「この図を最初に書いたのは、実は私なんです」
と、2人の人が別々に名乗り出てきました。月刊アイソス2000年11月号(No.36)の冒頭カラーページで「回文かるた」という連載が始まり、次のような記事を載せてしばらくしてからのことです。
回文かるた 「あなた、使ったなあ!」
ISO 9000を楔(くさび)にたとえるアイデアは、なかなか独創的ではありませんか。このアイデアを思いついた人は、あえて「あなた、使ったなあ!」と主張せず、ISO業界でのオープンな使用を希望したのかもしれません。あるいは、いつの間にか無断使用され、そのうちに誰もがこのアイデアを著作権フリーだと思うようになったのかもしれません。(記事・絵ともに抜粋)
「この絵を最初に書いたのは,実はアンタだったのか!」
と,1人の事務局員が叫びました。このブログの2009年10月29日の記事で「Vantage Point それは私です」という掲載があり,そこにある絵を見た途端に思い出した昔話です。
ISOが楔? 「ほんと,ムカつくなあ!」
ISOを楔にたとえるとは,何とも「ISOの仕事」的発想ではありませんか。この絵を思いついた人は,あえて「ISOを使って」ということは考えず,ISO-MS規格の第三者認証をするための活動がISO9001やISO14001なのだと思ったのかもしれません。あるいは,いつの間にか事務局の仕事は第三者認証の維持活動とされ,そのうちに組織の誰もがこの状態を「ISOの仕事」だと思うようになったのかもしれません。(とある事務局の呟き)
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某組織では,2000年当初に全社的な経営品質向上活動が行われることになり,経営推進部門が旗振りを始めました。この組織には既にいくつかの品質に関する改善/向上プログラムがありましたが,そこへ日本経営品質賞を導入し,これを基軸に全社的に取り組むということらしいのです。
一方,当時のISO事務局さんはISO9001もそのためのツールと位置付け,「ISOの仕事」にならないようにと,既に他の改善/向上プログラムとリンクした運用になるよう孤軍奮闘してました。そんな中,この部門が全社的な品質改善/向上活動をするというので願ったり。
「これからはISO9001もこの部門が運用していくのだろうな。
じゃ,自分はどうなるのだろう?
経営推進部門に異動するのかな?
それとも仕事を渡して新たな業務かな?
それとも・・・??」
そんなこんなISO事務局さんの皮算用が始ったころ,経営推進部門が示したものは・・・
改善 → PDCAの輪
TQC → 経営品質向上活動
品質向上 → 高経営品質
と使われている言葉が多少異なるものの,正にこの絵にそっくりなものだったのです。
しかも,この輪を後押しするものとして「日本経営品質賞 アセスメント基準書」が記され,もちろんそこにはしっかり楔もあって「ISO」とまで記され,後戻りの防止に位置付けられていました。
そしてこの部門が言うには,
「いろんな改善/向上活動をまとめて運用するにも,ISOはちょっと別物。
だからISOはこれまで通りに事務局がやっといて」
しかしこの全社的な経営品質向上活動のねらいには,こんなことが書いてありました。
「顧客“を”満足させる,ではなく,顧客“が”満足する製品を提供し続けることによって,顧客の満足を勝ち得るのだ!」
さて,何が別物なんでしょ?
しかしそれ以前に,
「ISO9001には改善プロセスが無い?
PDCAサイクルも無い?」
「なんでISOが楔なの?
それって第三者認証ダケを見てるんじゃない?
ホンマかいな?」
もし,この部門がその「最初に書かれた絵」を参考にしたとしたら,全く持って迷惑な絵を書いてくれたもんです。
事務局さんはこの部署にも活動にも落胆し,冷めた目で静観していましたが,真っ先に頓挫したのが日本経営品質賞。
そして現在,これらの活動の中で残っているのは,ISOとそこにリンクした活動という,何とも皮肉な結果になっているとのことでした。