ISO 9000の認証数では世界2位で、いまだ急成長を続けるイタリア。こんな元気な国なら、何かおもしろい書き物を発表しているのではないか。そう思って、Web上で探していると、「ロジスティクス予測モデル」を使ってTS 16949の認証数を2015年まで予測している、イタリア人4名の共同執筆による記事を見つけた。彼らの予測によると、2010〜2012年ごろに認証の成長は止まり、それ以降は横ばい状態が続く。この論文はつい最近発表されたものだ。
“ISO/TS 16949: Analysis of the Diffusion and Current Trends”(PDF)
同じ筆者の他の記事を探すと、昨年11月には欧州のISO 9000動向を調べ、クラスター分析という統計手法を使って、成長期・飽和期・衰退期という3つの類型に欧州各国を分類した記事を発表している。成長期にはイタリア、スペイン、ロシアなどの南欧・東欧諸国(地図上の緑)、飽和期にはドイツやフランスなどの中欧諸国と北欧3国(青)、衰退期にはイギリスやデンマークなど(赤)が該当し、これらを色分けしてマップを作成している。
このマップを見ると、きれいに地域が3分割されている。飛び地がない。例えば、中欧で成長期を示す国は1つもないし、東欧で衰退期を示す国も1つもない。今更ながら欧州は陸続きであり、隣接する国の影響がいかに大きいか、いかに隣接国とともに動かざるを得ないかが分かる。こういうマップを見ると、島国日本は孤立しやすいが、一方で孤軍奮闘の可能性もあるので、ホッとする。国別認証数は、単独にそれだけ見ると単なる数字なのだが、優れた応用統計の専門家の手にかかると、このように、大きな動かしがたい背景が浮かび上がってくる。
“Clustering of European countries based on ISO 9000 certification diffusion”(PDF)
(この2つの論文の紹介記事は、アイソス2011年2月号掲載予定)
面白いものをご紹介いただきありがとうございます。
こういう研究があるのですね。
アイソス2月号が楽しみです。
日本には応用統計が専門のISO関係者もおられるので、そういう方々にはぜひ認証数を使った統計分析をやって欲しいと思います。例えば、建設業がけっこう盛んなのに、認証数が比較的少ない県は、昔から談合が強い県である・・・とかを実証できるかもしれない。
家元です。
内容は2月号を楽しみにしていますが、
過去の話から理屈をつける:談合があれば認証は要らない、
今まではそうだったのか:統計分析と検証
談合を規制すると認証が増える:これからの予測
=>予測は当たったか?
欧州向け輸出のある産業は認証数が多い、
これは当たり前ですかね。
顧客から「怪しげ」に思われている業種では
9001の認証が多い、とか
業種別の9001認証とクレーム率の関係なんかもあったら面白そうです。
仮説を立て、検証し、仮説が正しければ、それをもとに予測を立てる。
ムカシ、是正処置WSでやった基本セオリーですね、なつかしい。
もっと茶目っ気のある応用統計の専門家が、日本のISOの世界に欲しいですね。
粋なコメントかどうかわかりませんが、今年の初コメントです。
2月号の記事を読んで率直な疑問を2つ。
①2002年にイギリスに何が起きたのか?
②日本はもっとTSの認証を取れなのか、TS認証は必要ないことを日本に学べなのか、イタリアの筆者さんは何をかいわんや。
イソハドーグさん、本年もよろしくお願いします。
原文をちょっと読み返してみて、気づいた点を述べたいと思います。
<2002年にイギリスに何が起きたのか?
原文では、イギリスの2002年からの落ち込みについて、This drop strengthens in the following years with the standards changeover from ISO 9000:1994 to the ISO 9000:2000 version. とだけ書いてますね。「1994年版のQAで十分じゃないか、なんで2000年版のQMSなんかやらないといけないんだ」ということなのかどうかは分かりませんが、何らかの理由で2000年版に背を向けた企業が数多くいたようです。
<日本はもっとTSの認証を取れなのか、TS認証は必要ないことを日本に学べなのか?
これについて直接には、筆者はコメントしていませんね。Excluding few exceptions (such as Japan, Brazil, Russia)…と、日本を例外的存在として特徴付け、The result is that, even though Japan is recently showing considerable interest in the TS certification (growth of 7.5% in 2008)…あの日本でさえ最近はTSに関心を示しているぞ、と言うにとどまっています。特徴的な動きをしている国として筆者が関心があるのは、日本よりも中国だったということでしょう。