「8.2.3 プロセスの監視及び測定」

「8.2.3 プロセスの監視及び測定」のJIS文を読んでみましょう。

「組織は、品質マネジメントシステムのプロセスを
適切な方法で監視し、
適用可能な場合には、測定をすること。」
この日本文では、
QMSのプロセスに対して、
「適切な方法で監視すること」と
「適用可能な場合には、測定すること」の
2つが要求されています。
「監視」は「適切な方法」でやれ、と書かれていますが、
「測定」は「適切な方法」でやれ、とは書かれていません。

原文を見てみましょう。

The
organization shall apply suitable methods for monitoring and, where
applicable, measurement of the quality management system processes.

suitable methods(適切な方法)を適用する対象は、
monitoring(監視)だけでなく、measurement(測定)もそうです。

あなたがこの英文を素直に訳すなら、
「組織は、品質マネジメントシステムのプロセスの監視、
及び適用可能な場合なら測定には、
適切な方法を適用しなければならない」
とするでしょう。

その方向性で、正しいと思います。

もう1点、考えてみましょう。
あなたは、この「8.2.3」を読んで、1カ所、違和感を感じませんか?

「計画どおりの結果が達成できない場合には、
製品の適合性の保証のために、適宜、修正及び是正処置をとること。」

When
planned results are not achieved, correction and corrective action
shall be taken, as appropriate, to ensure conformity of the product.

「製品の適合性」(conformity of the product)?
どうして、ここで「製品」が出てくるの?
「8.2.3」って、プロセスの話でしょう?
製品の話は、次の「8.2.4」じゃないの?
そりゃ、最終的には製品の適合性の保証に行き着くけど・・・

あなたがそこに違和感を持ったのなら、
あなたは、世界のISOユーザーと思いを共有しています。

「8.2.3」では「プロセスの保証」が求められているのに、
「製品の適合性の保証」だなんて、
ややこしいことを言わないでほしい!

そういう声がISOに寄せられました。

「製品の適合性」っていう表現、
ボツになるでしょう。

「8.2.2 内部監査」

「8.2.2 内部監査」を見てみましょう。
最後のパラグラフで次のような文が出てきます。

「監査された領域に責任をもつ管理者は、
発見された不適合及びその原因を除去するために
遅滞なく処置がとられることを確実にすること」

ここでいう「処置」って、どんな処置なのでしょう。
多くのユーザーからISOに質問が寄せられたそうです。
これは、世界規模の疑問なわけです。
原文は下記の通りです。

The management responsible for the area being audited shall ensure
that actions are taken without undue delay to eliminate detected nonconformities and their causes.

この actions って、何を意味するのでしょうか。
これはやはり、次の「8.2.3 プロセスの監視及び測定」に出てくる
correction and corrective action のことでしょう。

つまり、遅滞なくとるべき処置とは、
必要とされる修正及び是正ということになります。

「8.2.1 顧客満足」

2000年版の「8.2.1 顧客満足」では、
「顧客要求事項を満足しているかどうかに関して
顧客がどのように受けとめているかについての情報を監視すること」
が要求されています。

では、「顧客がどのように受けとめているかについての情報」とは、
いったいどんな情報なのでしょうか。
規格説明会などで必ず出てくるのが「顧客満足度調査」です。
ただ、「当社の製品は顧客満足度第一位です」という宣伝文句ほど、
昨今、いかがわしいものはございません。
ですから、もう少し、どんな情報なのかを示す
具体例のバリエーションが欲しいところです。
ISOが実施したユーザー調査でも、
いったいどんな情報なのかよくわからない、
という声が多かったそうです。

要求事項なので、具体例を本文に書くことはできないでしょう。
であれば、「注記」とかで示せるのでは?

顧客満足度調査はもちろんのこと、
顧客からの製品品質データとか、
ユーザー意見調査とか、
ディーラー報告とか、です。

「8.1 一般」

「8. 測定、分析及び改善」の「8.1 一般」では、
組織が監視、測定、分析及び改善のプロセスを計画し、
実施するべき対象として、a)、b)、c)の3つをあげています。
問題はこの中のa)です。
a) 製品の適合性を実証する。

「製品の適合性」って、変な日本語ですね。
意味がよくわかりません。
製品の何に対する適合性なのでしょうか。
原文をみてみましょう。

a) to demonstrate conformity of the product,

ああ、原文自体があいまいな表現のようです。
ここは「製品に関する要求事項への適合性」とするべきですね。
となると原文は、

a) to demonstrate conformity to product requirements,

となるのではないでしょうか。

同じ年に出た9005/6とSIGMA

10月21日、JIS Q 9005/9006導入企業による事例が、
日本規格協会の恒例行事である
「標準化と品質管理全国大会」で発表されます。
このJIS Q 9005/9006プロジェクトは、
同規格の前身であるTR Q 0005/0006の時期も含むと、
5年以上も続いているロングラン企画で、
国の助成金を得て実施されているものです。

この時期になると、TR Q 0005/0006が発行された
2003年1月の状況を 思い出します。
ご存知の通り、この規格はISO9004次期改訂版
(2009年発行予定)への採用も狙って開発されたものです。
TRの原案ができたとき、その英語版を持って、
経済産業省の担当官がBSIを訪れました。
ISO9004の規格審議を行っている
ISO/TC176のWGの議長国が英国だからです。
そのときの状況を聞くため、
私はその担当官を、帰国後すぐに取材しました。
担当官はBSIに「今度、9004の次期改訂版として、
このような規格を日本から提案するので協力してほしい」
とお願いしたそうです。
BSI側は快諾してくれました。
「BSIは、えらく簡単に賛成してくれたものですね」と、
私がその担当官に聞くと、彼は、
「BSIは今、9004よりもシグマのほうに
関心が向いているからね」と答えました。

ここでいうシグマとは、SIGMAガイドラインのことです。
このガイドラインの最終版は、
日本のTRが発行された同じ年の9月にWeb上に発表され、
今も無料でダウンロードできます。
日本のTR Q 0005/0006も、英国のSIGMAも、
持続可能なマネジメントのためのガイドラインですが、
前者は高成熟度QMSに限定されたコンテンツであり、
後者は経営に関するあらゆるマネジメント・コンテンツを
関連させるためのポータルサイトです。

2003年の時点で、両国の標準への方向性は異なっていました。

TR Q 0005(左)とSIGMA Guidelines