「5.5.2 管理責任者」

はたして組織の外にいる人間が管理責任者になってよいものでしょうか?
「いや、それはダメだ。規格の意図に反する」
ISOはそう回答しました。
2008年版での「5.5.2 管理責任者」の変更点は、「管理層の中から管理責任者を任命」に「組織の」を加え、「組織の管理層の中から管理責任者を任命」としたことです。
「5 経営者の責任」全体の中でも、2008年版での原文の変更点はこの1個所のみです。
原文は下記のとおりです。(新たに加わった個所は下線部分)

(ISO/FDIS 9001:2008)
Top management shall appoint a member of the organization’s management who, irrespective of other responsibilities, shall have responsibility and authority that includes
(JIS DRAFT 9001:2008)
トップマネジメントは、組織の管理層の中から管理責任者を任命しなければならない。管理責任者は、与えられている他の責任とかかわりなく、次に示す責任及び権限をもたなければならない。

日本では外部のコンサルタントが、ISO事務局を担当することはよくありますが、管理責任者を担当することは、ほとんどないと思います(ISO認証のために、管理責任者を雇い入れることはよくありますが)。
ところが、「管理層というのは、組織内とは限らない、組織外の管理層もあり得る」─そのように解釈して、外部のコンサルタントが管理責任者になっているケースが、海外では存在します。
そこで、「これは規格の意図に反するのではないか」という意見が、認証機関側からISOに寄せられました。
すると、「外部のコンサルタントが管理責任者になってもいいじゃないか」という反論も起こり、ISO内で大きな議論になったそうです。

ISOが出した結論は、管理責任者は組織内の人間でなければならない、というものでした。

5件のコメント

  1. この一語の追加ではっきりしましたね!
    自社内の管理層は常識だと考えていましたので問題視していませんでした。しかし、某機関の改訂説明会の説明でも、中尾さんの記事と同様に、社外の人(コンサルタントなど)が管理責任者として定期審査に対応しているケースを例示されていました。
    零細企業さんの場合で、人がいないことからのやむを得ない策なのでしょう。しかし本当にやる気があるなら社長が兼務という形もあるし、実際にISO事務局までも社長自らが兼務されているケースも知っています。社外人任せで社員はついてくるのでしょうか? 
    9千を休戦することもできず、義務的な維持で苦戦することになってしまっています。9000は審査機関に格好をつけるものではないし規格のために運用するものでもありません。会社の現実に即した運営でよいことを再認識したい。
    「認証取得」が光る時代は終わりました。形ではなく質を求めたいですね。経営者のやる気が成否を決める時期が来ています。

  2. 2000年改訂の時もこの議論はあったように記憶してます。
    その時は確かコンサルタント軍が勝利し、最終的には「組織の」が消えたのではなかったかなぁ。(うろ覚えですので、間違っているかも)
    その結果、
    たぶんコンサルタントが、「認証取得請負人」で、形ばかりのシステムにしちゃったケースが世界的に多いのでしょうね。
    「組織の」を加えても、今度は別な難しさが出てくるでしょう。
    例えば、従来の日本企業にいた週に3日くらいしか出社しない監査役、あるいは非常勤の人は「組織の」でしょうか。
    審査の場でコンサルタントが管理責任者をやっていて、契約上は「組織の人」ですって主張したら、審査機関はどう扱うんだろう。
    今回の改訂では要求事項の内容は変わらない・・・だとしたら、2000年版も実は「組織の人」だったのでしょうかね。ここは私の記憶とは矛盾します。
    結局は、誰がやるか、ではなくて、何を、どのようにやるか、ってことですよね。

  3. 日本では、名ばかりの管理責任者がいて、実質的にQMSを指揮しているのは事務局で、その事務局は外部のコンサルタントが担当しているというケースがよくあります。このケースなどは、今回ISOで議論になった「管理責任者を外部のコンサルタントがやっていること」と同根の問題だと思います。
    また、家元さんがおっしゃるように、たとえ社内の人間であっても、週に3日しかこない監査役が管理責任者として妥当か、といった問題もあります。
    結局、リバビューさん風に言えば「形より質」、家元さん風に言えば「何を、どのようにやるか」が大事ってことですよね。

  4. 家元さんの記憶の裏づけのために94年版4.1.2.3を調べたらshall appoint a member of the supplier’s own management となっていました(コンサルタント軍の勝)。
    でもownがないと社外のmanagementでも良いと解釈が成り立つなんてmanagementって何? 社外取締役なら一応managementなのかなぁ? コンサルを雇用して管理責任者にしても普通は役員にはしないでしょうに。やっぱりmanagement(人間)の定義が曖昧。
    も一つ疑問ができました。94年版ではTop management 該当個所がmanagement with executive responsibilityになっていましたがsupplierが organizationになったことによる改訂だったのでしょうか?

  5. ファイヤーマンさんの疑問に対するレスです。
    94年版のTop management 該当個所がmanagement with executive responsibilityになったことと、supplierが organizationになったこととは、私はあまり関係していないと思うのですが。
    ある時期から日本企業が執行役員を置くようになりましたよね。management with executive responsibilityとは、そのような執行責任を持つマネジメントのことを言っているのですが、その意味があいまい過ぎるので、Top managementに変えたという経緯をTC176の委員から聞いたことがあります。94年版ができるまでは、日本の企業で執行役員制度を置いているところがほとんどなかったので、日本のTC176の委員は「何だこのわけの分からん表現は!」と終始反対していたそうです。
    一方、supplierが organizationになった点は、QAがQMSに変わったことが原因でしょう。規格要求事項への適用を実施する主体として、二者監査を第三者機関が代行するスペックにはsupplierが似合いますが、顧客の方を見つつも自主的に決めた目標達成に向けてPDCAを回すことを求めるスペックには、利害関係から距離を置いた中立的な organizationが似合いますから。

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