アイソス主催・山上裕司(イノベイション代表取締役)講師によるISOファシリテーションセミナーを5月17日10:00〜17:00、東京・シーバンスホールで開催しました。テーマはクリーン・ランゲージの内部監査などへの応用です。クリーン・ランゲージとは、David Grove 氏考案による心理療法における問いかけ技法で、前提、アドバイスを含まない質問、相手の言葉を変えずにそのまま使い、さらに質問するのが特徴です。参加者には、講義と演習(ワーク)を交互に行いながら、クリーンな問いかけ、クリーン監査を2人1組のペアワークを通じて学んでいただきました。
山上さんは、クリーン・ランゲージについて、「問いかけの洗浄例」を挙げて説明してくれました。例えば、下記の問いかけです。
この方針実現のために、
あなたはの部門は、
何を計画し、実施し、
どんな成果を得ようと
していますか?
この問いかけの中には複数の前提が含まれています。それは、どの部分でしょうか?
この方針実現のために①、
あなたの部門②は、
何を計画し、実施し③、
どんな成果を得ようと④
していますか?
アンダーラインのところが前提になります。全部で4つ含まれていますね。「えっ? どうして、これらが前提になるの?」と思われる方もいるでしょう。
この問いかけは、単に方針について聞いているのではありません。例えば①では、その方針を実現するための問いかけになっています。つまり「実現できるかど うかは抜きにして、答えてみてよ」と言っているのではなく、実現するための答えを求めています。ですから、「実現のために」は前提になるというわけです。 そのほか、②③④も同様です。
では、これらの前提群をすべて洗浄した後は、どんな問いかけになるでしょうか。ここでは、下記のようになるとしています。
この方針のとき、
何が起きてほしいですか?
山上さんに言わせると、この問いかけ、結構使えるそうです。ミーティングや監査で一度使ってみてください。
今回のセミナーでは、問いかけのペアワークは2本行いました。1本は、クリーンな問いかけを続けることで、相手から具体的な答えを導き出すというものです。もう1本はクリーン監査です。8つの項目(①プロセス名、②要求事項、③送り手、④インプット、⑤受け手、⑥アウトプット、⑦活動、⑧資源)について、ファシリテータ(監査側)がクライアント(被監査側)にクリーンな
問いかけをしながら、クライアントが、あるプロセスについて自分自身の課題を特定するようになるまでの道筋(オーディット・トレイル)を体感してもらいました。
このワークについて、参加者からいただいた感想の一部を紹介します。
- ファシリテータを体験して、今まで自分がどれだけ質問で誘導していたかが分かった。
- ファシリテータをやっていると、クライアントの答えに対して、自分の心の中に「そうだ、そうだ」とか、「それは違うのではないか」といった思いがこみ上げてきて、それを口に出せないのがすごく辛かった。
- クライアントをやると、今までスンナリ話していたことを、あらためて深く考えて話すようになった。
- クライアントの番になってはじめて、ファシリテータにゆっくりと問いかけてもらうことによって、自分もじっくりと考え、落ち着いて答えることができるのが分かった。
詳細はアイソス7月号(6月10日発行)をご覧ください。