ISO 14001の改訂作業を審議しているISO/TC207/SC1/WG5の第4回会合がスウェーデンのヨーテボリ大学で2013年2月2〜6日の5日間開 催され、ISO 14001の委員会原案(CD)が作成された。この第一次委員会原案(CD.1)は3月11日にISOメンバー各国に回付され、5月11日までコメントを 受け付けた後、同コメントは次回ボツアナで開催されるTC207総会でCD.2作成に反映される。
CD.1の概要は下記の通り。「共通要求事項」とは、ISOマネジメントシステム規格に共通に適用される要求事項のことで、具体的には附属書SLのSL.8の中のAppendix 3の内容をさす。下表のグリーンの文字で書かれた部分は、EMS固有の細部箇条。ISO 14001次期改訂版は「共通要求事項+EMS固有の細部箇条」で構成される。
ISO/CD.1 14001の概要(第4回ISO/TC207/SC1/WG5審議結果)
序文 | CD.1用に起草中(未審議) |
1. 適用範囲 | 規格の意図する成果を明確化:起草中(未審議) |
2. 引用規格 | 引用規格なし |
3. 用語及び定義 | ・「環境状況」の定義:長期的な環境の変化が組織の活動、製品及びサービスの適用を求めて与えるうる影響(WD.3での環境影響の定義の双方化は撤回)
・サプライチェーン、バリューチェーン(ISO 26000) ・指標、KPIの定義(=FDIS 14031より) ・要求事項(ニーズと期待)の注記で自主的義務を説明 – 利害関係者からの「要求事項」は組織が同意した時に「自主的義務(Voluntary obligation)」となる ・著しい環境側面を定義(2004年版の記述と同じ)し、次のことを注記 – 著しい環境側面は、組織が評価、マネージ、管理する必要がある環境リスクとして考慮できる |
4 組織の状況
4.1 組織及びその状況の理解 |
・外部の環境状況が組織の活動、製品・サービスに与える影響を含めて内部・外部の課題を特定
・EMSを設計する際に、4.1で得られる知識を考慮 |
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解 | ・EMSを設計する際に、4.2で得られる知識を考慮 |
4.3 EMSの適用範囲の決定 | ・組織の管理・影響力を考慮して決定する |
4.4 環境マネジメントシステム | ・プロセスが具備すべき事項を決定し、組織のビジネスシステムに統合する
・ISO 9001のプロセスアプローチが適用できることを附属書Aに記載 |
5 リーダーシップ
5.1 リーダーシップ及びコミットメント |
・以下についてもトップが実証する
– 組織の状況を理解し、EMSの設計で考慮 – 戦略計画で組織の環境パフォーマンスを考慮 |
5.2 方針 | ・汚染の予防に加えて、ISO 26000に記載された4つの環境課題の中で関係する課題に対するコミットメントを含む |
5.3 組織の役割、責任及び権限 | ・共通要求事項後段に記載の役割を持つ人はしばしば「環境管理責任者」と呼ばれるという注記を追加 |
6. 計画
6.1 リスク及び機会への取組 6.1.1 一般 |
・リスク及び機会の特定について以下を追加
– 著しい環境側面から生起するもの – 法的要求事項、自主的義務から生起するもの – EMSに抵触するその他のビジネスリスクと機会 ・リスクに対応する行動の選択肢を注記(リスク回避、緩和、受容又は機会追及) |
6.1.2 環境側面に関わるリスクと機会 | ・ライフサイクルを考慮し環境側面を特定するプロセスを要求
・組織の状況を考慮して著しい基準を設定 ・EMSの確立、実施、維持で著しい環境側面を考慮 |
6.1.3 法的要求事項と自主的義務 | ・プロセスを要求
・「その他の要求事項」を「自主的義務」に変更 |
6.2 環境目的及びそれを達成するための計画策定
6.2.1 環境目的 |
・組織の内部・外部の状況、著しい環境影響、法的要求事項と自主的義務を考慮
・「環境目標」は削除 |
6.2.2 環境改善プログラム | ・各目的に対して一つ以上の指標を決定し、それに対してパフォーマンスを評価及び実証する
