「ISO 9001規格は、7.3(設計・開発)や7.6(監視機器及び測定機器)は詳しく書かれているが、7.4(購買)は大事な割に薄くて、規格要求事項としてバランスがとれていないのではないかと常々思っている」
2月22日に東大で「今後のISO 9001に関するワークショップ」が開催されましたが、同WSの最後に行われた全体会議である企業の方がこのように発言されました。これを聞いて、私は「おもしろい。隔世の感がある」と感じ入りました。
実は1992年にBV(認証機関)の原田伸夫さん(もう今は引退されています)に、「顧客から認証を要求されていないのに、日本企業はどうしてISO 9001を積極的に取るのでしょう?」と質問したことがあります。
すると原田さんは「ISO 9001に「購買」という要求事項があるでしょう。その中の「購買データ」に「適用される品質システムの規格の名称、番号及び版」を挙げなさいとしていま す。下請けの世話をしきれない親企業は、その「品質システムの規格の名称」に「ISO 9001」を入れるために、認証取得を要求あるいは推奨したり、あるいは同等の仕組みを作るように要求します。また、親企業からそんな要請がなくても、自 主的にISO 9001を取って、自分たちがきちんとした企業であることを示すところも出てくるでしょう。今の日本の企業がどんどん認証を取っているのは、後者の自主的 な動きがほとんどです」と説明してくれました。
つまり、顧客に買ってもらうために、サプライヤーが自主的に認証を取ってきたという経緯があります。その時の鍵となる要求事項が「購買」でした。
ですが、冒頭に挙げた企業の方は、サプライヤーからものを買うために、ISO 9001の「購買」を補強できないかと言っておられる。顧客側のスペックとしてISO 9001を使いたいと言っておられる。う〜ん、ようやく本来の使い方を考えるようになってきたのではないでしょうか。
(同WSの詳細はアイソス6月号の特集を参照してください)
「7.4(購買)は大事な割に薄くて」ということですが、それは無理があるように思いますが。。。
インターナショナルにあらゆる業界を対象にしている規格である訳で、購買先に求める(求めないといけない)内容は千差万別であると思います。それを一律に規格化するというのも無理だから落としどころという意味であれぐらいなんではないでしょうか。
何が必要で、何をしないといけないかというレベルは「自分」が必要と思うレベルでやんないといけないのじゃないかと思います。
言われてするんじゃなくって、それぐらい自分で考えなさいよというのは違っているのでしょうか???
⒎4を厚くするのかあ。何を追加するのかな〜。
供給者とのコミュニケーション?
購買情報の検証?
供給者の供給者への要求事項?
要求事項の例示?(組織は、次の事項のうち必要なものを購買情報に含めなければならない。)
規格7.4の要求事項がそのものが薄いというよりも、表現が比較的シンプルなだけで、内容は深いように思います。この要求事項を真に満たすために、組織がどれだけのことをしているか、認証機関の審査がどれほどつっこんでいるかが薄いような気がします。
調達部門の仕事は値引き交渉だけだと勘違いしているきらいもあるし。
仔豚さんへ
規格ユーザーの中には、「7.4」の内容はこれくらいで十分と言う人もあれば、いやもっとメッシュを細かくして欲しいという人もあるでしょう。仔豚さんは前者ですね。
一方、規格を作る側にいる人は、今度はいろんな人のニーズをヒアリングして、どういう規格を作るのが一番いいのかを検討しなくてはいけません。たとえ自分は「7.4」はこれで十分と思っていても、これでは薄いと思っている意見が多ければ、自分の思いは横に置いておいて、検討しなければなりません。
今回のワークショップは、規格を作る側の人たちの議論の場です。
門岡さん
どこを厚くするのか? それについて、当該の発言者は説明していません。ですので、その点は分かりません。
ですが私が知っている事例では、
<供給者とのコミュニケーション?
初取引のサプライヤーなのに、きちんと監査もせず、工場見学を簡単に済ませて、夜は接待してもらって帰ってきただけ。
<購買情報の検証?
