ISO規格でタイトルに「手引き」と付けば、guidelineかguidanceの訳語で、「これは要求事項ではありませんよー」という意味になる。だが、自動車業界で顧客がサプライヤーに対して示す「手引き書」と名の付く文書は、要求事項の場合がほとんど。これが、門外漢の私には違和感があった。どうして、要求事項とハッキリ分かるような表現を使わず、「これは強制ではありませんからねー」的な「手引き」という表現を使うのだろう。
この点、前々から気になっていたのだが、最近アイソス編集部が取材したボッシュ購買担当者の次のような発言で、ちょっと糸口がつかめたような気がしている。
「私どもとしては日本においてもサプライヤーにはISO/TS 16949の認証の取得をお願いしたいのですが、国内では下請法や公正取引委員会の見解によって、取得を取引条件とするような動きが取れないのが現状です」(アイソス5月号45頁)
認証取得要求をはじめ、あからさまにサプライヤーに対して要求事項を明示できない国内事情があるので、「手引き書」というような曖昧な表現を使っているのかも。この解釈、あってる?
みなさん,おばんです。門岡 淳です(^-^)。
>この解釈、あってる?
→回答ではありませんが・・・・・下請法って下請代金支払遅延等防止法(昭和三十一年六月一日法律第百二十号)なのでしょうか?・・・・顧客要求事項を明確にしてはイケナイとは規定されてはいないような?。公正取引委員長の見解って何なんでしょう?。どのような法的拘束力があるのでしょうか?。公正取引委員長が公正な取引を妨害してはイケナイでしょうし・・・・。
<下請法って下請代金支払遅延等防止法(昭和三十一年六月一日法律第百二十号)なのでしょうか?
はい。ボッシュは、その意味で使っています。
<公正取引委員長の見解って何なんでしょう?。
これについては、下記のURLで見解(平成15年10月24日)が述べられています。ちょっと古いですが、参考にはなると思います。ただ、これが最新版の見解かどうかは分かりません。
http://www.jftc.go.jp/jizen/jirei/ji031121.pdf
ここで述べられている公正取引委員会の結論は次の通りです。
「ボッシュが納入業者(下請事業者を含む)に対し,その趣旨を十分説明した上で必要な範囲内で本件認証の取得を要請すること自体は,直ちに下請法及び独占禁止法上の問題となるものではないが,要請を行うに当たっては,上記2(3)及び(5)記載の点に留意して,下請法上の買いたたき及び独占禁止法上の優越的地位の濫用の観点から問題となることのないように実施する必要がある。」
ここで言われている留意点の1つである(5)では次のように述べています。
「(5) しかし,ボッシュが納入業者に対し優越的地位にある場合に,本件認証の取得に費用を要するため納入業者が代金の額の引上げを求めたにもかかわらず,ボッシュがかかる費用増を十分考慮することなく著しく低い代金を定める場合には,納入業者に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,当該行為は優越的地位の濫用に該当する。」
こういった点などが懸念要素としてあるので、認証取得をモロに要求できないってことなのではないでしょうか。
中尾さん,おばんです。門岡 淳です(^-^)公正取引委員会見解のご紹介ありがとうございます。
フムフム,顧客がサービスの提供を求めて,その対価を支払わないのはケシカランという見解でしょうか。供給者のISO9001認証取得が顧客へのサービス(役務)提供に該当するか?は微妙ですが・・・顧客が優越的地位を利用して供給者に経済的負担を強いるのはケシカランというのは納得できますね。
CSR(顧客特有の要求事項)であろうと,手引き(ガイダンス)であろうと・・・3年取得しなかったら取引停止という実態には何の違いもないような・・・・気もしますが。
家元です。お久しぶりです。
今、世界一のすばらしいコメントを書いたのですが、文字列が違っている、とエラーになってしまいました。
思い出せたらまた書きますね。
すみません、家元さん。これをやらないとスパムがひどいもので。お手数をおかけします。
懐かしいですね。
その昔、PL法が成立したときに記録の保管期間を10年+αってのが増えて、
「訴訟に対応するには取引先も同じでないと」
なんて話しになって要求しようかって時、どこだったかがそれをやり、やられた先が公正取引委員会に駆け込んで、公取から要求元にご意見が入りました。
って話しが入ってきて、トーンダウンしたことがありましたが、その後、今度はQS-9000のネズミ講現象でこれまた
「取引先に要求する?」
「いやいや、PLの時の話があるから・・・」
