「FOOD SAFETY DAY JAPAN 2014」の講演概要速報(午後の部)

前日のFOOD SAFETY DAY JAPAN 2014の記事の続きで、午後のプログラム内容を紹介する。

【官民協働がもたらす食品安全】

テーマ⑧「HACCPの我が国への導入・定着について、厚生労働省の取り組み」

09_takimoto.JPG講演者:滝本浩司氏(厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長)
・HACCPの我が国への導入・定着について、厚生労働省の取り組みを起承転結で説明したい。まず、「起」は、1993年に制定されたCodex食品衛生一般原則である。これを受けて、「承」として、我が国では1995年に総合衛生管理製造過程が導入された。これは、食品衛生法改正の機に、承認制度として位置付けたもの。我が国は義務的な導入ではなく、任意の制度として導入した。その理由は、まだまだHACCPが国内で認知されていない状況であったので、やれるところでHACCPを導入してもらうという意図であった。しかしその後、この承認制度を導入した企業が食中毒事件を起こしたこともあって、承認を3年毎の更新とし、承認内容もより厳格にした。一方、海外ではHACCPの義務的な導入が進んでいた。そこで、「転」として、2014年に管理運営基準等の改正を行った。日本の状況と海外の状況の乖離が生じてきたので、管理運営基準を改正した。これはすべての食品事業者が対象になり、自治体が条例でこの基準を定めるもの。現在、9割以上の自治体が推進しており、来年4月に施行となる。そして、「結」として、我が国も諸外国と同じように、HACCPの義務化を目指して進めていきたい。そのためには、まずはHACCPの普及をもっと進める必要がある。現在、HACCP承認を受けている施設は530、770品目にとどまっている。品目については減少傾向にある。
・厚生労働省がHACCPの導入に取り組んでいるのは、輸出のためだけでなく、日本に輸入されてくる食品の安全確保のためでもある。現在日本は、カロリーベースで6割を輸入に頼っている。輸入品に対してHACCPを義務付けたいところだが、日本で義務化していないものを海外に求めることはできない。今、輸入品は水際で、抜き取り検査で安全性評価をしているのが現状だが、そういう体制ではなく、実際にその食品を作っているところから、安全管理をチェックすることが重要ではないかと考えている。
・今回の管理運営基準の改正により、すべての食品業者は、HACCP導入型か従来型かを選択することになるが、従来型よりHACCP導入型のほうが、より効率的な管理ができる。HACCPを「とる」と「やる」で分けてみると、「HACCPはとる」は、総合衛生管理製造課程の承認、自治体HACCP、民間認証などがあり、「HACCPをやる」は管理運営基準等になる。将来的にはこれを一本化して、義務化としたい。

テーマ⑨「食料産業の国際標準戦略の展開の方向性」

10_yokota.JPG講演者:横田美香氏(農林水産省食料産業局企画課食品企画行動室長)
・食品安全に関して企業を取り巻く現状を見ると、各国でいろんな規制が実施され、国内ではHACCP導入型基準の施行(来年4月)が予定されている。民間の取引でも監査の統一化の要求が高まっている。これは取引先監査の重要性が高まっている背景があり、これは今後も続くと思われる。日本における課題は、①食品の安全性の向上、特に認識の共有・普及と実行、②取引の円滑化、特にHACCPへの対応が取引上重要な要素、③国際社会への貢献、日本の食品のノウハウや手法を世界の食品安全のために発信していくこと、この3つと考えている。
・農林水産省としては、FCP共通工場監査項目とGFSIのGMPとの整合の検討や、国際標準に関する情報交換・議論の実施などに取り組んでいる。後者については、食料産業における国際標準戦略検討会を今年5月からスタートし、すでに5回ほど開き、その取りまとめの報告書は8月8日にホームページで公表している。同報告書では、①国際的に通用する規格・認証スキームの構築、②人材育成(国際標準化に貢献できる人材の育成)、③海外への情報発信(国際的な議論への貢献)の3つを提言している。①については、段階的な仕組みを考えている。HACCP導入の前段階の取り組み、HACCPを含む基準、国際的に求められる項目を含む基準、という3段階のステップである。
・今後の目指すべき方向性は、「食品安全対策の強化」「監査の効率化」「標準化への参画と貢献」である。こういったことは官民協力して取り組まなければならない。農林水産省としては、今回の報告書の提言をもとに、それをどのように実行していくかを検討しているところである。

