JRCA講演会(川口会場) 速報

財団法人日本規格協会マネジメントシステム審査員評価登録センター(JRCA)主催によるJRCA登録審査員対象の講演会が埼玉県川口市の川口総合文化センターで11月10日午後に開催された。2,000人が入る会場がほぼ満席の状態だった。講演会の前半は椿広計氏統計数理研究所教授)が「品質マネジメントシステム構築への期待と信頼性確保について」、後半は中川梓氏(日本適合性認定協会〈JAB〉認定センタープログラムマネージャー)が「マネジメントシステムの有効性を審査する」をテーマにそれぞれ講演。講演内容の骨子は下記の通り。(大阪では11月4日にほぼ同じ内容の講演会が行われたらしい)

tsubakih.jpg【椿広計氏の講演】
「品質マネジメントシステム構築への期待と信頼性確保について」

私は自称「統計家」である。統計家としての信条は「自由思想の倫理」(カール・ピアソンの 言葉)。その意味は、借り物でない、事実に基づく主張を行い、プロフェッショナルとしての倫理を持つことだ。ピアソンは「科学の文法」なるものを唱えてい る。それによると、科学とは、その対象が科学的であるから科学となるのではなく、そのプロセスが一定の方法に従うから科学的となる、としている。この考え 方は、夏目漱石の「文学評論」にも反映されている。

品質分野では、デミングの師匠であるシュハートが科学的方法を取り入れた管理の3成分(PDC)を提唱し、これが品質マネジメントの始まりとされており、現在のISO 9000の「8原則」にも、経営を科学的に考える思想が受け継がれている。

ま た、知的好奇心を満たすための科学だけでなく、価値や目的が問題とされる「社会のための科学」も考えなければならない。これについて、私も関わった第三者 制度で苦い経験がある。1970年に、新医薬品の許認可において第三者が臨床比較試験のプロセス監理を行うコントローラー制度が創設され、25年間続い た。これは我が国独自の制度であり、欧米からは効率良い制度として評価されていた。しかし、「悪貨は良貨を駆逐する」ごとく、実質的には第三者監理を行わ ずに安価にデータ分析して厚生省に提出するという名義貸し第三者会社が現れ、1990年代後半、この制度は崩壊した。正しい第三者制度を守る集団を社会が 育成できなかったのである。医薬品メーカーだけでなく、厚労省自体も信用できないと市民が訴えている現在、「信用」が問題になっているからこそ、マネジメ ントシステム構築・運用と、それをチェックする第三者認証が求められていると思う。

ここでISOの認証制度に目を向けると、ISO認証取 得企業で公害防止管理者(専門職)が事実を捏造するなどの不祥事が起きていて、多くのまともな認証組織の認証価値を損ねている。専門職倫理というものを考 える時、日本品質管理学会が2004年に発表した会員の「倫理的行動のための指針」が参考になると思う。これは品質関係者だけでなく、専門職の方々全般に 言えることだろう。

第三者認証制度については、3つの問題点がある。第一に「意図的な情報捏造による認証取得」。これについては、今年8 月にMS信頼性ガイドライン対応委員会が、認証取消後、通常1年間程度は認証受付をしないなどを取り決めている。第二に「MSの適用範囲を超えた利用」。 例えば、認証範囲にない組織なのに、あたかもその範囲でも認証を得ているかのような説明や広報をしている場合がある。これについても、前述した対応委員会 が対応方法を提示している。第三に「MS認証で順法性を保証できるのか」という問題。私はこれはもともと組織の内部品質保証の問題であると考える。第一者 監査(内部監査)で保証すべきものであって、その第一者監査がシステムとして動いているかをチェックするのが第三者監査の役割だと考える。内部品質保証が 外部品質保証の源泉になっているのだ。第三者制度が保証するのは「当たり前品質」であり、「魅力的品質」は第1者(自組織)がやるべきことだ。