で、公取で中尾さんの記事を発見、
それ以来、この文書はしっかり保管して、
「あんまり無茶言うところには、安定所要の確保と値上げを要求しよう」
てなオチになりました。
いや、懐かしい。
おひさです。
そんな話があったんですね。
公取文書は、やっぱりみんなきちんと保管してるんだ。
みなさん,おばんです。門岡 淳です(^-^)余計なこととは思いつつ・・・・
公取委見解の・・・・
>品質マネジメントシステム(ISO/TS16949)構築の認証受審を予定しているところ,これを取得するためには,原則として,ボッシュに部品を納入するすべての事業者(下請事業者を含む。)が,既に本件認証(ISO9001認証取得)を取得しているか,又は3年以内に本件認証を所得する計画を有することが必要とされている。
と,アイソス2012年5月号P44-45の・・・・
>Tier1という立場上,自分達のサプライヤーにもISO/TS16949の認証を勧めることになります。
>国内では「下請法」や公正取引委員会の見解によって取得を取引の条件とするような動きがとれないのが現実です。
→ということは・・・・日本でのISO/TS16949の認証取得にあたってはサプライヤーのISO9001認証取得が規格要求事項ではないことに・・・・サプライヤーへのISO9001認証取得/TS認証取得の要請と品質仕様書にTS?の規格要求事項を含めることで,認証登録が認められている・・・・ノカナ???。
このあたりはよく理解していません。
ただ、留意する点が2つあります。
1つは、今回紹介した公取見解は、GAIさんが「懐かしい」と言っているように9年も前のものであり、最新の見解を確認していません。
また、アイソスの記事に掲載されたボッシュの発言は、まさにコンプライアンスに配慮した「ボッシュ的」発言であることです。(おそらく通常は、あえて公取がどうのこうの言わず、認証を取れと公にも言わず、例えば三菱ふそうさんのように、サプライヤーへの手引き書の中にTS16949をそのままドブンと入れてしまうのではないでしょうか)
まあ、補足というか・・・
ISO/TS16949の供給者QMS開発で要求されているんですが、今は公式解釈集によって実質書き換えが行われています(規格原文はそのままに)。
今の規格の意図は、
・供給者のQMSをISO/TS16949への「適合」を到達目標に開発せよ
・第三者認証によって、または自動車産業プロセスアプローチと
一致した二者監査プロセス(ISO9001ではなISO/TS16949
レベルの)で実証されるISO9001への適合は、
そのISO/TS16949到達目標への第一歩である
でして、たとえ供給者がISO9001第三者認証をしたところで、それは供給者開発の第一歩にしかならない、ゴールはISO/TS16949「適合」なんです。
ISO9001は第三者認証か、審査会社並みのシステムと力量をもって行う第二者監査での実証が必要、ISO/TS16949は第三者認証でなくとも「適合」の実証ができればよいのですが、その手っ取り早い方法は第三者認証ってことですしね。
この部分が当初は、
・供給者のQMSをISO/TS16949への「適合」を到達目標に開発せよ
・ISO9001への「適合」は、そのISO/TS16949到達目標への第一歩
である
・顧客が別に規定しない限り、認定された第三者認証機関による
ISO9001の「第三者認証」がなされていること。
でした。
なので挙って
「ISO9001第三者認証してよねー、次はISO/TS16949だよー」
なんてなったのですが、そもそも規格開発の時点でオブザーバの日本が反対意見を唱え欧州勢もそれに賛同したものを、それでも強硬に要求として盛り込んだ米国勢は、
「われわれは、Tier1のところまでしか考えとらん。
それ以降はTier2以降が考えてやればよいからにして大丈夫だ」
だったんですけどね。
でも、そんなこと規格上には書いてないもんですからネズミ講現象が発生したり、認証機関も「ある時期には、取ってなきゃ不適合にすることになります」なんて言い出したり・・・
なのでこの公取見解文書は、私個人は強硬に要求する顧客よりも、審査の場で「不適合」という審査員に対する印籠のつもりで保管してました(;^_^A
実際には審査会社も知ったようでして、指摘されることはありませんでした。
あー懐かしい(^^ゞ
GAIさん、状況解説ありがとうございました!
GAIさん,ありがとうございます。妥当な公式解釈集ですね\(^-^)/。
国内だけの話かとおもいきや・・・ワールドワイドだったのですね。
>(規格原文はそのままに)
“完全に整っている状態”を保つのはTSでもなかなか難しいようですね。