然草」ですか、いいですね。
    私は高校の時に「源氏物語」にトライしたのですが「須磨」のあたりで挫折しました。
    どうもこれは典型的な挫折らしく、昔から「源氏物語」を読もうとする学生はたいてい「須磨」までで挫折するので「須磨源氏」という言葉までありました。
    ドストエフスキーは私も愛読しています。おっしゃる通り、たくさん人名が出てくるので、人名関係を表すツリー図を作りながら読んでいます。これ、そんなに手間がかからないので、オススメです。

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