・プログラムをどのように組織のプロセスに統合するか決定 |
7 支援
7.1 資源 |
・環境固有要求事項の追加なし |
7.2 力量 | ・環境固有要求事項の追加なし |
7.3 認識 | ・各人の業務に伴う法的要求事項を含めた著しい環境側面とその潜在的なものを含む影響
・法的要求事項の不順守が意味すること |
7.4 コミュニケーション
7.4.1 一般 |
・コミュニケーションを計画する際、利害関係者の要求事項(4.2)を考慮
・コミュニケーションの方法・ツール等を決定 |
7.4.2 内部コミュニケーション | ・環境パフォーマンス改善に関するものを含め適切な内部コミュニケーションについて文書化し、対応する |
7.4.3 外部コミュニケーションと報告 | ・法的要求事項及び自主的義務で要求される環境情報を外部に報告する
・環境パフォーマンス、製品及びサービスを含む外部コミュニケーションは、真実で誤解がなく、完全、正確、透明及び信頼できるもので、EMSで管理された情報に基づく ・外部利害関係者からのEMSに関する適切なコミュニケーションについて文書化し、対応する |
7.5 文書化された情報 | ・EMSの主要な要素、それらの、他のビジネスプロセスを含む、相互作用の記述 |
8 運用
8.1 運用の計画及び管理 |
・文書化されていないと環境方針、目的及び法的要求事項と自主的義務から逸脱するかもしれない状況を管理するために、特定の方法を文書化 |
8.2 バリューチェーンの計画及び管理 | ・組織は、著しい環境側面にかかわる上流・下流のプロセスが管理又は影響を及ぼされることを確実にする
・これらのプロセスへの管理又は影響のタイプと範囲はEMSの中で決定する ・アウトソースしたプロセス、購入する物品及びサービスが管理されることを確実にする – 購買及びアウトソースを評価する基準を設定 – 購買及びアウトソースに対する環境要求事項を、適切な場合、特定する – 要求事項を供給者、請負者に伝達する ・組織は、著しい環境側面の評価結果を、製品及びサービスの設計プロセスへのインプットとして考慮 ・組織は、製品及びサービスの使用時から最終廃棄に至る間の潜在的な著しい環境影響に関する情報提供の必要性を考慮する |
8.3 緊急事態への準備及び対応 | ・プロセスを要求(2004年版とほぼ同等) |
9 パフォーマンス評価
9.1 監視、測定、分析及び評価 9.1.1 一般 |
・監視及び測定の必要性を決定すべき事項を列記
– 著しい環境影響を与える鍵となる特性 – 著しい環境影響を与える可能性があるバリューチェーンの鍵となる特性 – 順守評価に必要な情報 – 適用可能な運用管理 – 組織の環境目的に向けての進捗 – 主要パフォーマンス指標(KPI)を使用し、組織のパフォーマンスを評価・分析するための基準 |
9.1.2 順守評価 | ・プロセスを要求
・法令順守のコミットメントと整合して下記を行う – 順守評価の頻度を決定 – 順守評価し、必要な場合、行動する – 組織の法令順守状況に関する理解と知識の維持 |
9.2 内部監査 | ・力量ある監査員を選定する
・監視結果に対して必要な行動がとられることを確実にする |
9.3 マネジメントレビュー | ・内部、外部の課題の変化の例として以下を追記
– 法的要求事項の変化 – リスクと機会の変化 ・レビューすべき事項として以下を追加 – 法的要求事項及び自主的義務の順守状況 – 苦情を含む、外部利害関係者からのコミュニケーション |
10 改善
10.1 不適合及び是正処置 |
・プロセスを要求 |
10.2 継続的改善 | ・環境固有要求事項の重要な追加はなし |
附属書A | 改正版でも附属書Aを含むことを決定(起草中)
・4.1対応でISO 31000の外部・内部の状況の例を踏襲 ・「環境状況」とはISO 26000の6.5に記載の4つの分野を意味することで附属書Aに記載 ・4.4対応で、ISO 9001のプロセスアプローチが適用できる(can)旨を記載など、新たな概念の追加情報を記載 ISO 14001:2004の附属書Aの内容で引き続き妥当な内容を特定して記載する |