テーマ⑩「鳥取県における新たな輸出の取り組み」

11_kishima.jpg講演者:木嶋哲人氏(鳥取県市場開拓局販路拡大・輸出促進課輸出促進担当参事)
・鳥取県における農産物輸出は80年の歴史があり、特に「二十世紀梨」が取引が多かったが、近年は輸出が減っている。JA全農と株式会社ドールと共に、平成21・22年に中国へ、同24・25年は香港へ「二十世紀梨」「富有柿」を輸出している。これは輸出先の国のスーパーや百貨店への直接販売している。
・このような取り組みを経て、このほどJA全農と株式会社ドールと共にパートナー協定を締結した。対象は鳥取県農産物である。これにより、海外でのPR・輸出促進をはかる。最近は、香港向けに「すいか」を本格輸出している。また、産地におけるGAPの取り組みを実施している。産地のおいて、グローバルGAPの適合率100%を目指している。
・最近はマレーシアで、鳥取県観光物産展を開催した。また鳥取県では、食品安全に関する認証取得等の取り組みを支援している。
・今後の課題は、「海外輸出支援体制の強化」「県内輸出取引者の輸出活動支援」「パートナーシップ協定に基づく、県内農産物の輸出促進」である。

【食品産業振興と食品安全】

テーマ⑪「FSSC22000:2013 帯広畜産大学での認証取得手順および将来展望」

13_murakami.JPG講演者:村上文朗氏(帯広畜産大学畜産フィールド科学センター乳製品加工担当技術職員)
・帯広畜産大学では、本学の乳製品工場と管理棟で2010年に北海道HACCP、2014年4月にFSSC22000の認証を取得している。この工場では、牛乳とアイスクリームを製造。北海道HACCPからFSSC22000に取り組む際は、FSSC22000で求められている「相互コミュニケーション」「マネジメントシステム」を強化し、前提条件プログラムをTS22002-1で補強する必要があった。導入にあたっては、今ある設備を最善の方法で使い、創意工夫をはかることにした。特に、内部・外部への食品安全の見える化には注力した
・今後の計画としては、平成27年度に、乳製品工場を活用したHACCP構築専門家の養成研修を行う。対象は十勝地域の企業。平成28年度は、さらに内部監査員の養成研修を追加実施。平成29年度は、対象を全国の大学・企業にまで広げ、大学院生を対象に、HACCP構築・内部監査員の力量をもつ即戦力となる学生を養成する予定。

テーマ⑫「国際的に戦う日本農業の実現」

14_matsumoto.JPG講演者:松本武氏(ファーム・アライアンス・マネジメント代表取締役)
・日本の農業就業者の平均年齢はまもなく70歳に突入する。農業の担い手の高齢化が進み、農業を辞めて行く人がどんどん増えており、安定的な生産基盤はまもなく崩壊すると考えている。
・農業生産者としての松本農園は国内でもかなり大きい農園である。グローバルGAPを取得し、従業員は30名。グローバルGAPの横展開を考えており、標準化・共有化を進めることで、農業のフランチャイズ化&アライアンス化をはかりたい。なぜ、松本農園が事業を拡大するのかというと、冒頭述べたように農業就業者が高齢化し、担い手がどんどん減ってきているからである。現場、メンバー農場が増えてきている。「グローバルGAPの認証取得はむずかしい」と言われているが、私達のメンバーにおいては、グローバルGAPは最短3ヵ月で取得できる。

