SSM

第2回知識構造化シンポ SSMの先行事例発表

100903_SShall.jpg2010年9月3日、日本科学技術連盟主催による「第2回知識構造化シンポジウム」が200名の参加者を迎えて開催された。今回のテーマは「先行各社が明かすSSM実践の考え方とその成果」。SSMを活用したダイキン工業、日産自動車、三菱電機エンジニアリング3社の事例発表と、SSMの概要解説が主な内容である。(SSM:Stress-Strength Modelとは、トラブルの経験・ノウハウを広くトラブル未然防止に活用できるように知識を構造的に表現するモデルのこと)

100903_SSMdaikin.jpg【基調講演:「SSMの推進によるものづくりの再構築」ダイキン工業常務執行役員・岡田慎也さん】
冒頭の基調講演は、ダイキン工業常務執行役員の岡田慎也さん(写真)による事例発表。岡田さんはルームエアコンの生産拠点である滋賀製作所の所長であり、設計分野に25年ほど携わってきたエンジニアである。2006年にSSMに関する田村泰彦さん構造化知識研究所社 長であり、SSMの開発者)の講演を聴いて「キラリと光る魅力」を感じ、それ以来、滋賀製作所内のSSM推進の陣頭指揮をとってきた。同所におけるSSM は、最初は電子設計・構造設計分野で数名の設計者により取り組まれ、それがやがて製造に関わる全部門で活用されるに至る。その活動経緯の実態と成果につい ての岡田さんの発表は、SSMに関心を持っている人やSSM活動を実施中の人にとって、大きな励みと示唆を与えるものだった。セミナーの最後に行われた質 疑応答においても、岡田さんのコメントは質問者に対する熱いエールが感じられる内容だった。

100903_SSmatsusaka.jpg【特別解説:「SSM/構造化知識マネジメントの概要と最新動向」構造化知識研究所執行役員・松坂ユタカさん】
続いて、SSMの開発・導入支援・ツール提供を行っている構造化知識研究所の執行役員である松坂ユタカさん(写真) が、SSMの概要解説と導入・実施のコツについて解説。特に「まずどこからSSMを始めればいいのか」についての提案は、SSM導入を考えている企業には 参考になったのではないだろうか。例えば、不適合事例が社内で活用されていない場合は、SSMで知識を再利用化し、水平展開する。あるいは、FTAや FMEAが形骸化している場合は、SSMの観点で見直し、社内で実際に有効活用できるものにする。さらに、不適合事例すら社内で整備できていない場合は、 まず不適合事例の文書化やFTA作成から始め、その知識をSSMで構造化していく、など。

100903_SSMnissan.jpg【事例講演:「SSMを活用した設計ノウハウの再構築と実務適用」日産自動車パワートレイン品質向上推進グループ・黒川隆之さん】
このあと事例発表が2件。最初の事例は日産自動車パワートレイン開発本部。発表者は、同本部のパワートレイン品質向上推進グループの黒川隆之さん(写真)。 SSMを、ある機能に絞って適用し大きな成果を出している好事例。設計検討の頻度が多く、部品共通性が高い締結・シール機能をSSMの取り組み範囲とし た。SSM知識の構築過程においては、部品固有の名称を書いていては、知識の一般化ができないので、共通名称に変更し、設計者によって異なる書き方も共通 化し、設計ノウハウの一本化をはかった。また、知識の因果関係は複雑に絡み合っているので、SSMのチェックリストを作成する際には、階層表示し、真の原 因から結果系の知識まで確認できるようにした。黒川さん曰く、「導入よりも定着に苦労した」。定着させるためにさまざまな運用ルールを設けている。例え ば、「締結・シール機能の設計変更を行う場合は、SSMチェックリストを使用し、設計手配書に添付すること」などをルール化している。最後に成果について は、締結・シール機能の事象発生件数は、SSM適用開始後はゼロ(担当者の単純ミスはSSMの適用外)だそうである。

100903_SSMmitsubishi.jpg【事例講演:「知識の構造化によるナレッジ活用型設計環境の構築について」三菱電機エンジニアリング品質・業務改革グループ・五十嵐和之さん】
次の事例は三菱電機エンジニアリング。SSMの適用範囲は、同社静岡・和歌山両事業所の構造系設計・電子系設計。発表者は同社技術推進部品質・業務改革グループの五十嵐和之さん(写真)。 この人のプレゼンのおもしろさは、企業のSSM推進者が実際に感じているSSMに対する疑問や不満を単刀直入に述べ、それについて自社ではどのように対応 したかを発表している点だ。カスタマイズ化の好事例と言えるだろう。同社の事例紹介は月刊アイソスに掲載していないので、ここで長めに紹介させていただく。

・事例の背景が見えにくい
確かにSSMでは知識を一般化してしまうので、事例の背景が見えなくなってしまう。(解決策)一般化する前の情報もSSMに記載した。
・関連語の設定が分かりにくい
SSMでは用語を共通化していくので、どの語とどの語が関連しているのかが分からなくなってしまう。(解決策)関連語とその設定情報もSSMに記載した。
・既存のチェックリストから移行しやすくしたい
誰しも自部門の業務形態に則したチェックを行いたいものだ。なので、業務形態の違いをツール側で吸収したい。(解決策)「技術分野ごとの辞書」を縦軸、「業務単位のキーワード」を横軸にとるマトリクスを作成した。
・案件ごとのチェックリストを容易に作成したい
漏れのない(知識の気づきを誘導する)チェックリストを容易に作成したい。(解決策)辞書にチェックリストの雛形を登録した。
・SSMが読めなくてもチェックリストが分かるようにしたい
SSMに慣れていない人でもチェックリストが理解できるようにしたい。(解決策)SSM知識のページに「要約」(SSMにおける因果メカニズムの5要素を1つの分かりやすい文章にしたもの)を掲載した。

100903_SSMtamura.jpg【質疑応答】
シンポジウムの最後は、30分間を使って質疑応答が行われた。コーディネーターは構造化知識研究所の田村さん(写真)、回答者はスピーカーをつとめた岡田さん、松坂さん、黒川さんが担当した。活発なやり取りの中で、特に心を揺さぶられたのが、ある質問に対する岡田さんの次のような回答だった。
「SSMについては、御社の中では、あなたが第一人者だと思うので、そこに自信を持っていただきたい。一番大事な資質は熱意です。これをモノにしてやろう という手応えを感じているなら、みんなの心を動かさないと、みんなのレベルを上げたいという気持ちがないとダメで、そこが一番の資質です。それと、いち早 く仲間を作ることです。私もSSMをやるについては、いろいろなことを言われましたが、ここには何かいいことがあるという熱意さえあれば、しんどくなって も一緒にやる仲間がいますから。あなたは入社2年生でも社内では第一人者です。それでもダメな時は、当社(ダイキン工業・滋賀製作所のこと)にきていただ いて、当社のSSM活動をみてほしい」▼

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