と にかく、第三者制度というのは、品質競争になりにくいので、すぐに価格競争になってしまう。そこで、MS信頼性対応のコミュニティ(名門酒会のようなも の)が必要ではないか。また、社会の中に、第三者評価業界以外の厳しい叱咤激励する組織(くらしの手帖のようなもの)も必要ではないか。

nakagawaa.jpg【中川梓氏の講演】
「マネジメントシステムの有効性を審査する」

「マ ネジメントシステムの有効性を審査する」とはどういうことか。ISO/IEC 17021には「マネジメントシステムの有効性、つまり明示した方針/目標に向けてマネジメントシステムが有効に実施され、一貫して達成できるかどうかの 審査」と記述されている。また、マネジメントシステムの「有効性」と「適合性」は本来、切り離して扱われるものではない。マネジメントシステムの「適合 性」の評価では、マネジメントシステムの「有効性」を確認しなければならない。

マネジメントシステム認証件数は認定・認証制度の信頼の指 標と考えている。ここ数年、認証件数の停滞または伸びの低下が起こっているのは、「認証組織の顧客(利害関係者)の期待に応えていない」(IAFの Output Matters)、「認定された認証に対して期待される成果」(IAF及びISO共同コミュニケ)が出ていないことによるものと考えられる。例えば、 JABのアンケート調査において「取引先にISO 9001を要求している組織(顧客に相当)の満足度」を見ると、2005年よりも2007年のほうが満足度が低下している。

では、どこに 問題があるのか? 考えられる問題としては2つあって、まず第一に「仕様規格(要求事項を満たせば所期の目的を達成する)とマネジメントシステム規格(要 求事項を含んで所期の目的を達成する)とを混同しているのではないか?」ということ。第二に「認定/認証審査が要求事項のチェックリストで行われているの ではないか?」ということ。つまり、部品が揃っていることだけをチェックしているのではないか。部品が揃っているだけではTVは映らない。部品が揃ってい るだけでなく、それらが機能しているかどうかを審査しなければならない。

品質マネジメントシステムの有効性とは何か。組織を取り巻く多様 な側面をとらえ、要求事項に適合するように設計され、構築された仕組み(マネジメントシステム)を使うことによって、顧客から「期待される成果」を出すこ とができる状態にある場合、マネジメントシステムは有効に機能していると考えることができる。ここで言う「期待される成果」とは、顧客要求事項及び適用さ れる法令・規制要求事項を満たした製品を一貫して提供することである。ISO 9001は、2008年版で「0.2 プロセスアプローチ」に「望まれる成果(desired outcome)」という言葉を新たに取り入れた。「組織内において、望まれる成果を生み出すために、プロセスを明確にし・・・」となっている。こういう 言葉を入れてあえて強調する必要があったのは、これまで望まれる成果が出ていなかったためと考えられる。

マネジメントシステムの有効性を 審査するとは何か。第三者認証を求める組織は、利害関係者の期待する目的を実現するため、マネジメントシステムを構築・運用する。よって、認証審査員は、 組織のマネジメントシステムが規格に基づいているか、有効に機能させているか、有効な結果が出ているか、その結果として利害関係者への説明責任を果たして いるか、ということを評価しなければならない。

認証審査の手法としては、組織を理解し、該当する目的に照らして重要分野を想定し、目的実 現の程度や実績を評価して、マネジメントシステムが有効に機能しているかを判断しなければならない。また、マネジメントシステムの有効性の審査を実施する ために求められる審査員の力量としては、組織のプロセスが理解できること、組織の活動結果を規格の要求事項に結びつけて理解できること、ビジネスの多様性 を認識し当該組織の背景や文化を理解すること、組織との間に円滑なコミュニケーションができることが挙げられる。JABのアンケート調査の結果によると、 QMS審査員に不足している力量は、受審組織の所属業界に対する理解、受審組織の業務に対する理解、経営に関する知識などが考えられる。

もちろん、有効性の審査を実施するためには、個々の審査員の力量向上だけでなく、認証機関のマネジメントシステムが有効に機能していなければならない。認証機関の能力として重要なのは、公平性、力量、責任、透明性、機密保持、苦情への適切な対応が挙げられる。

最 後に認定機関の役割について述べたい。認定審査の目的は、認証機関がマネジメントシステム認証サービスを実施する力量があるかどうかを評価することにあ る。つまり、認証機関が「期待される成果」、すなわち「マネジメントシステムの有効性の審査」を実現する力量があるかどうかを評価する。JABとしては、 認定審査の一層の充実のために、認定審査プログラムや認定審査方法の充実化に取り組んでいる。