テーマ⑬「食の安全への追求 FSSC22000の活用とコミュニケーション」

15_furukawa.JPG講演者:古川哲也氏(高徳海産  常務取締役品質管理部長)
高徳海産(宮城県石巻市、従業員90名、魚介類加工物の製造販売)が東日本大震災後にふぐに復興できたのは、①社長がすぐに復興する意思を示した、②放射線測定器をいち早く導入し安全性を証明した、③お客様の協力・支援があった、この3つが挙げられる。FSSC22000に取り組んだのも、食品安全に取り組み、それを広く知ってもらうためだった。FSSC22000取得のメリットとしては、①輸出の依頼が入ってくるようになった、②ISO/TS22002-1により何をすべきかが明確になった、③認証を受けてから工場の監査が一件もなくなった、の3つがある。

テーマ⑭「GFSI承認スキーム取得がもたらすこと SQF認証取得への取り組みと運用」

16_kitajima.JPG講演者:北島進氏(ヤマタネ 生産部部長)
今年2月に当社の大型精米工場においてSQFの認証取得。2年前からSQFに取り組み始めた。最初にSQFプラクティショナー養成講座を4名が受けて修了し、2014年2月に認証を取得。ISO 9001認証はすでに取得していたので、それがベースになった。認証取得効果としては、外部環境については、
「取引上の要求事項に対応」「監査が楽あるいは減」、内部環境については、「安全と品質を同時に効果的に管理」「オペレーションのシステム化」などが挙げられる。

【世界の食品安全】

テーマ⑮「ASEANにおける食品安全」

17_bev.JPG講演者:ベブ・ポストマ氏(フード・インダストリー・アジア〈FIA〉 エクゼクティブ・ディレクター 博士)
・FIA(Food Industry Asia)は、アジア全体の飲食品業界を代表するために2010年に設立された地域的な業界団体であり、中国でメラミン問題が起きたことが発端になっている。地域的なリーダーが集まって、地域的な問題について話し合っている。
・ASEANは10の加盟国がある。40年にわたるASEANの歴史を見ると、2007年にブループリントが発行され、2008年にはASEAN憲章が発効されている。ASEN経済共同体(AEC)は、2015年までに単一の市場にしたいと考えている。これは非常に崇高な野心であり、今そのための道筋を立てている。
その中で優先順位の高い業種として、農業関連、漁業が出ている。これはASEANにとって重要なセクターである。ASEANでは、食品安全を実現するための7つのステップを作成しており、これを2015年末までに達成しようとしています。これはラオスやカンボジアのように今から準備を始めようとする国にとっては大きなチャレンジになるだろう。農業食品分野に関わるASEANの機関と規制当局が連携して作業が行われるが、この中で私たちは今後ハーモナイゼーションをしていかなければならない。
・ASEANの評議会では、品質や安全の基準の連携のための議論が行われている。ASEANの基準は、単一の基準と単一の検査を世界各国に適用することが目標であり、主な注力分野は相互承認(MRA)である。MRAの対象となる分野は、①食品安全の分野(食品安全の基準、遵守の評価、出荷前検査、輸出国からの輸出認証、GMP認証、HACCP認証)、②ラベル表示、③登録の分野(食品の登録など)④ハラル分野(ハラル認証)、⑤特定の要件(GMO、照射食品など)である。
・ASEAN加盟国では、飲食品業界の大半を占めるのは小規模企業と零細企業である。つまり、食品安全をASEANで確保するためのトレーニングが大変な作業であることが分かるだろう。