サプライヤーから提供されたデータをそのまま信用して鵜呑みにしている。あるいはサプライヤーがISO 9001を取っているというだけで信用してしまっている。
といった話は取材でよく聞きます。そして、そういったいいかげんなサプライヤー管理を審査で見抜けないとすると、「それは審査側に問題がある」と言えますが、規格側でも何らかの手が打てるのではないか? 規格開発側の人はそのように考えるでしょうね。
実際にTC176の国内委員会は「7.4」をどう変えようとしているかというと、アイソス6月号の16頁の真ん中あたりに出ていますが、「7.6項(購買)において、製品を検査することで要求事項に適合していることを確認できない、あるいはそうすることが経済的に困難な場合は、供給者に対してISO 9001と同等の管理(失敗の予測・予防など)を行わせることを要求する」としています。これは7.4.2のc)項を、ISO 9001に置き換えるという意味なのかなあ?
イソハドーグさん
<この要求事項を真に満たすために、組織がどれだけのことをしているか、認証機関の審査がどれほどつっこんでいるかが薄いような気がします。
そのつっこみの薄さをどう打開するか?
規格開発側の人間は、規格改訂によって何とかしようとするし(今回のように規格のメッシュをより詳細にするというのも1つの提案です)、真摯な認証機関は機関内の仕組みやトレーニング等で何とかしようとするでしょうし、組織は組織で何とかしようとするでしょう。
それぞれ立場によって、やるべきことがあるのだと思います。
>「7.4項(購買)において、製品を検査することで要求事項に適合していることを確認できない、あるいはそうすることが経済的に困難な場合は、供給者に対してISO 9001と同等の管理(失敗の予測・予防など)を行わせることを要求する。」
→は,購買情報(購買仕様書)の中で供給者に7.5.2プロセスの妥当性確認を要求することだと理解していました。これは既に必要な組織ならば購買仕様書に盛り込んでいることでしょう。規格要求事項の中に必要ならばISO9001を要求する,と書くのはいかがなものでしょう,組織の裁量・判断を認めないことに?。「7.4.2c)品質マネジメントシステムに関する要求事項」に包含されていますし。
と,購買の追加規格要求事項門岡案
・供給者の(再)評価の時期,内容の明確化,具体化?
・製品・サービスの品質に影響するプロセスを変えるときの顧客への報告?(供給者とのコミュニケーションとかぶるかな?。これも顧客が自らの判断で購買情報に書けばいいことで・・・規格に例示する必要はないかな?。)
中尾さんへ
受け手が理解出来るようにつっこむということが、重要な要素なのでしょうね。
それぞれが、やることをやる。当たり前のようで、なかなか出来ていないのかもしれませんね。
変化に追随した進化ができないと、生き残これないんだなと、いろんな場面で考えさせられます。
<規格要求事項の中に必要ならばISO9001を要求する,と書くのはいかがなものでしょう,組織の裁量・判断を認めないことに?。「7.4.2c)品質マネジメントシステムに関する要求事項」に包含されていますし。
同感ですネ。
TOMOさん
私メの言わんとする意図をご理解いただき、嬉しい限りです。
原田部長!
懐かしいなあ
91年頃だったろうか、シルクビルで会ったのがはじめてで98年ころまでお付き合いがありました。
最近お見かけしないけど、引退されたのかしら?
