「その時私はまだ書生であった。暑中休暇を利用して海水浴に・・・」
書生って、何だろう。
海水浴って、昔からあったんだ。
「その時の私は屈託がないというより寧ろ無聊に苦しんでいた。それで翌日もまた先生に会った時刻を見計らって、わざわざ掛茶屋まで出かけて見た。」
海での一目惚れってやつね。
年上の人かあ。
「次の日私は先生の後につづいて海へ飛び込んだ。そうして先生と一所の方角に泳いで行った。二丁程沖へ出ると、先生は後を振り返って私に話し掛けた。」
ヤッタじゃん、ついにファーストコンタクト。
努力のカイあったね、私。
「私は先生と別れる時に、「これから折々御宅へ伺っても宜ござんすか」と聞いた。先生は単簡にただ「ええいらっしゃい」と云っただけであった。」
すげー、もう自宅に押しかけ?
「私はすぐ玄関先を去らなかった。下女の顔を見て少し躊躇して其所に立っていた。この前名刺を取り次いだ記憶のある下女は、私を待たして置いて又内へ這入った。すると奥さんらしい人が代わって出て来た。美くしい奥さんであった。」
ええーっ! 奥さん、いるじゃん。
それでも行くかあー。
「私はそれから時々先生を訪問するようになった。行くたびに先生は在宅であった。先生に会う度数が重なるに伴れて、私は益々繁く先生の玄関へ足を運んだ。」
なんとまあ・・・。
それにしても、先生って、プー太郎?
「普通の人間として私は女に対して冷淡ではなかった。けれども年の若い私の今まで経過して来た境遇からいって、私は殆ど交際らしい交際を女に結んだ事がなかった。」
えっ? ちょっと、待って、女と交際?
ということは、「私」って、オンナじゃなくて、オトコォー?
ちょっと、聞いてみるか。
「ねえ、ねえ、おとうさーん! 夏目漱石の『こころ』に出てくる『私』って、男なの?」
あっ! バカにした顔で笑ってやがる。クソッ!
大うけです ^^
「『私』って、男なの?」
も素敵ですが …
「それにしても、先生って、プー太郎?」
… デスクでニヤニヤしながら読んでいたら、みんなが不思議そうな目でこっちを見ていました ^^;
え”…iso??さんへ
これは実話でしてね。若い人が何の先入観も持たずに読むと、こんな風に読めるのかと感心してしまいました。
>若い人が何の先入観も持たずに読むと、こんな風に読めるのか
漱石は、いまや「古典」なんでしょうね。
「書生って、何だろう。」 … という疑問に象徴されているように思います。
でも
>「ねえ、ねえ、おとうさーん! 夏目漱石の『こころ』に出てくる『私』って、男なの?」
という質問を父親に出来る関係と言うのはいまどき少ないのかも知れませんよ。