テーマ⑯「中国の食品安全」

18_zaotian.JPG講演者:万早田(ツァオティアン・ワン)氏(COFCOコーポレーション〈中糧集団有限公司〉バイスプレジデント、GFSI理事)
・中国では、経済の急激な発展の副産物として食品安全の問題が起きていると思う。政府はこの問題に強い関心を示し、これを解決しようとしている。中国では、こういった問題は企業だけでは取り組めない。特にメラミンの問題は、業界全体に大きなインパクトを与えた。中国はまだこの問題を解決できていない。これは悪いことであるが、いいことでもある。なぜならこの問題によって、食品安全管理局を強化し、関連する部門を1つにまとめるなど、政府全体が抜本的な取り組みを行ったからである。
・また、中国では食品安全に関する法規・基準の段階的な整備を実施している。昨年の党大会から、これまで13の部署で別々に管理していた基準を、国の1つの基準にまとめるように決まり、2015年末までに、これらを完了しようとしている。中国の食品安全に関する基本的な枠組みができたと言えるだろう。
・企業の食品安全への意識も向上した。例えば、2012年にGFSIの会議が開催されたが、この会議に中国から500人が参加している。これほどまでに食品関係者が食品安全に関心をもってくれているということである。政府が第一責任者として、食品安全の問題を抜本的に改革しようとしており、企業も自律的に取り組んでいる。

テーマ⑰「韓国の食品安全」

19_sang.JPG講演者:サンヒョン・パク氏(ロッテ中央研究所〈韓国〉 安全センター長 博士)

・韓国では、基準を満たさない食品による犯罪が、社会悪の1つとして定義された。韓国政府はそれに対して、さまざまな施策を出している。例えば、基準を満たしていないメーカーに対して売上高の10倍の罰金を適用するなどである。こういう施策もあって、韓国の大手食品企業は、食品の安全管理システムに基づいて活動を行っている。
・ロッテにおける食品安全管理システムは、「監査」「食品の分析」「トレーニング」「認証の促進」「記録の管理」が基本要素になっている。FSSC22000の認証は2015年までに食品工場で取得する予定である。食品安全管理システムの対象は、リテーラー、メーカー、外食産業が含まれる。ロッテグループは、中国、インドネシア、東南アジア等、世界の多くの国で事業を展開している。ロッテの監査は品質と安全を世界で担保するために、チェックリストを使用したロッテのスタンダードをグローバルに適用している。食品メーカーの監査の状況は、11のカテゴリーと93項目で実施し、毎年1回定期監査が行われる。ABCDの4段階のレベルがあり、CとDは再検査の義務化が施されている。工場については、1年に2度監査が実施されている。

テーマ⑱「GFSI理事メンバーからのメッセージ」

20_john.JPG講演者:ジョン・カーター氏(メトロキャッシュアンドキャリー メトログループ品質保証グローバルディレクター バイスプレジデント、GFSI理事)
・食品安全と品質について、「GFSIに取り組むことによって良くなった」という回答を得ている。「規制の順守」については、「GFSI承認スキームの認証を取得することで、現行及び将来の規制順守の備えとなる」と考えられている。また90%の企業が、「従業員の食品安全に関する知識が深まった」としている。
・GFSIのガイダンス・ドキュメントが改訂される。タイトルは「ガイダンス・ドキュメント」から、「ベンチマーク要求事項」に変わる。2016年1月に第7版が発行される予定。またグローバル・マーケット・プログラムも改訂される。食品加工は2014年末、第一次生産は2015年末に発行予定。
・現在、GFSI承認スキームは10スキームあり、グローバル・マーケット・プログラムは60カ国、1100社からダウンロードされている。

クロージング・セッション

挨拶者:ジェンク・グロル氏
今回の発表をシェアすることで、お互いに発展できると思う。2008年に第1回を開催した時の参加者と比べると、今年の参加者は7倍まで増えている。2015年3月に開催される「世界食品安全会議2015」にもぜひ参加いただきたい。
挨拶者:瀬在祥生氏
今回で「FOOD SAFETY DAY JAPAN」は終了となるが、正確にはアジアというもっと大きなネットワークに拡大すると言ったほうがいいだろう。

閉会