アイソス6月号の特集は見てないけれど、、、
最近の「QMS規格をどうにかせにゃ」関連のアプローチを見てると、その対案はどことなくISO/TS16949化しているように思えます。PAS99もその意図は、どことなくISO/TS16949でお目にかかったような感じがしなくもないような。
ってぇことでその、ISO/TS16949の7.4:購買追加要求はというと、、、
購買製品には,顧客要求事項に影響するようなすべての製品/サービスまでが含まれることや、供給者が合併,買収する/されるようなことがあったら,その供給者のQMSの継続性や有効性を検証すべき、なんて言われてみれば当然な内容。
そして法令・規制への適合要件。
顧客への納入製品に含まれるすべての購買製品/材料は,適用される法令・規制要求事項に適合しているという責任が組織にありって、これも当然。
さらに供給者のQMS開発。
ISO9001の第三者認証を通して、またはISO/TS16949審査機関並みの第二者監査プロセスを通して実証せよと来たもんだ。しかもこれは開発の第一歩であって、あくまでゴールはISO/TS16949適合だし。
しかし、きちんと基準を定義すればISO9001,ISO/TS16949の特定要素を免除してもよい小規模(供給量の場合も)供給者があってもよいなんて、実は現実的?だったりしている。
あとは、顧客に規定されたなら、顧客に承認された仕入先からモノやサービスを購入しなければならないとしながらも、そこから購入したモノを使ったからと言って、その購買品の品質保証責任は組織にあるんだよって。
では、次は購買品の品質保証プロセス。
次の一つ以上のプロセスでやれってことで、
・供給者作成の統計データ(SPC要件を満たすトレンドデータなど)で評価
・実績に見合う抜取り検査などで実検査(受入検査/試験やれってこと)
・購買品要求に合格レベルの適合記録を伴って、供給者生産事業所に対し第二者か第三者で評価/審査(ISO9001第三者認証してますダケではダメ)
・(認定)試験所での購買品評価
・顧客が認めた他の方法
だそうな。
そして最後が供給者監視。
次のパフォーマンス指標でもって供給者を監視せよってことで、
・購入品の要求事項への適合(ま、当たり前だね)
・フィールド返品を含む、供給者起因の顧客操業中断
・供給者納期実績(納期を守るために取ったいつもと違う輸送情報を含む)
・供給者起因の品質又は納期問題に対し、顧客から劣悪供給者レッテルを張られたケース
さらに、供給者が自ら製造プロセスのパフォーマンスを監視することをプロモートせよ、とも。
このあたりがヒントになるのかもね。
中尾さんへ
クリスマスイブに開催されたアイソスセミナーが懐かしいですね。
原田さんは、もうかなり前に引退されています。
<アイソス6月号の特集は見てないけれど、、
ちょっと、悲しい(笑)。
コメントを読んで思ったのですが、ISO 9001の改訂論議を国内でやる場合は、TSを熟知している人もメンバーに入れてやるべきですね。
JAB専務理事を引退された井口さんがジョーク半分で「TSは必要悪」と言っておられたけど、これ名言だと思うなあ。
確かに。
特に、うまくいかなかったところが(笑)。
例えば米国では、IATFやIAOBのメンバーとIAFやTC176といったところに出てくるメンバーって同じ人なのだそうです。
なのでISO9001:2000改訂の時は、QS-9000の要求事項を盛り込まそうとした米国でしたが、結果的には一つだけ採用された(確か教育訓練の有効性評価だったかな)らしいです。
この背景には、QMS規格という名称にしながらも中身はQA規格に留めるために、QM要素(効率など)を徹底して省いたってのもあるかも。
そしていま、ISO9001:2008では何が採用されたんでしょうかね。
4.1:一般要求事項の注記:3に、ISO/TS16949:2002の文言(こちらはshall要求)が入ったくらいでしょうか。
ま、今回は追補なんでその程度なのかも。
で、日本ですが、
> ISO 9001の改訂論議を国内でやる場合は、TSを熟知している人もメンバーに入れてやるべきですね。
考え方はそうかもしれませんが、実際、ISO/TS16949の意図を理解しているそれなりの人って誰がいるんでしょう?
そもそも国内では、IATFの資格要件を満たせる組織も業界団体もその他の団体/法人も居ないわけでメンバーに入っていないわけですから、ISO/TS16949を外野から見て意見する人はいても、内野からアピールできるそれなりの立場の人は居ないんじゃないでしょうか。
> ジョーク半分で「TSは必要悪」と言っておられたけど、これ名言だと思うなあ。
本当にジョークなら「名言」といえるんでしょうが、それなりの立場であったことをくっつけて「この人が言いました」と言われるような結果になってるのを見ると、たとえその時はジョークであったとしても、結果的には今は「迷言」にしか聞こえません。
これが日本のなのかな。