認定・認証制度は社会財である。認証を受け た組織が、顧客や社会から信頼を得ていただくために、制度における各自(認定機関、認証機関、認証組織)の役割に取り組み、責任を果たすことが重要だ。そ の役割とは、QMS認証組織は、「顧客要求事項及び関連する法規制要求事項に適合した製品を一貫して提供する」ことを証明する仕組みを構築・運用・維持す ること、認証機関/審査員は、組織の仕組みと運用状況を視て、前記の証明事項を実現できる状況であれば認証を授与すること、認定機関は、認証機関/審査員 の能力を視ること、である。

5件のコメント

  1. 前半の講演にありました。
    科学とはそのプロセスが一定の方法に従うから科学となる。
    後半の講演はどうだったでしょうか。
    首をかしげる内容が多かったと感じられます。
    全体の主旨はいまさらながらのもので、まるで試行期間を経て
    これからISO制度がスタートするのかと錯覚させられそうにな
    りました。
    15年経過してからこのような話が出で来るところを見ますと、
    改善にはあと30年ほど要するのではないでしょうか。
    アンケートの考察もよく分かりません。
    項目別の点数評価を平均したものにどれだけの意味があるので
    しょうか。
    また認証組織が減っていることを問題視するのなら、それを返
    上した組織からの本音を引き出すアンケートを最重要視すべき
    と思われますが、それらが含まれているのかどうか不明ですね。
    その他にも、これから認証を受けようとしている組織や、認証
    に興味のない組織へも調査を広げるべきでしょう。
    ごく基本的なことではないでしょうか。
    それから、アンケート結果がどうして今回のような結論に結び
    付くのか、まるで理解できません。
    そもそも、「認証発行数は認定・認証制度の信頼の指標」との
    前提は本当に正しいのでしょうか?
    また唐突に「Output Matters」という概念が登場しますが、
    具体的にアンケートにそのような記載があったのでしょうか?
    分からないことだらけです。

  2. 日吉です。
    審査道無風流 家元という大胆な名前を名のっています。
    実名で登場するのは、中尾さんが紹介された内容に対して批判的なコメントをつけるからです。(中尾さんに対する批判ではありません)
    以下は、中川梓さんに質問したい内容です。
    具体的に「有効性審査」なるものをおやりになっているのでしょうか?
    有効性の判断はどのような基準でおやりになっているのでしょうか?
    不適合の指摘と、有効性の問題とをどのように調整しておられるのでしょうか?
    「有効」とは「適合」に包含される概念なのでしょうか、もしそうだとしたら、ISO9000の定義とどのように調和させているのでしょうか?
    限られた講演ですから言い尽くせない部分があるにせよ、具体的な審査活動にどのように取り込むか、残念ながら全く理解できない内容となっている気がします。
    17021以前から、多くの審査機関の審査報告には、「適合評価」でありながら、「有効である」という結語が使われてきました。
    つまり「有効」に「適合」が含まれているという感覚がもともとあったのではないか、と推測しています。
    批判と言いましたが、建設的な議論がしてみたいと思います。

  3. うわ〜,日吉さん,難しいことを〜。
    日吉さん,磯山さんちに内部監査に行きませんか?(営業メニューにありますよね)。磯山さん,次回の内部監査を日吉さんにアウトソースしませんか?。

  4. 家元です。
    門岡さん、
    営業マンをやっていただきありがとうございます(笑)。
    ただ、磯山さんと私のコメントから、
    なぜ、
    「磯山さんちの内部監査に行こう」、ということになるのかは
    理解できていません(これも笑)。
    JABの・・・ならわかるのですが。
    多分、磯山さんも???ではないでしょうか。
    「有効性の審査」なるものが必要だとしたら、
    机の上の話をいかに現場でできることに置き換えるか、
    というような話です。
    また、そのために整備する必要のあることは何か?です。

  5. 家元さん,こんにちは。門岡 淳です(^-^)ハハ,申し訳ない,まったく読み間違えていました。
    タブン,「中川梓さんに質問したい内容」を「磯山さんに質問したい内容」と脈絡もなく誤解してしまったのでしょう。ちゃんと人の話を聞いて,正しく理解できないのでは営業マン失格ですね。

コメントはできません。